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Breakthru

4月18日土曜日。

新入生歓迎大会二日目。

今日も朝からロート先輩とシーニィ先輩、ミドリコ先輩の姿はなく、部屋にはわたし一人だった。

今朝も先輩方からのお誘いはあったけど、わたしは丁重にお断りした。

でも、わたしの胸の中には雑多な思いが渦巻いている。

先輩方と一緒に行きたいという気持ちはあった。

だけど、装騎に全く興味のないわたしが、あんなに装騎が大好きな先輩方と一緒にいてもいいのだろうか。

そして、昨日一度断ってしまった手前、今日になって「一緒に行きます」なんて言いにくい。

そういう葛藤がわたしの中を渦巻き、ベッドの上で悶々としていた。

「どうしよう――――」

わたしは何気なく、自分の鞄から一組のカードセットを取り出す。

中学三年生のころ何気なく買ったタロットカードだった。

わたしはタロットカードをシャッフルし、適当にカードを一枚引いてみる。

「ハングドマンの逆位置――――」

その意味は徒労、痩せ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に負ける――――これはどんな意味を示しているんだろうか。

「わたしは――――」

わたしは、ベッドから飛び起きると寮室を飛び出した。

観戦場所は確か、機甲科のグラウンド。

わたしは機関車に飛び乗り、機甲科校舎へと向かった。

時刻は16時ごろ。

今、試合はどのくらい進んでいるんだろう。

そんなことを考えているわたしの胸は、何故だろう早鐘を打っていた。

それから暫くして、辿り着いた機甲科校舎。

わたしはグラウンドへと一目散に駆け出した。

グラウンドにはものすごい人だかりと、二つの巨大なモニターの姿。

そのモニターには、試合の様子が映し出されていた。

二つのモニターにはそれぞれ違う試合の様子が映し出されているようだった。

そんな二つの試合のうち、わたしの目を引いたのはBブロックの準決勝の試合。

「新入生歓迎大会Bブロック準決勝――チーム・ミステリオーソ対チーム・ブローウィング……」

相対する二騎の機甲装騎。

片や細身でシンプルな灰色の機甲装騎。

その右手にはナイフ、左手にはサブマシンガン、そして背中に二個のシールド付きのライフルを背負っている。

「あれは――確か装騎アイロニィ」

先輩方が昨日見ていたテレビ番組をふと思い出す。

機甲装騎に関するニュースを報じるデイリィ装騎という番組だ。

わたしはちゃんと見たことは無いんだけど、先輩方は毎日のように見ている。

昨日はその番組でこのステラソフィア女学園で行われている新入生歓迎大会の特集をしていたのを、たまたま見たのだ。

この新入生歓迎大会は、四人一組のチームで戦闘を行い、敵全騎を戦闘不能にした方が勝利という方式をとっている。

そんな中、それは昨日の機甲科一年ヒラサカ・イザナさんが乗る装騎アイロニィはたった一騎で敵の四騎を全滅させ、今大会優勝候補と言われている、とか。

「そして――――あ、あの装騎」

片やどこか見覚えのある機甲装騎――デザートイエローで膝関節が逆に曲がっているのが特徴的なその装騎。

「シーニィ先輩と機甲科に行った時に見た装騎だ――――」

機甲科一年サエズリ・スズメさんが乗る装騎スパロー。

その両手に持つ武器はナイフのみ――――。

「あれだけの装備で――戦えるのかな……」

わたしがポツリと呟いた瞬間――スパローとアイロニィのナイフがぶつかり合った。

火花を散らし、激しくぶつかり合う二騎が手にしたナイフ。

瞬間、装騎スパローの体が一瞬、蒼白い輝きを放つと、体中のパーツが展開し、刃を纏った。

両腕、両脚、背部パーツに頭部と装騎スパローのあらゆるところから現れる隠しブレード。

「キタァァァアアア、装騎スパローのブレードエッジだ!」

実況と思しき女性が声を上げる。

ブレードエッジを展開した装騎スパローは、その爪先から伸びた刃で装騎アイロニィを蹴り上げようとする。

しかし、装騎アイロニィは難なくそれを回避。

そのまま、左手に持ったサブマシンガンを撃ち放った。

そんな銃撃の中、装騎スパローは装騎アイロニィに向かって飛び跳ね、その背後に背中合わせに着地した後、装騎アイロニィを切り裂こうとするものの、それを読んでいた装騎アイロニィが逆にナイフで迎撃。

しかし、装騎アイロニィの一撃も、装騎スパローの肘から伸びるブレードエッジで防がれた。

ナイフを防いだ一瞬の隙で、装騎スパローは逆に折れたその足で膝蹴りをするが、それを装騎アイロニィは紙一重で回避した。

「す、すごい――――」

流れるように繰り広げられる二騎の格闘戦。

わたしはその凄まじさに目を奪われる。

それからも激しい戦いは続いた。

装騎スパローの両腕が輝くと、エネルギーが迸り装騎アイロニィが手にしたサブマシンガンを破壊する。

装騎アイロニィは背部にストックしていたシールド付ライフルを手にすると、スモークボムをスパローへと蹴り付け、立ち上がった黒煙の中にライフルを叩き込んだ。

その黒煙を突っ切って出てきた装騎スパローと迎え撃つ装騎アイロニィのナイフが交差する。

瞬間――装騎アイロニィが身を捻り、軽やかに装騎スパローの脇を抜けていった。

その風が通り去った後――一瞬遅れて装騎スパローの左腕が切り落とされていた。

「強い――――」

装騎のことも、装騎バトルのことも詳しくないわたしでも、この戦いのすごさはよくわかった。

一進一退、紙一重の戦い。

不意に、装騎アイロニィの体中から蒼白い輝きが漏れ出す。

蒼い輝きに包まれて、雰囲気の変わる装騎アイロニィ。

装騎アイロニィはそれから、装騎スパローを圧倒した。

今までも十分にすごい動きをしていた装騎アイロニィ。

しかし、蒼白い輝きを身にまとってからはレベルが違っていた。

目にもとまらぬ速さで動き、装騎スパローを翻弄。

激しい一撃を与え続ける。

しかし、一方で装騎スパローもあれだけの猛攻を受けながらも何とか耐えきっていた。

ボロボロになりながらも、装騎アイロニィを相手に勝機を探しているように。

アイロニィの蹴りを受け、地面に倒れ伏せた装騎スパロー。

そこに、装騎アイロニィのナイフが閃いた。

「ああっ――――!!」

思わずわたしの口から漏れるそんな言葉。

しかし――――装騎スパローはその一撃も何とか防ぎ切った――そして――――装騎スパローの体からも蒼白い輝きが放たれる。

「まただ――――この光――――何だろう」

よく分からなかったけど、でもあの二人が本気で――いやそれ以上で戦っているというのはなんとなく感じられた。

装騎スパローが右腕を大きく振り上げる。

そこから、巨大な光の剣とも言える莫大なエネルギーが放出された。

その光の大剣は、空を引き裂き、大地を抉るかのように、盛大に、豪快に、振り下ろされた。

装騎スパローが放った一撃で、左足にダメージを負った装騎アイロニィ。

だが、左足が破壊されても、体全体を使い装騎スパローと戦おうとする。

装騎アイロニィも、装騎スパローもボロボロになりながらも勝利のために戦う。

最後――――装騎スパローのエネルギーソードが装騎アイロニィの左胸を――装騎アイロニィのナイフが装騎スパローの左肩を抉り取り――――――

「別の装騎が――――!!」

そこに飛び出してきたくすんだ黄土色をした騎士というよりは武士のような装騎ニューウェイが装騎スパローのエネルギーソードを引き受け、撃破された。

そのまま、装騎アイロニィのナイフが装騎スパローを一閃。

装騎スパローは機能を停止した。

しかし、程なくして装騎アイロニィも限界が来たのだろう――機能を停止させ、結果、他のメンバーが生き残っていたチーム・ブローウィングの勝利となった。

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