2冊目 一難去ってまた一難
宗介が落ちて来る少し前の地上では罪人の処刑が行われていた。
監獄【ルシャ】古くからより脱獄不可能として、死刑囚など歴史に名を馳せた罪人が一生を終える場所として【命の終着点】として恐れられてきた。
事実として、ここに入れられたら帰っては来れないと、外の世界で中を知るものは誰一人としていなかった。
「ゴズメズ様!17882番の処分完了しました!」
「ふむ、ありがとう。骨は粉末状にして罪人の餌に入れておけ。……そういえば、アレはどうしているか?」
「はい!毎日ずっと本を読んでいて、大人しい限りです!」
「よし、反対側のアイツにだけ気をつけて見廻りに当たれ」
「はい!わかりました!」
会話をしているのは監獄で働く下っ端と、【ルシャ】の獄長ゴズメズ。
その体は羊のような体毛で全身が覆われていて、一般人の腕の太さもある角が二つ頭に付いていた。さらに、3メートルもあるゴズメズよりも半分くらいの長さの槍だが、禍々しいオーラを出しており、それを含めても、近寄り難い雰囲気を出していた。
「さて、そろそろあのお方に連絡する時間だ」
と、ゴズメズも移動を始めようとした、その時、
「ゴズメズ様!」
さっきの下っ端とはまた違う男が慌てて走ってきた。
「何ごとだ」
ゴズメズはその男に聞こうとしたが、
「ぜぇ……ぜぇ……はい……実は……」
男はよほど慌ててたのか今にも消えてなくなりそうな声であった。
「すみません、ゴズメズ様。こいつ、体力がないくせに一人で突っ走るものですので。」
と、少しして、また別の男がやってきた。
「それはいい。何があっただけ話せ。」
「はい。実はこの監獄の上に生命反応を感知いたしました。」
男は冷静に話した。
「何?それは今どこにいるかわかるか。」
ゴズメズは男に聞いた。
「はい。その物体は、すぐここに落ちて――」
男の伝達が最後まで終わる前に、
モフッ
空から降ってきた宗介は、ゴズメズの体毛へ突っ込んだ。
体毛に異変を感じたゴズメズは、すぐさま体毛に手を突っ込み、宗介を掴んで空に放り投げた。
また空に打ち上げられた宗介は今度はしっかりと、土の感触を尻に感じた。
「あいたたたた……。あれ?俺、生きて……る?」
放り出され、尻餅をついた後、少し気持ちを落ち着かせてから、辺りを見渡した宗介の視界に移っていたのは、顔を真っ青にしている男二人と、鳥肌が少し出るくらいの凄い形相で宗介を見てくる裸の羊のような巨人。
宗介は巨人に対して、何を思ったのか、
「…ヘ、ヘロー……」
と、言った。