アニールとの装騎バトル
「わ、わたしがアニールさんに一撃でも当てれば第七装騎部に入ってくれるんですか!?」
「ええ。もちろん、私は当たるつもりはないけどね」
バトルが始まるその直前、アニールさんの申し出にわたしは思わず叫び声を上げる。
ただ一撃――それだけ与えられればアニールさんが装騎部に入ってくれるという申し出。
一撃さえ入れれば――と言えば楽に聞こえるけど、アニールさんに一撃も当てられないという自信があるとしたら……初心者のわたしでなんとかできるものなのだろうか。
そんな思いを抱きながらも、グラウンドで2騎の機甲装騎が対峙した。
片方はわたしの装騎04。
もう片方はアニールさんが乗るラファエル型装騎。
「なんでしょう、あの武器……棒?」
アニールさんのラファエル型は、その手に握った装騎ほどの丈がある棒状の武器を振り回し、軽くウォーミングアップをしている。
後で知ったことだけど、魔電霊子を使ってフラッグを展開できる武器で霊子杖・南斗星君と言う名らしい。
「それじゃ、バトルをしましょうか」
「は、はい! よろしくお願いします!」
斯くして、わたしとアニールさんの装騎バトルは幕を上げた。
わたしは装騎04を一気に駆けさせ、アニールさんのラファエル型へと接近する。
その手に持った超振動ハンティングナイフを見てアニールさんが言った。
「アマレロの武器はこれだけ?」
「はい、超振動ハンティングナイフ――――これで行きます!」
「本当、面白い子」
わたしの装騎04――そのハンティングナイフの閃きをアニールさんのラファエル型は軽く回避する。
「思い切った一撃ね」
アニールさんは霊子杖・南斗星君を構えると、一気に振り払った。
「うわっ」
わたしは咄嗟に回避をする。
鋭い一撃――だけど、どこか軽やかな動きからは本気ではないということが分かった。
その間にも、アニールさんは霊子杖・南斗星君をクルクルと華麗に回す。
すると、霊子杖・南斗星君からアズルの仄かな光が漏れ出し、その先端部からフラッグが伸びた。
「旗!」
はためくアズルフラッグが軌跡を描きながら、再びわたしの装騎04に襲い来る。
「切り替えが早い……」
「よく追いついたわね」
「狙うのは、そこ!」
アニールさんが霊子杖・南斗星君を振り切ったその瞬間を狙い、わたしはハンティングナイフを構えた。
そして一閃。
「それに――どんどん成長している」
「きゃっ、やっぱり、そう簡単には……」
突如わたしの体を襲った衝撃と共に、振り払おうとしたハンティングナイフがアニールさんに蹴り飛ばされ、宙を舞った。
さらに、左腕に霊子杖・南斗星君の一撃が叩き込まれる。
「くぅ……ぁっ」
衝撃に頭がクラクラする。
鼓動が高鳴る。
アニールさんの圧倒的な強さをヒシヒシと感じる。
怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い――でも、
「愉しいっ」
拳を固く握りしめ、その拳をアニールさんへと思いっきり振りかぶる。
「ぐっ――――」
だがそれよりも先に強烈な一撃が、わたしの胸を抉った――気がした。
その一撃で、わたしの装騎04の機能が停止する。
「結局、一撃も与えられませんでした……」
わたしは装騎から降りて、タオルで汗を拭く。
頭の中でさっきの戦いが仕切りなしに思い浮かぶ、
仕方ないとも思いながらも、やっぱり悔しい。
だけど何故か、奇妙な胸の高揚感と充実感が残っていた。
「アマレロは真っ直ぐな戦い方をするのね」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
「まぁでも、約束は約束。当てられなかったから装騎部に入ることはできないわ」
「はい」
「だけど――」
「……なん、ですか?」
「貴女が強くなるのに、協力はしたいと思うわ」
「え? それは、つまり……」
「私の特訓はハードよ。やってみる?」
そう言いながら差し出されたアニールさんの手を、わたしは握り返した。