13冊目 来訪者
「ん……もう朝か」
窓から漏れ出る光に当たり、宗介は目を覚ました。
あれから入浴を完了した宗介達は軽めに夕食をとり、従業員に案内してもらい部屋に入った。部屋の広さは22平米と申し分なく、ここで暮らすには十分過ぎるほどであった。しかしベッドが二つしかないため、イラとアリスが同じベッドで寝ることにした。
壁に掛かった時計を見ると、針は七時を指していた。
「さて、今日はギルドで登録するんだったな」
ギルドとは日本でいうところの市役所みたいな場所だが、他にも冒険者登録や、クエストを受理したりと、絶えず人が集まって来る場所である。宗介達はここで住民登録と冒険者登録の二つをする予定であった。
「ソウスケ……」
すると、アリスは宗介を睨みつけ、本を見せつけた。
「まだ、読んで貰ってない」
昨日、アリスと約束していたことを思い出した宗介はハッとして、
「あー、すまない。でも先に読んでも良かったんだよ?」
と、言うがアリスは、
「あなたに読んで欲しいの」
と、言うものなので宗介は少し嬉しかった。
「帰ったら今度こそ読んであげるから。あと、イラ。そろそろ起きろ」
宗介に起こされ、まだ寝ぼけているイラを連れて朝食をとった後、支度をしてギルドへと向かった。
「ここがギルドか」
ドラ・フィアス王国において二番目に大きい建物であるギルドに入ると、いかにもっていうような冒険者で溢れかえっていた。中には獣人、魚人、エルフと、ヒューマン以外の冒険者もいた。
「えーっと、受付、受付……」
受付を探す宗介の目に映ったのは、アレスと貴族の様な服を着ている男が揉めている場面であった。
「お願いしますよう! どうかここのギルドで受理してもらう許可を頼みますよう!」
「その場合は承諾できないと言っているだろ! あとその喋り方やめろ! 腹立つ!」
「あの、どうしたのですか? アレスさん」
宗介は会話に割って入り、事情を聞く事にした。
「おお、ソウスケか。実はだな……」
「聞いてくださいよう! この男、我々の依頼を受理してくれないんだよう!」
「お前、少し黙れ」
アレスは男を黙らせ、宗介に事情を聞かせた。
話によると、この男はここから少し離れたベルゲート王国の使者であるピュエールという名らしい。
ピュエールはベルゲート王国で起こった事件をこの国のギルドで解決してほしいと言ってきたらしい。
「いや、依頼なら別に受理してもいいような気がしますけど」
不思議そうに尋ねてきた宗介にアレス少し間を置いてから、
「確かに他の国の者でも依頼自体は申し込める。しかし、国の中で起こった事件などは基本的にはその国のギルドで依頼するという決まりなのだ」
「だから、我が国では対処出来ないのでここにお願いしに来たんでしょうがあ!」
「ちなみに、その事件というのは?聞いた感じだと、まだアレスさんも分かってなさそうですし」
宗介の言葉にピュエールはアッと、言葉を漏らした。どうやらまだ事件の内容を言ってなかったそうだ。
「えーっとですね、実はベルゲート王国の中でも王様に認められた権力者が一カ月前に襲撃されるという事件がありましたあ。その人は家もろとも氷漬けにされていましたあ。更に事件を調査していた冒険者の一部も調査中に襲われて返り討ち、その為、我が国では誰も受理しなくなりましたあ」
ピュエールが事件の内容を話すと、アレスはピュエールを睨みつけ、
「つまり、貴様は面倒事を我々に押し付けに来たということだな」
すっかり萎縮してしまったピュエールを見て、イラは宗介を肘で突いた。そして、宗介はピュエールの元に行き、
「ピュエールさん。もしよろしければその依頼、俺たちが引き受けましょう」
そう言うと、ピュエールは目を輝かせ、
「本当ですかあ!引き受けてくださるのですかあ!」
「おい、待てソウスケ。君はまだクエストも受けた事も無い初心者だ。流石にこの依頼は危なすぎる。」
と、アレスは止めるが、
「大丈夫です。俺一人じゃなくアリスとイラもついているので」
と、自信を持って言うが、ピュエールが申し訳なさそうな顔をして、
「あの……実は我が国は亜人の入国は禁止しておりまして」
と、言ったので、宗介は流石に驚いた。まだこの国しか知らないので自然と人間と亜人が一緒に暮らすという認識が出来ていたのだろう。
しかし、これにはイラもアリスもご機嫌斜めだ。特にアリスは何度もスネを蹴ってくるのでとても痛い。
「これがあまり承諾したくない理由の一つだ」
と、アレスはため息を吐く。
宗介もやはり断ろうとピュエールに言おうとするが、眩しい視線に気圧され言えに言えない。
「じゃあ、イラちゃんとアリスちゃんは私が預かるよ!」
突然現れたフィオに周囲が言葉を無くしたが、それを御構い無しにフィオはアリス達を連れてギルドを出た。
「……ま、まぁこれで心配する理由はなくなったでしょうかあ」
宗介とアレスは黙って頷き、宗介はピュエールと共にギルドを出た。




