表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

になる


 空のお星さまは、いつもきみを見守ってくれているよ。

 お母さんがそう言っていた。

 それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは一生を終え、星になった。



 木星くんはいつも以上に落ち着きなく、赤いうずを回していた。いったいどうしたのだろう?

「どうしたの? 木星くん」

「いやね、地球くんが最近ぎらぎらしてるのが気に入らないのさ」

「ぎらぎら?」

 確かに地球くんは、最近体の周りがきらきらしているような気がする。

「地球くん、それなあに?」

「ああ、これ? これは最近流行りのスペースデブリさ。綺麗だろ?」

「そうだね」

 それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは星としての一生を終え、綺麗になった。



 綺麗になったぼくは空の下に帰ってきた。

 そこにはたくさんのものを綺麗だと感じるたくさんの生き物がいた。

 かれらが「綺麗」だと感じると、ぼくの存在感は強まった。

 そのうちかれらは滅んでしまった。ぼくは綺麗としての一生を終え、星になるつもりだったけど、星は滅んでいた。

 仕方がないのでぼくは存在感になった。



 宇宙の崩壊が始まっていた。原子核くんが死んで、中から中性子くんが逃げ出していた。

 中性子くんは陽子くんになった。陽子くんは死んでしまった。

 ぼくは徐々に居場所をなくしていた。

 ぼくはなくしていた。になった。



 なくしていた。になったぼくはたくさんの居場所を得ることができた。

 なくしていた。が求められる場所はたくさんあったからだ。

 あまりにたくさんだったので、ぼくは分裂した。

 なくしていた。はたくさんある。になった。



 たくさんある。は素粒子になった。

 素粒子は今までずっと一緒にいてくれた時間になった。

 時間は昔になった。

 昔であるぼくは、かつて存在感があった綺麗な星になった。



 空のお星さまは、いつもきみを見守ってくれているよ。

 シリコンでできた生き物が我が子に対してそう言っていた。

 ぼくは二人の生命体に見つめられて、かれらになりたいな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ