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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
3章 ドラゴン
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あわや大惨事

「強いドラゴンに育ててほしい!?」


 ベルフェルトが放った衝撃の一言に、脳が追いつかない。


「ちょ、ちょっと待ってくれ……お前はドラゴンで、だとしたらそもそも強いはずだろ?」


 動転して詰め寄ると、ベルフェルトはただただバツが悪そうに、顔を横に振るだけだった。


 もはやベルフェルトからは絶対的な強者の風格など、微塵(みじん)も感じられない。


「まじか……」


 幼い頃から心の中で出来上がっていたカッコいいドラゴン像が、バラバラと粉々に崩れ落ちていく音が聞こえてくる。


 相当酷い顔をしていたのだろう。すみません、とベルフェルトが申し訳なさそうに謝罪の言葉を連呼した。


(まだ希望はある…!)


 ベルフェルトの種族はレッドドラゴンだ。自分でも火を扱うのが得意だと言っていた。


「で、でも、火さえ使えばそれなりには強いだろ?」


「それが、火も(ろく)に扱えないんです…」


(う、嘘だろ……)


「今証拠を出しますね」


 無意識の内に、信じられないという感情が顔に出ていたのだろう。


 ベルフェルトはこちらが何も言っていないにも関わらず、自らが強くない証拠を出すと言い、口を大きく開けてゆっくりと息を吸い始めた。


「お、おい待て!!」


 何かを悟った魔王は、ベルフェルトへと静止を促すも、止まる気配はない。


 こうなったら、と後ろで同じように、これから何が起きるのか察して硬直しているシエラの前まで走る。


「そのまま俺の後ろから離れるなよ!」


「は、はい!!」


 しかし、何を勘違いしたのか。シエラは俺の腰に手を巻き付かせ、思いっきり抱き着いてきた。

 自分とは異なる温かな体温、鼻腔(びこう)(かす)める甘い匂い、そして何より背中に感じる2つの柔らかな感触。


 全身でシエラを感じ、気が動転してしまう。


「だ、だ、誰がそこまでしろといった!?」


「す、すみません!!」


 シエラも今の自分の状態に気づいたのか、透き通るような白い肌を真っ赤に染めて、腰から手を離した。


 少し遠ざかる温もりに名残惜しさを感じつつも、シエラを守るために前へと防御魔法を展開させる。


 念のためセバスチャンを見ると、彼も魔王同様に防御魔法を展開させ、その身を守っていた。見たことないほどの満面の笑みで、こちらの様子を伺っていたのは、見なかったことにしよう。


 …超恥ずかしい。


 そうこうしているうちに、ベルフェルトは限界まで息を吸い終わり、顔を上に向けていた。かと思えば、顔をグンと正面に戻しながら、今まで溜めた空気を一気に体外へと放出させる。


 すると、ベルフェルトの口から、大量の空気と共に細い木の枝ほどの短い炎が吐き出された。


 予想以上の光景に、3人して目が点になり、しばらく動けなかった。


「これで僕が強くないって信じてくれましたか?」


 魔王、シエラ、セバスチャンの三人は、何事も無かったことに安堵の溜息を(こぼ)す。


「確かにお前が強くはないことは分かった。だが、いきなりこんなことをするのはやめてくれ」


「そうですよ!本当に怖かったんですよ!!」


 シエラは先ほどまで怯えていたのが嘘のように、怒りの表情でベルフェルトへと詰め寄った。


 そんなシエラに気圧されたのか、怯えた表情を貼りつけ、体を全部地面にペタッとつけた。


「すみませんでした!!怖がらせるつもりは無かったんです!」


 シエラは土下座?を見て少し落ち着いたのか、ベルフェルトの頭に軽く手を添えた。


「怖がらせるつもりが無かったことはちゃんと分かってます。それに、私もあなたのことを怖がってましたから」


 これでおあいこですね、とベルフェルトへとありったけの笑顔を返す。


「シエラ様~!」


 ベルフェルトもシエラの笑顔につられるように、パッと笑顔になった。


 とはいえ、この訓練場が黒焦げにならなくて、本当に良かった。

おはようございます!

黒猫くろとです!


次回更新は水曜日です。

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