ステラソフィア学園都市
「アマレロちゃんヒマそうだね」
「あ、シーニィ先輩」
入学式から数日後、寮室のリビングでぼーっとテレビを見るわたしにナストーイチヴイ・シーニィ先輩が声をかけてきた。
「進学科は軽くオリエンテーションが入るだけで授業開始日までヒマですからねぇ。今年の開始日っていつです?」
「えっと、23日、ですね」
「ふむ――――どうせヒマなら、私と一緒にステラソフィアを見て回りませんか?」
「えっ、でも部活とかは――――?」
「大丈夫ですよ。どうせ今日もお菓子を食べながらダベってるだけでしょうし……」
わたしの言葉に、シーニィ先輩は「はぁ」とため息を吐きながら頭を抑える。
「それなら――――お願いします、先輩」
「はい、それじゃあ行きましょうかアマレロちゃん」
それからわたしは、シーニィ先輩にステラソフィアを案内してもらった。
ひとまず、機関車でステラソフィア学園都市の中央街まで行き、そのあたりを軽く案内してもらった後、各学科の校舎を見て回る。
「ここが高等部機甲科の校舎です」
「ここが機甲科――――」
何処か屋敷やお城のようにも見える、荘厳な校舎の姿に圧倒される。
機甲科はこのステラソフィア女学園の中核となる学科であり、その他の校舎はこの高等部機甲科に付随する形で作られたと言う。
結果、巨大な学園都市となったんだけど、その始まりがこの一つの校舎から、らしい。
「なんか騒がしいですね」
授業開始日はまだまだ先のはずだけど、その校舎は人で賑わっており、加えてズシンズシンと機甲装騎の歩行音のようなものがあっちこっちから聞こえてくる。
「今週の金曜日に、この機甲科で新入生歓迎大会がありますからね。その準備や特訓をしているんです」
「新入生、歓迎大会?」
「そうです。このステラソフィア女学園では、入学式から1週間後にこの機甲科主催で新入生歓迎大会と言うイベントがあるんです」
それはこの高等部機甲科に所属する生徒たちがトーナメント形式でのチーム戦演習を行うというイベントで、入学式の一週間後の金・土・日の三日間をかけて行われるらしい。
そんな話を聞いているとき、不意に装騎の機動音が一気に近づいて来る。
ドシンドシンドシン――――グワン!!
一気に近づいて来た一騎の装騎が私達の上を跳び越えていったのだ。
「ひゃあっ! な、何ですか!?」
「うぉっと、危ないですね」
それは黒く細身の装騎で、カラーリングの変更や細かい所のパーツの変更はされているものの、PS-Hヘルメシエルと言う装騎だと知ったのは後のこと。
「ひゃっほぉぉおお! さぁ、ガンガン着いて来るんですよスズメ後輩!」
「ちょっと、マッハ先輩! 人居ますし危ないですってぇぇえええ!!! すみませんぁ!!!」
その後を追いかけてくるデザートイエローの装騎。
そのデザートイエローの装騎を見ながらシーニィ先輩が呟いた。
「あの装騎――新型ですかね」
「そうなんですか?」
「ええ、見てくださいあの膝関節」
そう言われて見てみると、その装騎は普通の人間とは逆の方向に膝関節が曲がっていた。
「あんな関節の装騎――今まで居ませんでしたからね。ちょっと新歓が楽しみですよ」
「そうなんですか……」
興味深そうに去りゆく逆間接装騎を見るシーニィ先輩をよそに、正直機甲装騎に大して興味もないわたしは相打ちをうつだけ。
その装騎がPS-R-Hハラリエルというものらしいと言う事も後で知ったことでした。
それからもステラソフィア学園都市の要所要所を案内してもらいました。