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短編集  作者: 言ノ悠
1/10

梅雨はあけなくて


 鈍色から赤いものが零れる。


 目の前に倒れているのは、さっきまで私を殴っていた男。


 頬は男の血がかよってると主張せんばかりに、紅潮していた。


 逃げなきゃ


 赤い刃を持って、外に飛び出した。


 張られた頬も出来たタンコブもそのままに、雨音に飛び込んだ。


 大きな水玉が、何度も何度も顔に打ち付ける。


 呪縛からは逃れられないぞと、必死に訴えかけられている気がした。


 お前も男だと言われているような、そんな気がした。


 何処に向かうのかわからないまま、草臥れたローファーで永く何処までも走り続けたかった。


 ローファーが壊れた。


 同級生の靴底の擦り減ったローファーだった。


 こんなに走って壊れない筈がなかった。


 脱ぎ捨ててしまおうか。


 雨と一緒に地面に叩き付けてしまおうか。


 寒い…


 肌にぺったりと張り付いたシャツが、体温を確実に奪って行った。


 身体は冷え、頭も冷える。手先はかじかんでいる。


 でも、冷えた頭はひとつの答えを見つけた。


 あの汚い男を殺したんだ。


 何も困る事は無い。


 何も悪い事は無い。


 降りしきる雨が呪縛を洗い流してくれたんだ。


 まるでマーキングの様に付けられたタンコブも、張られた頬も雨が地面に攫ってくれたんだ。


 赤いのが付いた包丁も捨ててしまおう。


 カンっ


 自由になった。


















「午前0時50分、○○県立○○高校の…」


 自由は銀色の輪っかに遮られた。

サークルのお題で適当に描いた。

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