表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

壁の社会と国


 いつからなのか、わからない。

 私の故郷は、いや国は巨大な壁に囲まれて生活している。生活せざるおえなかったという方が正しいだろう。この巨大な壁は国が建てたのではなく外の国が建てたらしい。……落としたと言うべきか。


 私が小さい頃に祖母に『なんで壁があるの?』と聞くと『昔、私達は罪を犯してしまったから壁が出来たの。ここにいて神を信じればばきっと壁がなくなるよ』と教えてくれた。


しかし大人達に聞くと祖母とは別の答えが返ってきた。

800年も前は壁なんてものは無かった。




 先祖達の一部の人達が世界中でテロを起こしたせいで世界中の人達は躍起になって報復しようと決めて、この国に潜んでいる一部を捕まえようとしたらしい。でも無理だった、顔はほとんど同じで姿を見せず、爆弾や不意打ちなどでしかも間違えて捕まえて悲劇が起きたときには恨まれてその恨みによって一部の人達が増えて、被害が大きくなる悪循環に陥ったからだ。

 世界中の偉い人達がこの問題をどうするべきか悩んだ。

 ある時に一つの解決策が出された。いや、妥協したのだろう。

 そこから先祖達の生活が変わってしまった。


 ある日、朝方からとてつもない地震が起きた。

 人々は立つことはできず家々が崩れ去り山々が崩壊して天変地異が起きたようだった。

 地震が収まったあと顔を上げた時、天に届くんじゃないかと思わせるようにそびえ立つ壁があった。

 先祖達が後になって気付いた事だがさっきの地震は壁が空から落ちてきた衝撃で壁はこの国の国境を取り囲んでいて国境近くの村は跡形も無く吹き飛ばされ山脈や川は原形をとどめず越えた先の国境はとてつもなく高い壁で分断されていた。


 混乱が少し落ち着いたあとに先祖達は壁に近づくが壁は何かしらの金属でできている事は分かったがそれ以上の事は分からなかった。

 何かしらの抜け道を探していたらこの壁の門らしき姿と人らしき姿が見つけたらしく事情を聞こうと近づいたが話し掛ける前に銃弾を浴びせられた。


 その後、先祖達の苦難が始まった。


 しばらくは何とかして話を聞いてもらおうと近づいたが門を守っている人達は何の躊躇無く彼らを一方的に発砲してきた。


 その後は国の軍隊が壁を攻撃して破壊を試みたが壁は一切傷つかなかった。その次に門を攻撃したが門側の防御は厚く、逆に反撃で軍隊は壊滅的な被害を負った。

 空軍が夜中に紛れて飛行機で壁を越えて友好国に助けをを求めようとしたが、壁が高すぎて壁に直撃したり壁の頂上が何とか見えるぐらいの高さまで飛んだら壁側に撃ち落されたりした。

 いくつかの者達が知恵を絞って壁に登ろうとしたが一人を除いて生きて返って来なかった。その一人も壁の頂上には警備をする兵士がいることを伝えて死んだ。


 ある将軍が脅迫のために秘密裏に隠し持っていたミサイルや、宇宙経由から脱出を試みた政府と地元の民間企業が作ったロケットに、誰かがこの国の現状を伝えようと放送局からの衛星中継をしようしたが発信する瞬間までもが、また空から落ちてきた何かによって最初よりも遥かに小さい地震を起こして消えた。


 政府や軍隊がほとんど無くなり混乱が大きくなり国が崩壊した。


 近くの大人達が話してくれた内容はその頃の小さい私にはまだ分からなかった。

 やがて私が少年の時に父が大事な話だと私の一族についての話を聞かせてくれた。


 私の先祖は国が壁に囲まれたその頃、何をしていたのかというと掘っていた、正確には掘ろうとした。混乱が支配して無秩序になっている時、私の先祖は壁の向こう側にいる親友を心配していた。そのためどうやって超えよう考えていた。その時には壁に近づくだけで銃弾の雨か空からの何かによって消されるかもしれなかったため近づくことさえできなかった。


 一晩考えて思いついた、壁は山を分断しているから山にトンネルを掘って行って壁に近づけばいけると考えたのだ。彼自身は坑道を幾度も作り上げた事があるためこの考えには自信を持っていた。

 最初は仲間を集めようとしたが誰もが混乱の影響で日々の生活を送ることさえの余裕が無かったから話すら聞いてくれなかった。

 結局は一人で掘る事になり二十年かけてようやく壁に到達したが問題があった、手持ちのツルハシでは壁に傷をつける事すら出来なかった。困り果てて壁を前に途方に暮れていた時にそこに壁に何かが付着していた事に気が付いた。


何かの金属の黒い欠片だった。


 もしかしたらと思い、剥がす事、二か月とツルハシの破損をかけてようやく剥がせた。試しにその金属の欠片で壁を削るとほんの僅かだが傷が付いた。

 その日を境に彼は少しずつ壁を削っていた。やがて食料を調達するために町を散策して運命の女性と知り合い結婚をしたり、トンネルがある山の近くで家を建てたり畑を耕したり、待望の子供が生まれたりといろんな事があったが空いた時間で彼は壁を削っていた。やがて年を取りながら成長した子供と一緒に壁を削り、やがて孫の顔を見れた後も壁を削り続けて、老衰で寝たきりになり壁を削る役目を息子に託して死んだ。


 その後は同じように削り続けた、何世代もの間に先祖達は削り続けた。

 もちろん壁に付着していた金属の欠片をどうにかして加工をしようと何世代も考えていたが火に晒しても溶かず、知り合いの鉄工所の人間に頼んでも鉄が溶ける温度でも溶けず、加工を諦めて必死に欠片のままで削っていった。


 削り続けている間に周りは変わっていった。元の政府はもちろんの事、自分たちが正当な政府だと名乗る勢力や自分たちが国を変えると名乗る勢力、自分の面倒は自分で見ると言う勢力が現れて、壁の中の国は分裂したり、壁の中で少し電波が悪いけど周りの壁の外にいる国からのテレビ放送やラジオで新しい技術が生まれたとか国連による壁の落下計画でテロが95%消えたため壁に反対する人達もほとんどいないとかの情報が流れても削り続けてきた。


 先祖達も変わっていった。たくさんの家族ができたり、親がいない赤ん坊を拾って養子にしたり、もう壁を削るのは諦めてしまおうかと悩んだり、自分達が壁を削る目的を忘れそうになったり、様々な事がありながらも来る日も来る日も途方もない年月が過ぎてもなお壁を削り続けていく事は変えなかった、そして削り続けて725年の時にその代の人はついに壁を破る事ができた。


 その代の人は初めて壁を越えた先の大地を踏んで涙を流すぐらいに感動した。ついに先祖の悲願である、壁を開通する事ができたのだと。


その代の人はまず、今すぐに先祖の長年の親友に会いに行こうとする気持ちを抑えて一度、家に戻った。

 家に戻ったら予めもしも自分の代に開通したら外の人間にばれないように穴を偽装するための鉄板を持った。偽装用の鉄板は今までの先祖達が削ってきた壁の削りカスを鉄板に溶接した物で外見は壁に似せている。今までに外の人間が先祖達を壁から出したくないのは彼らの対応から明らかだった。

 今でも壁の門を力ずくでも開けようとする集団が門を攻撃して壁の門を守護する人達が反撃でその集団を殲滅している。

 もちろんの事だが開通の事は自分達以外の人達も知らせていけない。少なくとも3人に1人ぐらいは外の世界をひどく憎んでいる。もしも彼らが前の事をやろうとしたら先祖達の今までの努力が無駄になってしまう。


 そして自分達が壁の中の人だとばれないようにできるだけ綺麗で清潔な服を着替えた。壁の中で閉じ込められているのだから新しい服は自分で縫うか他人から奪うかしかないし、服が汚れたら洗剤もないから川かちょっとの汚れなら我慢するしかない。外の世界の様子はかろうじてテレビやラジオで分かるが服の汚さで警官に止められたくない。

 そのためにまだ汚れていない服に埃が被っていたコートと麦わら帽子を被って再び壁の先の大地を踏んだ。



 意外にも町並みは先祖が描いた絵とあまり変わっていないが所々に変わっている所もある。

 空には小さな丸い形をした機械がそこもかしこも飛んでいたり、人間のように二足歩行しているロボットが鉄骨を軽々と持って建物の建設現場に向かっていたり、ラクダのような形をしたロボットがラクダでは積めないような大量の荷物を積んで人混み掻き分けたりしていたり、左腕が鉄の男が右足が象牙のように白い男と談笑している。

 テレビやラジオで宣伝やニュースで知っていたが実際に見てみるとここは壁の外で壁の中より時が経って技術が進歩した事が分かる。


 だがそうなると先祖の親友一族はもうここにはいないという事があるじゃないかと疑問が浮かんできた。もしかしたらとうの昔に去ったかもしれない、壁が落ちてから。

 それでもなお先祖の親友をに会うことにした。もういないかもしれない、まだいたとしても忘れられたかもしれない。もう長すぎる年月が経ったのだ、知っているのは親友が住んでいる家の場所と名前だけで顔もどんな人なのかも分からない。


 それに、もしまだここに住んでいたとしても先祖達が仲が良かったが今は会った事も話した事も無い赤の他人なのだ、もし壁の中にいる人間が壁の外に出ている事をその親友である子孫が警察か軍に通報すれば確実に殺される。

 だが先祖は壁の外にいる親友に会いに行くために人生を賭けて壁を削ったのだ。せめてその親友がこの地に住んでいるかどうかを確認してもいいと思う。



 その家はあった、だが肝心の親友は留守だった。カメラ付きインターホンを押した時に

『主人は留守です』

 綺麗な女性の声をを模した音声がインターホンから聞こえた。

『私はホームメイドAIペリ2000型です。要件をどうぞ、もしくは留守電に切り替えますか?』

 先祖代々に伝えられてきた親友の名を伝えて探している事とこの家の主人がいつ帰ってくるかを尋ねた。

 先祖の親友は大分昔に死んでいるがこの家の主人はその親友の子孫でいつ帰ってくるかは設定で言えない事だと分かった。

 一目見てみたかったがいないようなら仕方ない、先祖の親友がどのような理由で住んでいたかは分からないがここにまだ住んでいる事が分かったなら自分の役目を果たしたと思いここから立ち去ろうとしたが。


 振り返ったらこの家の主人であり先祖の親友の子孫が、帰ってきた家の玄関前で挙動不審の男を後ろから怪訝な表情で不審者を見る目をしているところだった。



 それは、たぶん、奇跡が起きたと思う。下手をすれば警察に通報される場面だった。

 実際に昔ながらの携帯電話で警察署の番号を打ち込んで発信する直前だった、だが発信ボタンに押す直前に遠い昔の先祖の名を聞いた時に止まったのだ。


 そのまま家の中に案内されて牛乳が入ったコップを出してくれた。拳銃を突きつけながらAIに甘い菓子と警察署の番号を主人の命令で通報できる用意を頼んだ状態だったが。

 適当な事を言ってごまかそうかと考えたが

『なお、私は上位方向型AIですので嘘か本当かを見分ける機能が搭載されています。適当な事を言うのはあなたの立場が悪くなるので止めましょう』

と言われた。そこで思い切って本当の事を話した。


 最初は先祖の話をした、先祖の親友の事も。次に壁の事から話した、壁が落ちてきてから先祖の最後まで。その次は自分達の話をした、先祖の最後以来からずっと何代にも渡って壁を削ってきたこと、そして今この時まで話した。


 先祖の親友の子孫はその話を聞いて深く何かを考えていた。時折ペリというAIが真っ白な女性の姿で立体映像で現れてはひそかに自らの主人に耳打ちをする。それを聞いて更に考える先祖の親友の子孫だが、やがて考えがまとまったのか大きく息を吐いて口を開いた。




 その日を境に私達との関係が始まった。

 雇われの兵士が壁の外側を巡回する時間を教えてもらったり、自分達が壁の内側の畑で育てた野菜を売る手伝いをしてくれた。

 ときどき親友が壁の外に住まないかと誘われた事もあったが先祖の土地を捨てる気は無い。

 それからというものの壁の外と中を行ったり来たりして親友関係をなん十年もの間、続けて来た。


 父は私が少年になったからこの話をしたのだと思う。

 その日から父と一緒に台車に畑から採れた野菜や壁の中の勢力争いで生まれた鉄くずを載せて山にあるトンネルから壁を通って壁の外に出た。


 それから私は青年になった。

 私の日常は朝早く畑を耕したり野菜を収穫したり、壁の中の町を探索して使い物になりそうな鉄くずや壊れた機械を持ち帰って妹に修理できるか聞いて台車に載せて、昼頃に父と妹と共にトンネルを通って壁の外の町にいる父の親友のおじさんに会いに行く。

 父の親友のおじさんは機械とかに詳しく機械いじりをする妹とは仲が良い。

 父の親友のおじさんに機械の修理と妹の面倒を任して父と共に市場で野菜を売ったり母に頼まれた物を買ったりして、夕方ごろから再びトンネルを通って壁の中に戻って家に帰るをしている。


 父は年を取っても畑を耕したり、町を探索したり、親友と談笑したり、市場で野菜を売ったり買い物で値切って買ったりとまだまだ元気だった。

 母はいつも私達がトンネルを通ったりする度に心配しているが私達が無事に帰って来ると明るく迎えてくれる。

 妹は無口で人見知りだけど家族みんなが好きなようだ。機械に興味があって父の親友のおじさんに教えてもらってる。

 父の親友のおじさんは私達の事を心配して時々壁の外で暮らさないか、と誘われた事もあったが母と父は生まれ育った土地を離れる気は無く、妹は壁の外の世界に興味があるらしいから大人になったら壁の外で暮らすと思う。

 私はこの地を離れる気は無い。こんなところでも思い出はあるし、それにトンネルの事もあるがやはり妹の帰ってくる場所を守る事もあるからだ。

私は少なくともこの先、壁の内側と外側を往来する人生だと思う。

 だからこのままずっと続いて欲しい、そう思ってた。




あの日までは。


その日は父と一緒に町に行って探索した帰りだった。

 妹は二日前に病気にかかって父の親友のおじさんの家で看病してもらっているから、家にいるのは母だけだった。


玄関の扉を開けた時、母が血溜まりに倒れていた。


私が母に駆け寄ろうとしたが陰に隠れていた男に殴られ、地面に叩きつかれた。


 突然現れた5人の男達は未だに壁の内側で争っている勢力の残党だった。

 二日前に自分達が勢力争いに敗北して逃げて来たところ私達の家を見つけたらしい。最初は家を奪おうと考えたが私と父が鉄くずや壊れた機械を載せた台車を引いて山の中のトンネルに入って行く所を見届けたあと魚や穀物を載せた台車を引いて山の中のトンネルから出て来た。

 この山の向こうは800年も前の地図を書き写しし続けた地図によると山々しかなく、魚が捕れる川や麦が採れる草原も無くただ山々が続いてその先は壁の所までと、頭の中で考えて気づいた。

 気づいてしまった。


 壁の向こうに渡れる穴がある事にそして同時に私達に向けて怒りが湧いたらしく。

 我々は壁の内側で同じ人間が僅かばかりの資源を巡ってお互いに飢えて、襲われ、争い、奪い、殺され、蹂躙され、殺し合っているというのに私達が壁の内側と外側を往来して生きている事が気に食わないらしい。

そこで今日、父と一緒に町に行った所を見計らって家を襲ったが母が抵抗し撃ち殺した。


 私と父はそれを聞いて怒った。目を真っ赤にして、罵倒の数々を怨みを込めて大声で叫んだ。

 今までの人生でもこれ以上にないほど怒った。母を殺した男達に押さえられていなかったら掴み掛って殴って、殴って殴って殴って相手が死ぬほど殴っていたと思う。

 やがて私と父の声がうるさいと思ったのか私と父が黙るまで男達の内の一人が殴った。


 男達は私と父に壁の外まで案内してほしい言った。

 父はお前達を壁の外まで連れ出してどうする気だと言った。

 男達の内の一人が青いカバーが掛けられている台車を引いてきて、青いカバーを取った。

 覆われていたのは黄色がかった白い粘土状の物が台車の中に敷き詰められていた、しかも大量の時計が埋めている。

 男達の内の一人が言うには未だに壁を破壊しようと考えている軍閥が大量に隠して保管していた倉庫から奪った物だ、これはとある爆薬の一種らしい。

 父が「そんなものでは壁は削れない」と言った。

 男達は言った。「人と心は削れる」

 男達は壁の外まで行った後、外の町に大量の爆薬を設置してそれを脅迫の材料に壁の門の開門を要求する。

 もし受け入れなかったら爆破して混乱に紛れて世界中に散らばり、受け入れるまで同じ事を繰り返す、壁の門が開門するまで。


 山の中のトンネル内で父と共に私は大量の爆薬を載せた台車を引いて、その周りを男達が囲んでいる。

 男達は私達が不審な行動をしないか監視しているというよりもこのトンネル内に驚いているようだ。

 トンネル内は少なくとも私達が引く台車が辛うじて通れるくらいの広さで削られていて、壁自体が何かしらの金属のような物でできている。そのためトンネルが完成してから年月が経っていても朽ちる事が無いし崩落したことも無い。

 壁の内側は真っ黒だった、正確には壁の中身が黒なのだ。外観は鉄の色である灰色だが削ってみれば中身は黒一色の金属で薄気味が悪くまるで暗闇みたいだ。

 トンネル内で僅かばかり明かりのライトで照らしてもその光を吸い取るかのように真っ黒で微かに手元が見えるだけで何度も行ったり来たりしているが未だにこの薄気味悪さには慣れない。

 これからする事を考えると怖くなる。

 出口には数十分ぐらいでたどり着くが行く間は永遠に着かないのではと何度も思う。


 何十年もの間、トンネルの存在を隠してくれた偽装用の鉄板を外した。

 外は日が落ちて夜になったがトンネルの中ほど暗くなかった。

 壁から町までの間は平原でそれほど遠くでもない。

 私と父は周りを見渡した。

 私達と初めて壁の外を見て泣くほど感激している男達以外はまだ誰もいない。その事に安堵すべきか焦るべきか。

 トンネルを通る時に男達が異様なほどの暗さに目を奪われている隙に父と小声で決め合ったのだ。

 男達をここで止める事に決めたのだ。


 男達5人は全員、外の世界に感激をしていた。これで復讐を果たせるぞと泣きながら言っていた。


 だからやることに決めた。


 父は懐から小さなナイフを出して泣き終えようとする男の後ろから刺した。

 私も同じく懐からかつてトンネルを削った何かの金属の黒い欠片を取り出して手で涙を拭おうとする男の後頭部に向けて叩きつけた。

 刺された男はうつ伏せになるように倒れて父が倒れた後も何度か刺したあともう一人の男に襲い掛かった。

 私は後頭部を叩きつかれた男が倒れても何度も母の仇を取るかのように、妹と親友のおじさんを守るために、壊れた機械のように何度も叩きつけた。

 だが私達の抵抗はそれまでだった。

 私達の抵抗に気づいた3人は父を射殺し、私を銃床で殴りつけた。


 死を覚悟した。実際に銃口を向けられ、銃口から見える銃弾が今か今かと待ち構えるのが見えた。ここで死ぬのかと思い込んだ時に引き金を引こうとした1人が倒れた、頭に穴を開けて倒れた。

 残った2人は硬直した。


 助かったとは思わない、これから先にどうなるか分からないからだ。

 死ぬ前の父が言っていた。越境者は必ず殺される。

 だが良いのだ。妹や親友のおじさん、そして結果的にこの町や世界の人を救った形になるなら。

 でもせめて、妹にさようならと言えぬだろうか?。なら顔だけでもいい一目でもと、だいぶ高価な我が儘を思いながら父と母を殺した者達から壁を守る者達の向けられた銃口を覗いた。


 あああ、何て事だ。どうしてだ、なんでだ。神よ、時と場合を考えてくれたまえ。


 壁を守る者達は私と2人の男しか見ていない、私は見てしまった。

 妹が柵を乗り越えようとしてこちらに来ようとしている、このままでは妹も殺される。


 いや、救う方法はある。私は壁を守る者達の向けられた銃口を覗いたやはり銃弾が見える。遅く死ぬのと今死ぬのに大差は無い。私は言った、逃げろと大声で言った。


 そして一瞬まぶしい光が灯り、視界が黒く染まった





 銃口を向けられた青年が突然、逃げろと大声で叫んだ。

 銃口を向けた者は躊躇なく、引き金を引いた。青年は先ほどの倒れている男のように後ろに倒れた。


 銃口を向けた者、顔を見れば歳は青年に近く白の帽子から見える黒髪で男は黒い瞳で撃ち抜いた青年を見て首を傾げる。なぜこの青年は突然逃げろと大声で叫んだのかと不思議に思っていた。

 元々は仕事での警備として6人で決められた距離まで壁の周りを歩いていた。

 壁自体が国境並に囲んでいるため交替したり別々で見回っている。


 大抵の仕事は壁に近づく者の排除と見張り時々清掃だけだ。

 近づく者の排除と言っても誘導なり説明したりして迷い込んだ犬や観光者にうるさい取材者などだ、だが時々だが殺害する必要がある排除もある。爆弾を持って壁に向かう自称平和主義者や壁の門から外に出ようと門に近づく中の者とかどこで迷い込んだかはわからない猛獣を排除する事もある。


 だが今回は彼等にとっては珍しい相手だった。

 ここは数十の民間武装警備会社が、早朝、朝、昼、夜、深夜、ごとに分け合って管理しており彼等はそのうちの昼と夜の担当をしている幾つかの民間武装警備会社の一つの部隊だった。


 彼らからすれば担当している地点からあそこのとてつもなく遠い建物まで歩くものだ。途中に8から10ぐらいの同業者の部隊とすれ違いながら歩く、警備よりもある意味では一種のマラソンに近いだろう。

 そんな彼らが6部隊ほどすれ違って警備を済ました時に不審な集団を見かけた。その集団はどう見ても自衛以上の武器を装備をしていた、伝えられた予定も無い、道に迷って出た様子でもない、会社のルールと国連協定に従い、威嚇無しで攻撃を行った。銃口を向けられていた青年とブルーシートを掛けられている不審な台車を確保した。だが青年が現地語で逃げろという単語を突然叫んだため彼らの仲間だと判断し国連協定に従い射殺、一瞬の隙を突いた2人の男は壁に向かってジグザグに動きながら逃走した。


「ヴォーレンさん、その台車には何が積んでありました?」

 青年が後ろに振り返って言った。

 後ろには台車のブルーシートを剥がす2人の男がいた。そのうちの1人が返事をした。

「懐かしい物だ、だいぶ昔によく使われてた爆薬だったよ。それよりその青年はどうした?」

「逃げろと叫んだので撃ちました。てっきりあの男達に強要されてたと思ってましたが違うようでした」

「………そうか。こちらヴォーレン、ランスロットそっちはどうだ?」

 ヴォーレンは首に付けている骨伝導型無線機に手を当てて言った。

『こちらランスロット、今シュトラスキーと一緒に逃げる男1人を駆除してもう一人を追い込んでる。そろそろ壁に着く頃だ、戻ったら紅茶を飲もう。以上』


 青年が落ちている金属の黒い欠片を拾う。撃たれる前の青年が左手に持っていた物だ。

 金属の黒い欠片にまるで暗闇に引き込まれるように黒い瞳で近づけて見る。


「ニホンエルフ、どうしたんだそれ?」

「あの青年が持っていた物ですね。時々壁に付着している金属ですけど、なぜ持ってたのでしょう?」

「知らん。それよりこの台車おかしいぞ。壁を爆破するなら向きが逆だ、この向きだと町の方に向かうぞ」

『こちらランスロット!、ヴォーレン応答しろ!。繰り返す!、ヴォーレン応答しろ!』

 ヴォーレンは首に付けている骨伝導型無線機に手を当てる。


「こちらヴォーレン、どうした?。まさかガスの火を消し忘れたかとか言い出すなよ?、ランスロット」

『くそったれな状況だ、ガスの火の消し忘れよりも寝た相手の旦那に鉢合わせしたぐらいの最悪な状況だ』

「冗談を言うために連絡したなら今日からランスロットからランスロットもどきにコードネームを変更するぞ」

『もう一人の男はシュトラスキーが駆除したが、壁に穴ができている』

「………なんだって?」

『冗談でも比喩でも幻覚でもない!。トンネルだ、昔に砂場で山を積んで横から手で穴を作ったような削られたようなトンネルがある!』


 ヴォーレンは長年の経験で驚くより先にすぐさま本部に連絡した。絶対に生涯一生使わないと思っていた。コード666、せいぜい不幸な数字の並びだろうが本部に連絡すると話が変わる。

 壁の損傷。たったそれだけの意味だ、だが壁自体を警備してるのは民間武装警備会社とこの国の首都のビルでのんびり構えている上位組織の国連の管理組織には十分な衝撃が伝わるだろう。あと数分でここは幾つものの民間武装警備会社と国連の管理組織の部隊が大挙して大統領選挙スピーチ並みの人混みでブラックフライデー並みに殺到してくるだろう。


「バージニア、撃つな」


 連絡を入れた直後にニホンエルフと呼ばれる青年がもう一人の男であるバージニアに静止の命令をした。

 バージニアは遠くに見える少女にアサルトライフルの銃口を向けていて今にも引き金に触れようとしていた。


「だがよう!、だがよう!。あいつ、こっちに向かって歩いてくる!。あれは爆弾だ!、壁の中の人間かも知んねぇぞ!?」

「落ち着け、バージニア。引き金には触れるな」

「あの少女からはまだ距離があるよ、君の金属探知システムで確認してからでも遅くは無い」


 バージニアはひとまずニホンエルフの助言を聞き引き金から指を離したがアサルトライフルの銃口を向けたまま、彼が着けているゴーグルに触れた。彼のゴーグルで見た視界から色が消えて、代わりに内蔵システムが特定の範囲内を中心に特定の金属を分析して白の線と黒の線で輪郭で表現して作り上げた視界に切り替わった。

 少女からは体の白い輪郭線以外の黒い金属線で表現される危険物の反応は出なかった。

 だがバージニアはアサルトライフルの銃口を少女から逸らさなかった。


「確かに爆弾は持っていねぇけどよ、あの少女が壁の人間じゃないという事が保証されないと銃口は下げないからな」

「バージニア!」

「下げた方がいいよ、ペリ教のネックレスをしている。町の人間だ」


 ニホンエルフがアサルトライフルに装着するスコープで少女を覗いていた。

 少女の首には蓮の花の形をしたネックレスを身に着けていた。

 最近、世界で密かに流行っているペリ教の信者達はシンボルマークである蓮の花をシタンという銘木で模ってネックレスにして身に着ける者が多い事からあの少女はその信者だろう。少なくとも壁の内側にはそのような新興宗教は伝わっていないはずだ。


「良かったな、バージニア。ただの民間人なら裁判を受けて懲役なり永久国外追放だ、だがペリ教の信者だったら死刑か私刑か未解決事件の被害者になってたところだな」

「あ、ああ、た…助かった」


 バージニアは銃口を向けてた相手の事を知るとゆっくりと銃口を下げた。噂の範囲だがこの国の中心部にはペリ教が密かに浸透していると聞いていたからだ。


「じゃあ私はあの子を追い返してくるので現場維持をお願いします、ヴォーレンさん」

 そう言ってニホンエルフはこちらに歩いてくる少女に向かった。


 ヴォーレンはバージニアの肩を叩いて、周辺探知しろと命令した。

 ようやく落ち着いたバージニアはゴーグルに触れて周辺探知システムを起動させた。するとバージニアが背負っている角張った大きめのバックパックの口が自動的に開き中から専用AIで動く大きさ5センチメートルの飛行型ドローンが次々と飛び立した。飛び立った飛行型ドローンが搭載された360°カメラで映像を送信。受信された膨大な映像データを元に専用AIが編集とマップの構築をして分析されバージニアのゴーグルに人が黒の輪郭線、動物が緑の輪郭線、地形が白の輪郭線で表示された。


 ヴォーレンとバージニア、ニホンエルフと迷い込んだ少女、シュトラスキーとランスロットもどき、以外に人の存在を探知しなかったと報告した。それを聞いたヴォーレンは安心し一息ついた。


 ニホンエルフが少女を追い返して戻ってきた。

 ヴォーレンはバージニアに監視を続けろと伝えてから、ニホンエルフに向かってこの台車を見るように首の素振りをした。

 ニホンエルフが台車の近くまできたら、ヴォーレンは首に付けている骨伝導型無線機を外し、お前も外せという素振りをした。ニホンエルフが骨伝導型無線機を外したのを確認してから、ヴォーレンは言った。


「少女はなんて言った?」

「どうやら兄が迎えに来たと勘違いをしていましたよ。それとこの黒いのは兄の持ち物だと言ってました」

「…それで?、なんて答えた?」

「君の兄は少し遅れて来ると伝えました。それとこの黒いのは大事な事に使うから借りた、今は返せないけど後でペリ様に頼んでちゃんと洗って返すと伝えておきました」

「……間違いでは無い、この黒いのは国連の管理組織に渡され壁の設計責任者の博士という名の者に必ず渡るだろう。確か、あの人もホームメイドAIペリを持っている噂があるから返してくれるかもしれない、手続きなどで500年は掛かると思うがな。それでニホンエルフ、なにか言いたい事でもあるだろう」

「本当はあの少女も壁の中の人間だと思ってましたよね?、なんで黙ってたのですか」


 ヴォーレンは腰を降ろして地面に座り、ニホンエルフも同じように地面に座った。


「一目で気づいたよ。あの少女は壁の中の人間だ、ここの町の子供は夜にはほとんど壁に近づかない。なぜなら親に引き止められるか、攫われるか、異常なだけだ。近づく子供は僅かだ、既に特定済みで顔を覚えている。だからあんな少女は見た事が無い、気づくなら俺かお前かシュトラスキーとランスロットもどきだけだろう。じゃあなんで駆除しなかったのか不思議に思うだろう?、ニホンエルフ」

「そうですね、なぜなんです?」

「冷凍計画は知っているか?」

「知らないです」

「……冷凍計画というのはな――」


 かつて遥かなる昔のまだ壁を投下する前の時代、とある西大陸の国の軍が優秀な軍人を戦争による喪失ならまだしも平和な時間と共に朽ちていくのは勿体無いと考えてある秘密裏の計画を立ち上げた。

 冷凍計画と呼ばれた計画はその名の通りに平和の時だけ冷凍保存し戦争が起きて先遣隊として作戦ごとに解凍して行う計画である。主に20代から40代の優秀な軍人から志願者のみ冷凍保存処置を行うものだった。


「俺は30代の時にその秘密裏の計画に志願をした。愛国心なり国家特別所属金を受け取る事ができるなり色々とあるが本当の理由を言う気は無い、それから俺はしばらくは500年ぐらい戦い続けた。解凍されて1週間から5年まで戦い作戦を終えてから冷凍されまた解凍されて戦い作戦を終えてからまた冷凍される人生を送っていた。もちろんいろいろな事も起き続けた、冷凍される前に見た親の後ろに隠れていた曽孫が次に解凍される頃には病院のベットに寝伏せているご老人になっていた事もあった。ある時は日本の誰かが作った寿命延長薬を受けた」

「そういや自分のコードネームがニホンエルフなのはその事なんですよね」


 寿命延長薬はある細胞と特殊血清を組み合わせた特別性薬の一種でこれを受けると30から最大50まで若返る事ができる。


「それのおかげでさらに200年戦い続けられたが戦争や世界が変わって冷凍計画は終了になった、だが俺が知っていた家族(・・・・・・・)はもういなくなった。戦いしか知らない俺は国に勧められてここに入った、だが俺はもう少年も少女も殺せない。500年でも200年でもその間に幾度か少年と少女を撃った、仲間や民間人を守るために殺したんだ、何百回も眠る前に後悔した、だが一番なのは血の繋がりしかない家族の赤ん坊を見た時だ。だから俺は殺さない。それと逆に聞くがお前は気づいていたにも関わらず殺さなかった、なぜだ?」


 ヴォーレンはニホンエルフの何を考えているかわからない黒い瞳を見て質問した。

 ニホンエルフは何かの金属の黒い欠片を手で触りながら答えた。


「自分の国は人口より仕事の求人が多いんだけど、何故か採用してくれなくて。田舎で母と一緒に暮しているのは知ってるよね?」

「ああ、試しにお前の履歴書を見たが志望動機が2行しか無かったからそりゃあ採用されないと思う」

「それで母は仕事代わりに、洗濯物を干すのを手伝わせたり山狩りを手伝わせられたり護衛兼荷物持ちとしてとなりの村に一緒に行かされたり狩猟に手伝わせたり危ない何かを作るのを手伝わせられたり、とかなどをさせられてね。ある時に母が友人から貰ったこの会社のパンフレットを持ってきて行って来いと言われたんだよ」

「そういえばよくあの履歴書で採用されたな」

「ああ、この会社は履歴書とか志望動機とかの面接は軽めに見てその後の採用テストの軍事訓練の成績でそこそこできれば取ってるから」

「……ちょっと待て、この会社はそんな形で取っているのか?」

「知らなかったの?」

「俺は軍歴とか愛国心とかを交えて5分と15分に分けた志望動機とか面接の練習を2週間練習して前日には1日をそれに費やしたんだけど」

「無駄な努力だったね」

「………それでそろそろ本題に入ってくれ」

「ああ、なぜ殺さなかったのか?。自分としてはできればもう少し抵抗できる歳になってから殺したいと思ってたんですよ」

「……は?」

「まぁ少年少女が本気で殺しにきたら仕方ないけど、でも味気ないのかあっけないのか物足りないのか、わからないがせめて最低限抵抗できる年齢じゃなければ殺す気が起きないんだ」

「……あ、ああ」

「ちょうどあの青年がギリギリのラインだったからね。決して差別ではないさ例え相手が、女でも病人でも老人でも異常者でも善良な人に悪人でも動物に天使に悪魔に機械人形に怪物でも敵意や善意があろうと親友や家族にあなたでも、躊躇も無く必要と理由があれば殺すだけだよ。ただあのぐらいの歳だと自分から殺す気が起きないんだ」

「………」


 しばらく黙り込みながらもヴォーレンは腰を上げて地面に立ちながら言った。

「なるほどな、まぁお互い。良い人ではないな」


 ニホンエルフも同じように地面に立ちながら言った。

「でもあなたも自分もこの事を上に報告するまでも誰かに言う気も無いでしょう?」


 二人は地面に立って向こうの平原から来る大規模な集団を見下ろしながら会話した。

「ニホンエルフ、この会話は無かった。良いな?」

「了解しました、ヴォーレン隊長」


 二人は外した骨伝導型無線機を首に付けた。ニホンエルフが骨伝導型無線機を付けたのを確認してから、ヴォーレンは言った。

「さぁーて、これから忙しくなるぞ。久し振りの残業だ」

「なーにヴォーレンとランスロットもどきがいれば何とかなりますよ」

「おい待て、その内容だと俺とランスロットもどきだけ残業に聞こえたぞ?」

「あれ、そうじゃないの?」

「そうじゃない」


 二人はこれから慌ただしく忙しくなると思いながら民間武装警備会社と国連の管理組織の部隊を束ねる上官に会いに行き。

 特別臨時強制有給休暇5週間を貰い、呆然として、そして笑い出した。




 少女は兄を迎えるべくまたあの場所に向かった。

 しかしその場所は装甲車と臨時に設置したフェンスとバリケートそれと完全重武装をした兵士に塞がれていた。少女は遠めに見る群衆を掻い潜りながら前に進むが黒い大きな大人に阻まれてこれ以上を進む事ができなかった。


 少女は顔を見上げた。空からゆっくりと目の前にいる、黒い大きな大人でも、それより大きい装甲車でも、さらに臨時に設置されたバリケートよりも、遥かに最も大きい黒い壁の一部分がゆっくりと落ちるのではなくまるで舞い降りるように降りて来た。

 そして遥かに最も大きい黒い壁の一部分はやがて少女が向かうはずだった場所に降り立った。

 

 その日は少女にとって忘れられない日だった。



 その後、少女はどうなったか?。

 少女はその後、外に触れてそれは幾度も分かれ道が多い道を歩いただろう。

 

 ある少女はその後、小さな機械修理工になり町の顔になるかも知れない。

 ある少女はその後、世界大企業の若手大社長CEOとして社会を見守るかもしれない。


 ある少女はその後、民間武装警備会社に入って万能機械化工兵として兄を殺した男にとんでもない事を言うかもしれない。

 ある少女はその後、国連の管理組織の部隊の上位特殊大隊の隊長になって上官として兄を殺した男にとんでもない事を言うかもしれない。


 ある少女はその後、親友のおじさんの仕事の助手になり、やがて博士の仕事を継ぎ、国連の管理組織の壁の設計責任者の後を継ぐかも知れない。

 ある少女はその後、解放組織に加入して壁を崩落させ社会を混乱させるかもしれない。


 ある少女はその後、闇社会一の愛を訪う女性になるかもしれない。

 ある少女はその後、何の事なく自殺しようとして何度も失敗をして世界一幸運な女性と言われるかもしれない。

 ある少女はその後、天才宇宙飛行士として地球を見下ろすかもしれない。

 ある少女はその後、世界一の万能医として国に在住して歯の治療をしに来た兄を殺した男にとんでもない事を言うかもしれない。


 ある少女はその後、よく別世界の神と言われる悪魔みたいな神の部下になるかも知れない。

 ある少女はその後、何とも無かったように普通に暮らすかもしれない。



 未来はわからない、明るいのか暗いのかは、まだわからない。

 だが可能性があるのはたしかだ。

 少なくとも時間は流れるのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ