10冊目 迎撃
監獄【ルシャ】から脱出した宗介達一行。今はあて先も無く1時間、森の上を魔龍の背中に乗り空を飛び続けているところである。
「なー、イラ。本当にこっちに人が住んでいるとこなんてあるのか?」
「うん。確かにこっち側に国があったと思うんだよ。まぁ、もしかしたらもう滅亡している可能性もあるけどねー」
「笑えねー」
魔龍の背中で揉めているイラと宗介の間にアリスが寝ているという状況だった。
「いや、でも本当にそろそろ国があるっていう証拠が――」
「ん?おいイラ。あの向こうに見えるのはなんだ?」
宗介達の視野の奥に入って見えたのは、突如として現れた6つの影だった。
「いや、……あれはドラゴンか?」
目を凝らすと、6つの影は6体のドラゴンだった。
ドラゴンにはそれぞれ人が乗っており、真ん中にいた人が他の5人に話しかけていると思うと、ドラゴンは横一列に並び、攻撃を繰り出した。
「いや、ちょっと待て!」
慌てふためく宗介だったが、攻撃は宗介達の横を通り過ぎて行った。
「団長。ドラゴンに乗っている人数を確認。男が1人に、悪魔と狐の少女がそれぞれ1人ずつ、ドラゴンは容姿から恐らく魔龍だと思われます」
そう言ったのは、右端から2番目の双眼鏡らしきものを持った兵士だった。
「魔龍か……。バーン、お前から見てあれは危険な存在だと思うか?」
「ふん。確かに、あの魔龍からはとてつもない魔力を感じるが、乗り手が牽制程度であの慌てようなら恐るるに足りぬわ」
話し合いをしているのは、赤い髪に赤い鎧が特徴の竜騎士団団長アレス。彼は3年前、齢25の若さで力を見込まれ、相棒でもある火竜バーンと共に数十人いる騎士団の団長を受け持っている。
「なるほど、しかし何はどうあれ侵入者であることに変わりはない。次は当てにいくぞ、バーン!」
「承知!」
バーンは力を込め、火球を放つ体勢に入った。
「ほーら、やっぱりこっちで合ってた!この辺、無断で空を飛んでいると、国の竜騎士達が迎撃にくるんだー。」
と、イラは嬉しそうに言った。
「いや、ほーらじゃない!それ知ってたなら先言ってくれよ!」
イラと宗介がまた揉めていると、バーンの火球が宗介達目がけて襲いかかってきた。
襲いくる火球を前にイラはとっさに、宗介を掴み、火球の方へと投げ込んだ。
「……え?」
一体何をされたのかわからないまま宗介は火球に飲み込まれ、そのまま火球は爆発した。
煙が晴れ、空を漂っていたのは、――あ、やっちまった。とでもいいたそうな顔をしているイラと、魔龍に攻撃が当たっていない様子に驚いている騎士団、そして未だに寝ているアリスの姿があった。
イラは恐る恐る宗介が落ちた場所を見下ろすと、ホッとしたように胸を撫で下ろし、魔龍に下に降りるよう命令した。
下には葉や枝が絡まりながらも、いたって無事な様子のゴズメズに変身した宗介の姿があった。
火球に当たったり、地上に墜落してもダメージのないことを驚きながらも、イラには後でお説教が必要だなと宗介は決意した。
「まさか、バーンの攻撃を受けて無傷とは……。少し相手を見くびりすぎたか?」
未だ驚きを隠せないアレスがそう口にすると、
「ふん、貴様の目は節穴か。我の攻撃が当たる直前、何かが飛び出してきて、それが我が攻撃に当たったのだ。それよりも魔龍が下に降りるぞ。後を追わなくていいのか?」
「あ、ああ……そうだな。おい!俺は今から魔龍の様子を見に下に降りる!お前達は魔龍が空に上がった時の迎撃を任せたい!」
「イエッサ!」
「よし!行くぞ、バーン!」
団員達の返事を聞いて、アレスとバーンは下に降りて行った。
「おーい?大丈夫ー?」
「大丈夫だけど、後で覚えとけよ……」
宗介の所に降りた魔龍の背中からイラは言った。
「いやー、もうその変身能力モノにしたねーすごいすごい」
「おだてても、許さんからな」
「……チッ」
何やら舌打ちが聞こえたような気がするが、今は茂みからガサゴソと音がするので、まずは警戒を優先した。
「その魔龍は君たちのドラゴンかね?」
そう言って、茂みから出てきたのは竜騎士団団長アレスの姿だった。
「私はドラ・スィアス王国、竜の騎士団団長アレス・グレンライトである。魔龍及び、君たちを捕縛しに来た」
淡々と言うアレスに、宗介は慌てて、
「いや、ちょっと待って下さい!俺たちは監獄に捕まった所をこの龍に助けてもらって……あ、これだと脱獄の罪になるな。えーっと――」
宗介の言い訳が終わる前に、アレスは驚きの表情を見せ、
「何……?まさかあの【ルシャ】から、逃げ出して来ただと?おい、君たちは一体何者なんだ?」
と、言ってきたアレスに対し、宗介は思い切って、
「……実は俺は別の世界から来たんです」
と、言うとアレスはまたもや驚いていると思えば、隣にいたドラゴンも同じように驚いていた。
そして、そしてアレスとドラゴンが何やら話し合いをしていると、アレスは宗介達に向かって、
「君たち、どうか王国に来てくれないだろうか」
と、言ったのだ。




