8冊目 脱出
「まさか、地下牢に封印していた魔龍を解放したというのか!?」
突如現れた竜は、黒い身体の一部が発光しており、2本の尻尾に3つに裂けた口、腕の先にも口がついていて、竜とはとても言えないような歪な姿をしていた。
「くそっ!こんな時に……グワァァッ!!」
ゴズメズは急いで魔龍に向かい槍を構えたが、間に合わず魔龍の突進を喰らってしまった。
「きゃっ……」
「危ない!」
風圧で吹き飛ばされた少女を宗介はゴズメズの姿を利用し、少女を身体で受け止めた。
「大丈夫か?」
「……うん」
この時、ゴズメズの姿だった宗介は元の姿へと変えていった。
「あ、戻った」
「……うん」
一方、暴れる魔龍に抵抗しているゴズメズたちは。
「あの小娘め……。まさか、魔龍を解放したのいうのか。この魔龍がどんな化け物かわかっていて……!」
「グォォォォオォォォォ!」
必死に抵抗するゴズメズたちであったが、魔龍の圧倒的な力には無力も同然だった。
魔龍の3つの口から出る光線は大地を引き裂き、地上からの魔法は魔龍には全く効いていなかった。
「この……!」
ゴズメズが魔龍に向かい槍を投げると、見事に魔龍の腕を貫通した。
しかし、すぐに槍で空いた穴が塞がってしまった。
「呪いが、通用しないだと!?化け物め!」
「グォォォォオォォォォ!」
魔龍は空を見上げ、咆哮を轟かせた。
すると、空から大量の隕石が監獄に向けて襲いかかるように降ってきた。
その光景にゴズメズの部下たちは逃げ惑うように散らばっていった。
「ゴズメズ様!この隕石の数約120個、奥に直径150前後の巨大隕石も確認!防壁結界だけでは止めることは不可能でございます!」
「黙れ!くそがっ!まだ私はあの方の命をまだ1つもこなしていない!せめて、せめてあいつだけ……ガハッ……」
「残念。あの子は僕にとっては必要だから死なせる訳にはいかないんだ」
「ゴズメズ様!」
怒り狂うゴズメズの身体をイラの剣が貫いた。
「貴……様……」
「あー、もう喋んなくていいから」
そう言ってイラは剣を横に振り、ゴズメズはその場で倒れた。
「さてと……、おーいソースケー」
「イラ!お前今まで何してたんだよ!」
「まぁまぁ、それはともかくちょっとその子抱えてくれない?」
問い詰めようとする宗介だったが、イラに話を流されてしまい、仕方なくイラの言う事に従うことにした。
「……これでいいか?」
宗介が少女を軽く抱えると、イラは宗介を抱きしめ、
「よーし、それじゃあ行くよー。3……2……1……発射ー!」
「……え?」
イラは翼を広げ、宗介たちを抱えた状態で空を飛んだ。
そして、そのままあの魔龍の背中に乗った。
「とーちゃく!」
「到着……って、お前どんなところに降りてんだよ!」
「大丈夫、この子は今は僕たちの味方だよ」
イラがそう答えると、3人が背中に乗ったのを確認した魔龍はすぐにこの場を離れた。
振り返ると大量の隕石が【ルシャ】に落ちるのを宗介は見た。