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魔王のお悩み相談室  作者: 黒猫 くろと
3章 ドラゴン
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前代未聞のお悩み相談

 場所を移して訓練場。


 大量の魔王軍の兵士たちが日々訓練に励んでいる広大な場所に、今は自分を含めてシエラ、セバスチャン、そしてドラゴンの4名しかいない。


 兵士たちには、無理を言って今日の訓練は中止してもらった。


 周囲を見回すと、石造りの床や四方を囲む壁の所々が欠けている。どうやら日々の訓練で、破損してしまっているらしい。


 早急に修理しなければ危険だ、などと考えていると。


「…あ、あのー。何からお話すれば良いのでしょうか?」


 おずおずとドラゴンが切り出した。


「まずは自己紹介してもらって良いか。ドラゴンなんて存在を知っている程度だから、色々と知っておきたい」


「は、はい。僕はベルフェルトと言います。メルト村からやって来ました。種族はレッドドラゴンで、見た目で分かると思いますけど、火を扱うことが得意な種族になります」


「メルト村ですか……」


 ベルフェルトの自己紹介に、セバスチャンが重々しい声を発した。


「メルト村がどうかしたのか?」


 セバスチャンが普段発しない声音に怪訝そうな顔で尋ねると、顔を耳元まで近づけて、俺だけに聞こえるように小声で話し始めた。


「実はつい3日ほど前、警備隊のハーピーたちがゴブリンたちを捕まえてきたのですが、どうやらそのゴブリンたち、メルト村を襲撃していたそうです」


「本当か?」


 セバスチャンに合わせるように、魔王も小声で聞き返す。


「はい。ですが、その報告にはドラゴンがいたと書かれておりませんでした。ドラゴンがいたら真っ先に報告すると思われるのですが…」


「確かにな…」


 二人でこそこそと会話を交わしていると。あのー、とベルフェルトが割って入ってきた。


「僕の悩みは、そのゴブリンたちの襲撃に関係しているんです」


「聞こえていたのか!?」


 常人では絶対に聞こえるはずの無い声量での会話に、当たり前のように参加してこられ、二人して驚愕する。


 二人の態度にポカンと呆けるベルフェルト。数瞬して、何かに気が付いたのか、満足気な顔で何度も頷いた。


「あまり知られていませんが、空を飛ぶことのできる種族は、高速で飛行している時に風を切る音以外にも音を拾えるよう、他の種族より聴覚がかなり優れているんです」


「そうだったのか」


 初めて聞いた事実に驚きつつも、魔王は過去の出来事を思い出して納得していた。


 以前、パトロールをしている際に、魔物のゴブリンたちに襲われたことがあった。そのゴブリンたちをやっつけたはいいが、どうやって魔王城まで連行するか悩んでいると、ハーピーたちが駆けつけてきた。


 その時はたまたま近くにいたのだろうと思っていたが、どうやら戦闘音を聞いて駆けつけてくれたようだ。


「大丈夫ですか?」


 魔王が思い出に浸っていると、シエラが声をかけてきた。


「ああ、すまない。ちょっと昔のことを思い出していたんだ」


 それでも心配そうな顔を崩さないシエラだったが、大丈夫だから、と微笑むと渋々ながらも引き下がってくれた。


 ベルフェルトに顔を戻した魔王は、ゴホンと一度咳ばらいをして本題を切り出す。


「さっきゴブリンたちの襲撃と、お前の悩みが関係していると言っていたな。もしかして、悩みって復旧を手伝ってほしいとかか?」


「いえ、村は襲われたのですが、ハーピーの方々が早く来てくれたので、ほとんど壊されていないんです」


「だとしたら悩みは何なんだ?」


 ベルフェルトは一瞬言い淀んだが、意を決したかのように大声で悩みを打ち明けた。

「僕を強いドラゴンに育ててほしいんです!」

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