16冊目
「やっぱり、ここだけ異常に寒いなー」
再び屋敷に戻って来た宗介達は、氷に覆われた館内を調べ回っていた。ダンテの遺体は椅子に座った状態で凍りついており、机にはティーカップが倒れている。この状態を見るに、ダンテも気が付かないまま襲われたのであろう。
「しかし、最初から気になっているのはこの開きっぱなしの玄関の扉なんだよな」
そう言って宗介は玄関の扉を触る。扉は氷によって地面とくっついていて開け閉めすることは不可能であった。
「それはセツちゃんが逃げる時に……」
アンリはある事に気付きハッとする。
「ああ、それならあのミルさん達が気づいているはずなんだ。しかし、セツの話だとここもすでに凍りついているんだ。となれば、誰かが直前に開けているはずなんだが……」
宗介が頭を抱えていると、エルが上の方を指すように飛んでいる。
「上……? そうか! セツの部屋に行って玄関までの時間を図れば……」
宗介は早速二階に上がろうとする。しかし、途中まで登った所で足を滑らせ、一階まで転がり落ちてしまった。
「おーい、大丈夫?」
アンリが宗介を見下ろしながら声をかける。
「一応大丈夫だ……。ん? なんだあれ?」
「え……? あっ、もしかして君、私の下着見た?」
アンリは咄嗟に下を抑えるので、宗介は慌てて誤解を解く。
「違えよ。天井だよ。なんか薄っすらと模様が見える。」
宗介は天井に指を指した。天井にも氷が張り巡らされていて見えづらいが、見る位置によってはある模様が見えた。立っていては見えなかったので、アンリも寝転がると、その模様を確認出来た。そして、アンリは目を見開き、
「あれは……転生陣!」
動揺が隠せないアンリに宗介は不思議そうに、
「転生陣? なんだそれ?」
「禁忌の術式さ。起動すれば術者の魂を他の物に移すことが出来る術式なんだけど、失敗すると魂は二度と元の身体に戻れないくせに、成功すればもう他の物に移れないし、死者に乗り移っても心臓が使い物にならないから意味がないという駄作の式なんだ」
「しかし、どうしてそんなものが天井に……」
アンリと宗介が天井にしばらく目をやっていると、突然エルが宗介に体当たりをした。そして、宗介はなされるがままに吹っ飛ばされた。その光景にアンリはエルの行動に何かを察したのか、辺りを見回す。すると玄関の方から氷塊が襲い掛かってきたのであった。アンリは一瞬、反応に遅れたが紙一重でかわすことが出来た。
「一体なんなんだ?」
宗介はなんとか起き上がって玄関の方を向く。そこにはフード姿の人間が立っており、二回目の攻撃を仕掛ける所であった。アンリはイラと同じようにどこからか鎌を取り出し、反撃に向かう。
「……っ!」
しかし、反撃を見透かされていたかの如く、アンリの足は氷で固められ、身動きが取れないでいた。
宗介はなんとか耐える為に変身の準備をするが、それよりも先に相手の攻撃の準備が終わっていた。しかし、さっきの攻撃が放たれるその刹那、相手の腕にエルの牙が間一髪先に届いた。
「エルっ!」
攻撃を受け、相手はすぐさま立ち去るのをエルが追撃にかかるが、宗介は大声でエルを静止させる。
「どうして、あいつを逃したの?」
しばらくして、足に付いた氷を壊し、動けるようになったアンリが宗介に尋ねる。
宗介はエルに付着した血を採り、
「何故だかわからないが俺は血を取り込むことでその血の持ち主の姿になれるらしい」
「なるほど。だからエル君に後を追わせずにここで犯人明かしましょうって言うわけですか」
「そういう事。まぁ、もう暗いから今追っても見失うだけだしね」
そして、宗介は血を取り込み、犯人の姿に変身した。その瞬間、屋敷と同じように宗介達は凍りつくのであった。




