1冊目 穴に落ちた医者
初投稿でございます。あたたかぁ〜い目でご覧になられたら嬉しい限りです。
「うぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分でもびっくりするぐらいの奇声を今、男は雲よりも上の空から叫んでいた。
重力に従うようにどんどん落下し、バッグから飛び出た荷物が男の後ろで後を追うように落下していた。
何故俺がこんな状況にいるというのも…………
――20分前
「こうしてお爺さんとかぐや姫は幸せに暮らしましたとさ……おしまい」
「面白かったー!」
「最初はおばあさんが川に流されてどうなるかと思ってたら、まさかそのままおばあさんが登場しないとは思わなかったよー!」
「でもやっぱ、鬼との戦いでかぐや姫が出した焼き栗ドライブ!スッゲーかっこよかった!」
「でも私はもうちょっと女の子らしい話がよかったなー」
「ははは、ごめんごめん。次はちゃんと美希ちゃんが好きそうな話をもってくるよ」
「ほんと!?約束だよ!絶対だよ!ゆびきりげんまんだよ!」
「はいはい。わかりましたよ」
このどこかで聞いたような昔話をアレンジして、子供たちに語っている男は、夏目宗介22歳職業医者。
もともと、本を読むことが好きで、自分で作った話を友だちに聞かせることが好きだった宗介は、今は病院内の子どもたちにオリジナル昔話【桃栗かぐや姫】を聞かせている所だった。
「って、もうこんな時間か。それじゃ、俺はそろそろ行くよ」
「えー、もう言っちゃうのー。もっとお話し聞きたーい」
この場から去ろうとする宗介に少女美希は物足りなさそうに言った。
「ごめんな、次は美希ちゃんの好きな話聞かせてあげるから」
と、宗介は美希に言うと、美希は嬉しそうに、
「じゃあ、アリス聞かせてねー!おにーちゃん!」
と、言った。
宗介は美希と約束を交わしてその場を去った。
「さてさて、まずは花を買いに行かないとな」
病院から出た宗介は、花を買いに街の中を歩いていた。
「しかし寒いな。あらかじめ買っておくべきだった」
などと、独り言をつぶやいていると、
「……ん?」
宗介の目に映ったのは、この街中には似合わないような、銀髪の短髪に、ボロボロの一枚着を着ている五、六歳くらいの少女が立っていた。
寒そうだな。――と、少しズレている事を思っていると、宗介はあることに気づく。この少女を見ている人がいなかったのだ。こんな身なりをしていたら、誰かは気になって視線を向けるだろう。
すると、少女は宗介に気付くと、突然走り出した。少女のことが気になった宗介は花屋を後にして少女を追うことにした。
「おい!ちょっと君待ってくれ!」
胡散臭そうに宗介に目をやっている人々の目線が気になりながらも少女の後を追っていた。しばらく追いかけっこをすると、曲がり角をのところで急に少女の姿を見失ってしまった。
「あっれー?どこ行った?」
と、辺りを散策していると…
――ブゥゥン
突然、足元に穴が空いた。
「ちょっ……」
突然の出来事に、何も抵抗もなく宗介は穴に吸い込まれていくように落ちていくと、そこは地上ではなくだだっ広い大空だった。宗介はその光景にしばし見とれていたが、地上に向かって落下している事がわかると、焦り出し――そして今に至る。
「……さて、どうするべきか」
叫びに叫んで落ち着いた宗介は、改めて今いる状況を把握する事にした。
現在、宗介のいる場所は高度二キロ。パラシュートをする時の高度よりも全然高い。対して、宗介には道具も無く、落下予想地点には水もない。
これらから導いた答えは、
「……死……か」
と、宗介は呟いた。
まさかこんな所に落とされて人生を終えるなんて。そういえば、あの子もここに落っこちたりしていないかが少し心配だな。もし、ここが異世界なら俺は異世界の天国に行くのかな? それは嫌だな、まだ花も買っていないし……。
などと思っている内に地上との距離はもうすぐそこだった。そして、宗介は覚悟をしたかのように目を閉じ、地面にぶつかる――筈だった。
ズボッと宗介は何かに埋まり込んだ。それは新品の毛布を身体中に巻き付けたような感触だった。
あぁ、ここが天国か。と確信した宗介は次の瞬間ここが地獄であったと確信した。




