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ドタドタと近づいて来る大勢の足音。扉が開かれ、皆恭しく頭を下げた。
レオニードが一歩前に出て
「陛下、恐れ入ります。」礼をした。
「おお、アンドリュー、何という痛ましい姿に、、、」ちょっと待て!俺のどの辺が痛ましいのか、、、俺は至って普通の、正常なつもりだから!
だが、しかし、言ってはいけない雰囲気は、判る。
陛下と言う事は、父親か?!では、俺が息子でない事が何故、わからないのか?
「陛下、恐れいりますが、殿下は非常に強いショックを受けられた為に一時的に記憶が失われているようです。少しお時間がかかるやもしれません。」サルトル医師が難しい表情をした。
「如何した?わしの大切な倅が、如何したと言うのだ!」怒った!
「申し訳ございません!」
俺以外が、みんな膝を折り、頭を下げている。
リアル王様スゲー!あ、違った?え?皇帝?
「良いか、次代を担う大切な皇太子なのだ。一つの傷も、一つの欠陥もあってはならぬ。よいな?」威厳に満ちた物言いは、教授以上だった。
「陛下、明後日のサライ王国のユリー王女様との見合いですが、、、如何致しましょう?」
偉そうな黒マントの片眼鏡のオッサンが言うと、
「よいか、予定はそのままだ。ユリー王女は、近隣にも聞こえ渡る美姫と評判だ。
又、ナラのアサシンが狙っているとも聞く。
奴の処より早く見合わせ、噂通り、否、性質教養知性を鑑み可否を判断するのだ。可であれば、我が国へ輿入れ願う。良いな?」
「御意!」黒マントが、頭を下げた。
俺の、、、見合いだろうに、、、俺の意思はどうなんだ?
そりゃ、俺だって、美人で性格が良く、アタマもいいんならさあ、、、って女、そうそういないよ?
「アンドリュー・・・何と、不憫な、、、」皇帝は、俺の肩に手を掛け、顔を背けると、そっと涙を拭いた。
と、、、ちょっとした感動ヒューマンドラマみたいだが、ちょっと待て!さっきから、正常な俺を捕まえて、不憫不憫と、どいつもこいつも失敬な!!!
俺のどの辺が不憫か、言ってみやがれ。
確かに、俺はまあ、そんなへんな処なんかない!とは、全否定はしないよ?しかし、現代日本で仮にも、KO出のKO病院の医師よ?女の子寄って来るんだから!それに、大学時代は、ヨット部。大人気よ?エリス女学院にも垂涎ものなのよ?
と、叫びたくなる位俺自身の中で既にアイデンティティが、揺らいでいた。
うう、、誰か、俺に、自信をくれ!何時もママが言ってくれた。あなたが1番よ、、、って。