襲来
「お疲れのようですな」
本日最後の相談者の悩みを解決した後。セバスチャンがこちらを気遣う言葉をかけてくれた。
「こう連日のように続くとな…」
お悩み相談室が開かれるようになってから1ヶ月。
毎日のように悩みを抱えたロベルナの民が、1日に少なくても1人、多くて3人は訪れている。
休むことなく毎日相談を解決しているため、体力が限界に近かった。
「魔王様もまだまだ鍛え方が甘いようですな」
疲労困憊の俺とは対照的に、セバスチャンは疲れの色を見せることなく、相変わらずの笑顔を向けてくる。
「鍛え方とかいう問題じゃないだろ。なんでお前はそんなにピンピンしてるんだよ?」
「私とて疲れておりますとも。しかし、それを隠す術を持っているだけでございます」
「隠す術…か」
これが生きてきた年数の違いか、と疲れ切った顔が引き攣ってしまう。
「なあ、提案があるんだが…」
「なんでございましょう?」
「相談室の利用を、1日1人に制限しないか?そしたらこっちの負担も減るし、相談も解決できて一石二鳥じゃないか?」
俺の提案を聞いたセバスチャンは少しの時間考えていたが、返ってきたのは否定の言葉だった。
「魔王様の仰るように、人数を制限することでこちら側の負担を減らすことはできます。ですが、その分だけロベルナの民を待たせることになってしまいます。そうなれば、悩みが深刻化するだけではなく、最悪の場合、そもそも相談室へ来てくれなくなるでしょうな」
セバスチャンの返答に、思わず大きな溜息をついてしまう。
「少なくとも、今みたいに相談が押し寄せてる状態ではかなり厳しいかと」
「だよなぁ」
「もう少しの辛抱でございます。それまでは一緒に頑張りましょう」
「ああ」
魔王は再びつきそうになった溜息を、冷めてぬるくなってしまった紅茶で強引に飲み下す。
カップを置いたところで、外が何やら騒がしくなっていることに気が付いた。
「今日は祭りか何かか?」
セバスチャンへと問うと、珍しくセバスチャンが少し困り顔をしていた。
「いえ。本日はそのようなことは無かったはずなのですが…」
「気になるな。ちょっと確認しに行ってくる」
外へ出ていこうと席を立った瞬間。城下町へと買い物へ行っていたシエラが、息を切らしながら相談室へと入ってきた。
そのままの勢いで迫り、何かを必死に伝えようとするが、息が切れすぎていて何一つ理解することができなかった。
「大変なことが起こったのは分かったから、とりあえず落ち着いて呼吸を整えろ」
言われたままにシエラは呼吸を整え始めた。
そこに、いつの間にかセバスチャンが持ってきた水をシエラへと手渡し、シエラはもの凄い勢いでそれを飲み干した。
「ぷはっ!」
「少しは落ち着いたか?」
「はい!おかげさまで落ち着きました!ってそんなこと言ってる場合じゃないんです!城下町が今大変なんです!」
「城下町?確かに騒がしかったが、なにか事件でも起きたのか?」
「事件どころじゃありません!城下町にドラゴンが!」




