鋭い眼差し
「結局、新入部員はポップだけかぁ……」
「ですねぇ」
クラブ勧誘会も終わったけど、一向に新入部員が来ない様子の第七装騎部。
そんな状態にモナカ先輩とモッチー先輩はため息を吐く。
「ポップも友だちとか誘ってくれよぉー」
すがるようにそう言うモナカ先輩……だけど、わたしには一つ問題があった。
「あの……その、わたし、友だちってそんな居なくて…………」
「そうかぁ……」
モナカ先輩はがっくりと肩を落とす。
だけど、すぐにガッと顔を上げると、モナカ先輩はわたしに第七装騎部の勧誘チラシを手渡した。
「あの、これは……」
「クラスメイトにこのビラ渡してさ、キッカケ作りしようぜ!」
「キッカケ作りって……」
「ポップに友だちができて、運が良ければ新入部員も狙える! 一石二鳥の作戦。さすがアタシ!」
「は、はぁ……」
勝手に盛り上がるモナカ先輩に、わたしは苦笑する。
「でも、中々良い手かもしれませんよ」
ふとモッチー先輩までそんなことを言いだした。
「難しいことかもしれませんが、ここは一つ一歩踏み出してみてはどうですか?」
「一歩……」
わたしはモナカ先輩から勧誘チラシを受け取る。
わたしは、一歩踏み出すことを決意する。
「が、がんばってみます!」
翌日、わたしは――――手にした勧誘チラシを渡せずにいた。
「気合いを入れてみたのは良いけど……」
ハァとため息をつく。
次の授業は体育――クラスメイトはみんなグラウンドに出ていて教室には誰もいない。
わたしも体育着に着替えると、グラウンドへと出る。
しばらくすると、授業が始まった。
「今日の体育は……バドミントンのダブルスかぁ」
体育の授業は7組と8組の合同授業だ。
次々とダブルスを組んでいくクラスメイトの中、わたしは一人で立ち尽くす。
そんな中、わたしはふと一人の女子生徒の姿が目に映った。
青みがかった黒髪を揺らす、鋭い眼差しのクールな雰囲気の女子生徒。
澄ました表情で立つ彼女にはパートナーは居ないよう。
「……よし」
わたしは思い切ってその女子生徒へと近づいた。
「あ、あのっ」
「……何?」
「い、一緒に――ダブルスを組んでくれませんか!?」
彼女の瞳がわたしを見つめる。
綺麗な子だ――わたしはそう思った。
「良いわよ。どうせ誰かと一緒に組まないといけなんだしね」
その女子生徒はそう頷く。
「わたしはアマレロ。カシーネ・アマレロです!」
「フォルメントール・アニール」
「アニールさんは8組、ですか?」
「ええ」
「やっぱり。よろしくお願いします、アニールさん」
「ふん」
ダブルスを組んでくれたのは良いけれど、どこかつっけんどんなアニールさん。
バドミントンの試合をする中、なんだか異様にアニールさんからの視線を感じる……気がする。
試合をこなし、体育の授業が終わりを告げる。
そして気づけば放課後。
寮へと帰ろうとするわたしの目に、同じく寮へと向かっているアニールさんの姿が見えた。
「すぅ……はぁ」
わたしは深呼吸をすると、アニールさんの元へと駆けよる。
「アニールさん!」
「アマレロ、だっけ?」
「はい! 今から帰るんですか?」
わたしの言葉にアニールは頷いた。
「あ、あの……」
「何?」
「アニールさんは、その……」
「恋人なら居ないけど」
「!?」
突然の返しにわたしの頭が一瞬真っ白になる。
それと同時に、どこかわたしの体から力が抜けた。
少し怖い雰囲気があるアニールさんだけど、こういう冗談もいう人なんだと安心した。
「いえ、そうじゃなくて……アニールさんはクラブとか入ってるんですか?」
「ああ、クラブね。入って無いわ」
「あの、だったら……装騎部とか、興味ありませんか?」
思い切って絞り出した声。
わたしの言葉にアニールさんは……
「悪いけど、バトルはやめたの」
そう言った。
「やめ……? 昔やってたんですか?」
「ええ。中学卒業するまでわね」
と、言うことは高校生になって――このステラソフィア女学園に来てからやめたということになる。
アニールさんが8組にいることを考えれば、この女学園に来る前からバトルをやめることを考えていたのかもしれない。
「どうして、ですか……?」
「中学の時、私はある相手とバトルをしたのよ。強かった。本当に、今まで戦ったどのバトルよりも熱くて、楽しくて、最高だったわ」
「それなのに、やめちゃったんですか?」
「だからやめたのよ。もうあれ以上のバトルには巡り合えない。そう知ったわ。これ以上、バトルをしている意味はない――だから、やめたの」
「最高のバトル、ですか……わたしもそういうバトルができるようになるのかな」
「アマレロはどうして装騎バトルを?」
「わたしは、今まで装騎バトルなんてしたことなくて――でも、新入生歓迎大会でスズメさんとイザナさんのバトルを見て、すっごく、熱くなって」
「ふぅん。ヒラサカ・イザナね」
「はい! スズメさんもカッコよくて、ああいう騎使になりたいんです!」
どこかまじまじと、不思議なものを見るような視線を送ってくるアニールさんに、なんだか照れが出てくる。
わ、わたしなんか変なこと言ったのかな?
「アマレロは初心者なのね」
「はい、まだ初めて1か月くらいで……」
「…………面白いわね」
「え?」
首を傾げるわたしに、アニールさんは言った。
「アマレロ。私と装騎バトルをしましょう」




