目が覚めていたらハーレム主人公になっていた
目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。
知らないベッド。知らない本棚。知らない服。綺麗な部屋。そして、
僕は僕ではなかった。
渦巻く混乱。そして、ここは夢と思った。僕は今夢を見ている。きっとそうなんだ。そうでなければ説明がいかない。
しかし、なんだろう。少し冷静に見てみれば、見知らぬはずの光景のはずなのに見たことのある光景に見えてきた。
いや、絶対にこの部屋に上がったことなんてない。
けど、絶対に見たことある光景。
しかも、この僕ではない誰かの身体だって見たことある気がする。
前世?この世界は僕の前世なのだろうか?だとしたら少しムカつく。何故ならこの身体、この顔は、すごくイケメンだし、ムキムキだからだ。
「格好良すぎだろ、僕」
前世の世界とおぼしき世界ではじめての声がこの一言になるとは思わなかった。いやいや、僕の現世の姿なんて、この姿と比べたらみずぼらしい。嫉妬して何が悪い。イケメン補正くらい受け継いでもよかったと思うんだけどな。
にしても、前世の僕はいったい何という名前なのだろうか。僕は辺りを物色する。そして、僕は名前を見つけた。
『野田啓介』
えっと、僕の名前が判明しました。野田啓介という名前らしいです。
ってか、この名前、この光景、ほほう、わかったぞ!
いま、目の前に見えている光景、そして身体は、僕の前世の部屋や身体ではない。
「ここは、『青春よ、花開け!』の世界だ!」
『青春よ、花開け!』
主人公『野田啓介』がさまざまな女の子とイベントをこなし仲良くなっていき……という、いわばハーレムゲームである。
世の中の男子高校生が一度は夢見る光景、状況、キャラではあるが、これまた面白い。何故かって?
ヒロインがチョー可愛いんよ、これが。
僕はこのゲームを友人から借りたわけだが、
僕はあまりこういうゲームをプレイしない。大体はオンラインRPGをプレイすることが多く、昨日もこのゲームやる前に一時間くらい誘われてミッションに挑んだ(楽ミッションだったからそんなに時間はかからなかったが)。
だからあまり乗り気ではなかったのだ。
「まあ、ちょっとだけやってやるか」
何故か上から目線。けれど数日後、
「うひひ、チョー可愛いじゃん(*^¬^*)」
キモヲタのようになってました。てか、フラグを立てるでない。何がちょっとだけやる、だ。それは今後ハマるお約束だろうに。
まあ、そんな感じにこのゲームにハマってしまったわけなのだが、
「んじゃ、なぜ僕はこの世界にいるんだ」
何故この世界にいることだけは謎である。だから、
「やっぱここは、夢か」
そう結論付けた。しかし、一応念のため、、
僕は自分の頬をつねってみた。
「いっだ!」
いってぇ!ここは本当に夢か?夢に痛覚なんてあるのか?普通はないイメージだ。しかし、これはイメージであって、本当は、
「けいちゃん!早く朝ごはん食べないとあきちゃん待たせるわよ!」
部屋の外から大きな声。おそらく啓介の母の声なのだろう。
しかし、僕の頭は『あきちゃん』という言葉て埋め尽くされている。
えっ、まさか、会えちゃうんですか?
まるで推しアイドルと握手できることを宣告されたドルヲタのようになってしまった僕を許してほしい。
僕は急いで学校へ行く準備を始めた。朝ごはんを食べて、歯磨きして、制服着て、鞄の中チェックして、
「よし、これで大丈夫だろう」
その時、家のチャイムが鳴った。
急いで玄関へ向かう。ドアを開ける前に行ってきますと言ってドアを開ける。
一軒家なのか、すぐ目の前に柵があり、道がある。そして、柵のドアに、彼女はいた。
黒髪の短いツインテール、キラキラした制服、そして僕を見た彼女、あきちゃんと思われる少女は無垢な笑顔を浮かべた。
「あっ、おはよー!けいちゃん!」