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光差す海  作者: 長谷川真美
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忘れられない永久の刻み

初めに神は天と地を創造された。

地には形なく、空虚だった。闇が深遠の上にあった。神の心が水の上を動いた。

神が言われた、「光あれ」そして光があった。

神は光を見て、良しとされた。神は光を闇から分けた。

神は光を昼と呼び、闇を夜と名付けた。晩と朝、最初の一日であった。


 新天地での生活がお互い安定して私は(ひかり)にプロポーズをした。手話混じりのプロポーズを光はゆっくりと受け取った。人生で二度目の婚約だった。一度目はポスドク時代の指導教授の娘さんだった。その婚約は私に生殖能力がないことで破談になった。その事を伝えるのが一番怖い。しかも今度は顔を知らないご両親との顔合わせだったので余計に緊張する。かつてないほどの心臓の鼓動と顔が青ざめているのが自分でもわかった。なんとか笑顔を作ろうとするがうまくできない。時間がやってきたので意を決してホテルの日本料理屋の個室に入る。入った瞬間に(ひかり)のいつもの笑顔が見えた。血が通っていくのがわかった。ようやく落ち着くことができた。光のご両親は穏やかな笑みをたたえていた。「麻生泰臣(あそう やすおみ)さん、(ひかり)と生きていくことを選んでくれてありがとうございます。」品の良いご夫婦の顔には涙が浮かんでいた。私は生殖能力が無いことを自分でも冷静だと思うぐらい通った声で伝えた。ご両親、特にお母様が私に語りかける「光からその事は伺っています。子供がいなくても幸せな夫婦はたくさんいます。」更に続ける。「子供がいることの幸福と同じぐらい麻生さんは光に沢山のことを与えてくださる(かた)だと信じています。光と幸せに生きていって下さい。」その言葉に涙が止まらなくなった。「光さんとなら幸せに生きていけます。お嬢様に悲しみの涙は流させません。私と結婚することを許していただきありがとうございます。」涙声混じりの声でご両親に約束をした。「死がお互いを別つまで一生を供に歩んでいきます」その後、部屋は涙が溢れていた。


 ご両親と顔合わせをして光と婚約をしてからは砂時計の砂は一気に流れていった。光にはブルガリのペアウォッチを指輪の代わりにプレゼントした。本当は指輪が良かったが宝飾品店で光が指輪よりも腕時計を恍惚な表情で眺めていたので腕時計にした。光はキレイにラッピングされた箱を丁寧に開けて、大切そうに時計を眺めた。私は箱から同じ腕時計を着け、光の腕にはめていった。サイズは合っていた。腕を上げ「一緒だよ」と手話で伝える。「一緒だね」と光が幸せそうな笑みを浮かべた。二人のペアの時計は同じ時を刻んでいった。怒涛の勢いで結婚式を終わらせ、新たな日常を過ごしていった。日常は色彩に満ちていた。笑っていたり、時には怒ったりしていたが光には悲しみの涙は流させなかった。それが光と一生を過ごすと決意したときからの誓いだった。


 「光あれ。」旧約聖書の創世記の言葉だ。神は光を見て、良しとされた。神は光を闇から分けた。光がいる限り私の世界には闇は訪れない。もし闇が訪れたときには貴女が放つ一筋の光を見つけよう。いつか貴女がいなくなったときには最後に残していった時計で時の刻みを見ていこう。時計は私と貴女の一緒の時を刻み続ける。時の刻みは永久に続いていくのだから。それが私と貴女の人生だ。心に貴女と一緒にいた時が刻まれていく。光はいつも力強く生きていく。私も精一杯生きていこう。太陽の光がまばゆい。そして明るい。その明るさは貴女が教えてくれたのだから。FIN.


難産状態だった最終話です。BGMのBUMP OF CHICKENに引っ張られてなんとか最後まで書き上げられました。夏の始まりに始まり、夏の終わりに終わった作品です。少しずつ秋、そして冬の訪れを感じる夕方です。また違う作品でお会い出来ることを楽しみにしています。


BGM:BUMP OF CHICKEN

2017/8/30

長谷川真美



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