あの日の記憶
夢で見た話しを改変しまくってできたものです。あと、名前や季節などの情報がほとんど無いので自由に想像して下さい。
その日は、よく晴れた日だった。
雲は空の何処にもなく、見渡す限り青一色。
そんな天気だったからだろうか。友人が気まぐれにこう言ったのだ。
「今夜、星を見に行こう」
「……それはネタか?それともガチか?」
「ガチだよ、ガチ!こんな天気の良い日なんて滅多に無いしよー。それに今日はちょうど何とか流星群とかが来るんだろ?グットタイミングじゃん!」
流星群……確か、朝のニュースでも軽く触ってたな。
何年振りとか、次に見られるのは何年後とか、だから今夜見ましょうとか。
ありきたりな事を言ってた気がするが、でも確かに今日の天気ならバッチリ見えるだろうな。
案外、いい思い出になるかもしれないし、友人の提案に乗ってもいいかもな。
「分かった。見に行くか」
「よーし!そうと決まれば残りのメンバー探しだな」
メンバー探し……どう言う事だ?二人で見に行くんじゃないのか?
「あん?何だその顔。もしかして二人で行くとでも思ってたのか?」
「まさにそうだと思ってたんだが」
「野郎二人で星を見に言って何になるんだよ。やっぱ華がねぇと、華が!」
華、つまり女子だ。
どうやら友人は純粋に星を見に行く気など最初から無かったようだな。
星をダシに女子を釣るらしい。
ただ、釣る奴の腕が悪いので誰もかからないと思うが。
「お前は特に何もしなくていいからな。メンバーは俺に任せろ!」
「分かった。昼に集合場所とか決めるでいいか?」
「おう!」
返事をした瞬間、俺から離れ女子の元へと早速向かっていくが、多分失敗するんだろうな。
んで、結局野郎二人で星と流星群の観察。分かりきった未来だ。
でも……。
「思い出は人が多い方がいいからな」
少しは手伝いますか。
あ、委員長!ちょっといい?今日の夜なんだけど……。
●●●●●●●●●●
昼。
俺の目の前には真っ白に燃え尽き、こうべを垂れている男がいる。
「な、何故だ。俺の何がいけなかった!」
「OK。話しは分かった。誰も誘えなかったんだな」
「くっ⁉︎そうだけど、そうだけど!」
予想通りの結果だった。
昼になるまでにクラスの女子はもちろん、他のクラス、果ては他の学年まで誘いに行ったらしいのだが、答えは全てノーだったらしい。
「あり得ないだろ!せめて一人は来いよ、一人はさ!『今日、予定があるから……』で断れたのはまだ良い。けど、『実家の祖母の妹の夫の弟の子供の父親が亡くなったから……』はどう考えても嘘だろ!しかもよく聞けば亡くなったの夫の弟だろ!子供の父親まで言う必要ないのに言ったって事は100%嘘じゃん‼︎」
「いや、実は複雑な家庭で弟と父親が別人の可能性も……」
「ねぇよ!」
悲しみと怒りが入り乱れだれた声をあげて、おまけに涙まで流してる。
想像を遥かに超える程断られたのが、精神にきてるみたいだ。
「こうなりゃ野郎二人で楽しむしかねぇよ!やっぱ男だよ、男!」
「やばい発言みたいだから止めろ。あと、女子も来るぞ」
「へ?」
「そっちが失敗すると思って、委員長ともう一人に声かけてOK貰ったぞ」
お、どうした?そんな惚けた顔して。
「そ、そんな……委員長とさらにもう一人だと。お前どうやって脅したんだ!」
「脅してねぇよ!普通に委員長に来ないか誘ったらOKで、ついでに友達も呼ぶってなって、そっちにも声をかけたんだ……ホラ、噂をすれば来たぞ」
委員長と友人である女子が歩いてこちらに来ている。
昼に場所を決めるって言ってたからな。
「本当に委員長含め女子が二人来た……クッ!なぜだ、俺とこいつの何が違う!」
「誘い方が違うでしょ。私、ちょっと見てたけど軽く引くくらい迫って誘ってたわよ」
「委員長の言う通りだな。そう思うよな、○○?」
「う、うん。ちょっと強引ぽかったかなって……あ!別に悪くは言ってないんだよ。悪くは!」
「うぅ……いっそ普通に悪いと言ってくれー!」
三人からのフルボッコの攻撃により机に突っ伏した我が友人。
残念だが自業自得だ。もっと気軽に話しかければ結果は違ったかもしれないが、今となっては関係ない。
そんなことよりさっさと場所決めるか。
「で、友人は置いといて、何処で見る?てか流星群も何時頃から流れだすんだ?」
「おい、俺を置いとくな!」
「流星群は今日の夜19:00頃から観れるって言ってたわよ」
「あの、委員長?なんで俺をスルーしたの?」
「あ、あの。私今日は塾があるので、そのまま行けるように塾の近くがいいです」
「待って!三人で進めないで!俺もいるから!」
少し周りがうるさいが、そうか○○は塾があるのか……。
確かあそこの近くに高台に公園があったな。そこが良いかもしれない。
「なあ、高台の公園なんてどうだ?塾からも近いし、周りに照明もあんまり無いし、よく見えると思うんだが」
「まて、まて!場所についてなら俺に任せろ!実はとっておきが……」
「私はそれで良いかな?自宅からも近いし。○○は?」
「え?待って、せめて候補の一つに入れるくらい……」
「は、はい。塾からも近いし、そこがいいです!」
「よし!じゃあ高台の公園に決定だな!で、どうした?メモ帳なんか広げて」
「いや……なんでもねぇ。こうなったら楽しんでやるよこの状況!高台の公園に19:00までに集合だろ?絶対俺も行くからな!絶対だそ!」
こうして俺たち四人は今夜集まる事となった。
●●●●●●●●●●
夜18:30。
目的の公園まで来た。なんで30分も早いかと言うと、途中で自転車がパンクしても間に合う位の時間に、家を出て来たからだ。
おかげで早く着きすぎてしまった。さすがにまだ誰も……。
「フッ。遅かったな!一番乗りは俺だぜ!」
「……なんでいるんだよ。早すぎだろ、いつから?」
「18:00には着いていた!」
一時間前行動かよ。
しかも、天体望遠鏡と星座版もあるし。どんだけ用意周到なんだよ。
「まさかそこまで準備するとは」
「何言ってんだ。本当はもっと用意したかったくらいだ!ここに場所が決まっちまったから、これでも減らしたんだよ」
減らして、それら持ってきたのか。よくやるよ。
その熱意が誘う時に伝われば良かったのにな。
「ま、持ってきてくれてありがとな。これならよく見えるし、星座も何があるかすぐ分かるな」
「だろう!完璧だ。これなら絶対無視されない」
「あ、気にしてたのか」
「当たり前だ!」
そう言われても、一時間前に集合場所に着いて、荷物一式持ってくるやつが昼の事を気にしているとは思えない。
むしろ、無茶苦茶楽しみにしてたとしか思えない。
「この準備の徹底さを見ると、楽しみにしたとしか見えんのだが?」
「ぶっちゃけ楽しみにしてた!」
「やっぱりな」
「なんかこうさ、夜に集まってなんかするってのが青春じゃね!」
その感情は分からなくはない。
人が居なくなり、暗くなる時間。そんな時にあえて集まり、何かする。
……うん、なんか青春っぽいな。
「あのさ」
「ん、どうした?」
「絶対に四人で流星群見ような」
「……お前、それフラグだぞ」
ハハッ‼︎まさか、まさか。
残り20分で集合時間だぞ?そんなタイミングで誰か来れないなんてことになるわけない!
「そう思ってた時期が俺にもありました」
「おい!フラグ立てた張本人!どうすんだよ、このままだと開始時間に一人いないぞ!」
「いや、本当に急よね。○○、塾が長引いて遅れるなんて」
あれから10分。委員長が到着し、後は○○だけとなったのだが。
委員長の方に連絡が入り、塾が長引いて開始時間には着けそうにないと言われたのだ。
塾が終わったら直ぐに来ると言っていたし、流星群も見れるだろうが……。
「せっかくなら四人で見始めたかったわね」
「そうだな」
「塾終わるのって、いつなんだ?絶対に間に合わないのか?」
「正確には分からないけど18:55くらいじゃない?」
塾から歩いてここまで来たら19:10位になるな。
ギリギリ流星群の始まりに間に合わないじゃん!
どうにかできないのか?せっかく友人も準備してくれたし。
何より、個人的になるけど○○とは流星群を最初から最後まで見ていたい。
どうにか……あっ、そうだ!
「俺、迎えにいく!」
「へ?いやいや!迎えに行くって、なんで?」
「自転車で塾まで行って、○○を後ろに乗せて戻って来る!これならギリギリ間に合う!」
「まって、それ道交法違反じゃ……『委員長‼︎』な、なに?」
「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ‼︎と、言うことで行ってくる!」
「おい!行くなら間に合うように全速力でな」
「分かってるよ!」
後ろから委員長の制止の声が聞こえたが、気にしないぞ。今は時間がないんだ!
止めてあった自転車に走りながら跳び乗り、公園から塾へ向け、ペダルを漕ぎまくる。
暗闇に時々ある明かりを頼りに、塾へ坂を下りおりて行く。途中で石につまずき転びそうになるが。
「転ぶか!」
ハンドルを巧みに操ると同時に、体重の移動を駆使してなんとか踏みとどまり、進んで行く。
そして……塾に着く直前、18:56に歩いて此方に向かっている○○を発見した。
「居た!○○乗れ!」
「え?え、何でここに?」
「話しはあとだ。最初の流星群みんなで見よう」
「う、うん!」
後ろに乗ったのを確認したら、下ってきた坂を上っていく。
ただでさえ上り坂でキツイのに、二人分の体重だからな。当然進む速度も遅い。
歩くのよりは早いが。
「ぜぇ……ぜぇ……きっつ!」
「あ、あの大丈夫?私は置いて先に行って大丈夫だよ」
「ここまでやって、置いて行くってのはないでしょ。それに……」
「それに?」
「一緒に見たいから」
「えっ?なに、よく聞こえない」
えー⁉︎結構勇気出したのに!何で難聴を発揮したの?
確かに風が吹いてるし、自転車漕いでる音もあるから聞こえづらいのは分かるけど、分かるけども!
「聞こえなかったなら、いい。それより今、何分?」
「えっと、今は19:00……もう時間」
「うそ!」
それに驚き、空を見るが星が輝いているだけで、まだ流星群はない。
「まだ流れてはないか」
「う、うん。だけどもうそろそろ流れるはず」
「だったら大丈夫だ。着いた!」
時間は過ぎたが、着いた。
そしてまだ流星群が見えないならセーフだ。
「おっ、ギリギリだな。よく間に合ったな」
「はぁ、はぁ。まじでギリギリだよ」
「だ、大丈夫?」
「○○。心配しなくてもいいわよ。迎えに行くまでも無いのに、制止を聞かずに飛び出したんだから」
「でも全員で見れるだろ……ホラッ!来たぞ!」
その声に全員が空を見上げる。
そこには一面に広がる、流星群があった。
「綺麗だ」
「確かに」
「綺麗ね」
「は、はい」
みな言葉は少なかったが、目の前に広がる光景に胸をうたれていた。
しばらくはその状態で流星群を眺めていると、委員長が不意に声をかけてきた。
「ねぇ、○○をわざわざ迎えに行った理由。私、分かったんだけど」
「へ?なんだよ」
「それは……」
耳を寄せて、委員長の小さな声を聞き取ると、俺の考えをぴたりと当てていて驚いた。
なんで分かったんだよ!
「実は私も朝はあの番組なの」
「だ、だからか」
「けど……以外と信じるタイプだったのね」
「まあな」
「おい!二人で何話してんだよ。俺にも聞かせろよ」
「お前は聞かなくていい」
「またか!またそうやって俺を除け者にするのか!」
「ちげぇよ!」
「あ、あのケンカは……」
そうやって流星群の夜空の下、四人でまた喋りだし、星を見続けた。
天体望遠鏡や星座版を使いながら、様々な星をみるのをなかなか楽しいもので、結局かなり遅くまで公園に居た俺たちは、その後親に怒られたりしたのだが、最高の思い出を作ることができた。
その日はそんな一日を過ごしたんだよ。
「ふ〜ん。じゃあ委員長さんと話してた理由ってなに?」
占いだよ。朝のニュースのね。
「占い?」
そう、父さんの星座はその日一位で、偶々内容を聞いたんだ。
「どんな内容だった?」
今夜、夜空の下で想い人と友人達で楽しい時間を過ごしましょう。そうすればきっと結ばれるでしょうってね。
一人だけ一緒に見れない時間があったら、本当に楽しい時間にはならないから、頑張って自転車漕いだよ。
「そっか!だからお父さんとお母さんは一緒になったんだね!」
ああ、そうだよ。
「あら、なんの話してるの?」
「お父さんにこの写真の日のこと聞いたんだ」
そう言ってあの日の写真を掲げる我が子。
そこには此方に向けて笑っている、かつての僕達がいた。
読んでくださりありがとうございました。