ドラゴンの目的
「ドラゴンだと!?」
シエラの口から放たれた、『ドラゴン』という言葉。
この世の最強生物の襲来に、わくわくが隠せない。
「ドラゴンって、あのドラゴンか!?」
「た、たぶん魔王様が思っている通りのドラゴンだと思います…!」
「ならこうしちゃいられない!すぐに会いに行くぞ!」
(今すぐに会いたい!!!)
そんな少年心を抑えきれず、シエラの手を取った魔王は、相談室を飛び出した。
魔王が興奮を隠せないのも仕方が無い。
ドラゴンは、その巨大な体と強大な力を持つが故に他種族との共存が難しく、基本的には他種族が生存できないにような過酷な環境に、自分の巣を作って一人で生活をしている。
人族の約10倍の寿命を持つ魔族であっても、人生で1度も見たことが無い者がほとんどだ。
そのため、ドラゴンを見る機会は、貴重な体験なのである。
「ま、魔王様!あれを見てください!」
シエラの手を掴んだまま、長い廊下を走って―半ばシエラを引きずっていたが―いると、シエラが無数にある窓の1つを指差した。
走っているのを中断して、指さされた窓から外を見ると。そこから見えたものに、呼吸することさえ忘れて見入ってしまった。
遠目からでも分かるほどの真っ赤な巨体。
こちらを怯ませるような鋭い目つき、恐怖心を抱かせるような巨大で鋭い牙と爪、全ての攻撃をはじくかのように硬い鱗。
その全てが、絶対的な強者の風格を漂わせている。
「すげぇ…!」「すごい…!」
気づけば二人して、感嘆の言葉を呟いていた。
しばらくの間見惚れていると、ふと違和感を感じた。
シエラから話を聞いた時、たまたま飛行ルートに城下町が重なったのだと思っていたが、いつまで経っても飛び去る気配が見えない。
シエラも同じ違和感を感じたのか、不安そうにこちらを見つめている。
「会いに行ってくる」
「…はい。お気を付けください」
ドラゴンを見ていた窓から飛び、ドラゴンへと近づいていく。
ドラゴンも俺の存在に気づいたようで、こちらに向かって羽ばたいてきた。
二人の距離が人1人分ぐらいまで近づいた時。ドラゴンがその大きな口をゆっくりと開く。
「あの、あなたが魔王様でしょうか?」
ドラゴンの口からは巨体に似合わない小声でおどおどとした声が飛び出した。
想定外の態度に、呆気に取られる。
「あ、ああ。俺が魔王だ。もしかして俺に用でもあるのか?」
「その…お悩み相談室が開いていると聞いたので、悩みを聞いてほしくて……」
ドラゴンがやって来た目的は、どうやら悩みを解決してほしかったからのようだ。
「そういうことだったのか。それなら兵士たちが訓練場として使っている場所があるから、そこで聞くことにするよ」
「分かりました。よろしくお願いします」
おはようございます!
黒猫くろとです!
来週から大学が開始するので、更新日を水・土・日の週3回に変更いたします。
もし大丈夫そうならもう少し増やす予定ですので、その時はまたTwitterと後書きに書きます。




