6冊目 少女救出作戦
監獄の中を駆け抜けて、宗介は処刑場…自分が落ちてきた場所にたどり着いた。
そこには柱に縛られて、気を失っている少女の姿と、あの羊のような魔物もいた。
「あのお方から、お前はもう用済みだという通告を受けた。失敗作のお前がなぜ今まで生かされていたのかは私にはわからないが、あのお方の命ならば私は全力でお答えする」
羊のような魔物、ゴズメズは少女に向かって手を出し、
「安心しろ。気を失ったまま逝かせてやろう」
と、ゴズメズがその言葉を言った直後、
「会心の不意打ち!」
宗介は飛び出し、ゴズメズの顔目がけて剣を振り下ろした。
宗介の掛け声に反応して振り向いたが、その時にはゴズメズにタイミングよく斬撃がヒットしていた。
「グオォォアァァァ!」
攻撃を受けたゴズメズは顔を覆い、膝をついていた。
宗介は返り血を拭いてから、柱に縛り付けられていた少女を救出した。
「おい、大丈夫か?おい、おい?」
軽く少女の頬を叩いていると、
「ん…何?」
意識が戻ってきた事を確認し、ひとまず安堵した俺だったが、
「グ…貴様、やってくれたな。」
ゴズメズが立ち上がり、こっちを睨みつけていて、魔物の部下らしき者たちも俺たちを囲っていて、再び戦闘態勢に入った。
「ん…?」
ゴズメズが宗介を見ると、少し驚きを見せて、
「貴様、まさか、脱獄したのか?それにその剣は一体……」
ゴズメズが動揺しているのを見て、宗介は少女を後ろに下がらせた。
『まずいな、この小僧がここにいるということはあいつも逃げ出しているだ。それだと少し厄介だな』
ゴズメズはしばらく考えこんでいた。
――地下牢
「さてさて、ここにいたか」
宗介とは別の道を進んでいたイラは、【ルシャ】の地下深くにある牢にたどり着いていた。
「グオォォォォォ…」
牢からはドラゴンの唸り声が響いていた。
「やっと会えたね魔龍ブラックドラゴン。僕は君を解放しに来たんだ。」
「グオォォォォォ!!」
「ははは、そんなに警戒しなくていいよ。ただじっと僕が檻を壊すのを見ていてくれば」
と、言ってイラは剣を出した。
「すぐに終わるよ」
イラは剣を振り下ろした。
――処刑場
「おやおや、これでも10パーセントの力しか出していないのがね」
「それが虚勢なら嬉しかったんだけどね」
処刑場には顔の傷が回復していたゴズメズと、魔力の弾を受け続け、ボロボロとなった宗介の姿がいた。
「まだそんな戯言が言えるとはまだまだ余裕があるようだな」
「貴方も息切れ一つもせずに余裕のようですな」
腐っても、監獄の獄長。宗介とは戦いの場数と魔力に圧倒的な差があった。
「……貴様と取引がしたい」
「……は?」
ゴズメズは宗介に言った。
「今、そいつをこちらに渡せば貴様の命は助けてやろう。私にはなぜそこまでそいつを庇うのかがわからない。貴様の世界では見ず知らずの者に助ける義務があるのか?」
と、ゴズメズは言った。それに対し宗介は、
「まさかまた言われるとは思ってなかったよ」
と、言って笑い、
「確かに、俺の世界は他人を助ける義務もないし、ただ見ているだけってなる人もいる」
と、言うと今度は少女に目をやり、
「だけど、俺は決めたんだ。この子と、そしてイラとこの世界を見に行くって。でもこの子はそれを望んでいないかもしれない。けど、手を差し伸べるくらいはしてもいいって思ったから俺はここにいる」
と、言った。
「ソウ……ス……ケ」
少女が反応する。
「……なるほど、それが貴様の思想か。まるで本の中のヒーロー気取りというわけだ。しかしそいつは外に出してはいけない決まりなのでね」
と、ゴズメズが言うと宗介の方に向かいに手を向けた。
「悪く思うな、ヒーロー」
その瞬間、宗介の腹部に痛みが走った。
「……え?」
宗介の腹に槍が貫通していたのだ。