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教えてください、コーチ!

「今日は装騎バトル初心者のポップのために、特別コーチを呼んだぜ!」

はじめてのバトル――その翌日。

戦いの興奮がまだ冷めないその日、モナカ先輩が言った。

「特別コーチ、ですか?」

「ああ、それじゃあお願いするぜ!」

モナカ先輩に呼ばれて、1人の女子生徒が私達の部室へと入ってくる。

ショートヘアが特徴的な、どこか男らしいその人は――どこかで――そうだ、新入生歓迎大会に出ていた人だ。

「アタシは機甲科4年チーム・ブローウィング所属のワシミヤ・ツバサだ。よろしくな!」

「ブローウィングですか!?」

「ツバサとは昔からの馴染みでさ。俺が装騎を始めたのもツバサがキッカケなんだぜ」

「そうだったんですか……」

そうだ、思い出した。

サエズリ・スズメさんと同じチームに所属する4年生。

まさか、そんな人がコーチとして来るなんて。

「キミが新入部員のポップちゃんか」

「は、はい……!」

「今日一日、よろしく頼むよ」

「はいっ」

そして私の特訓が始まった。


「ポップちゃんはまだ装騎バトルを始めたばっかりなんだよね?」

「そうですね……なので何をどうすればいいのかもサッパリで」

「ならまずは、自分のバトルスタイルを定めるところから行くか」

「バトルスタイル、ですか……?」

首を傾げる私に、ワシミヤ先輩は言う。

「うん。どんな風に戦いたいか、どんな風に決めたいか、そう言う指針があれば、そのためにどう動けばいいのか分かりやすくなるからね」

「どんな風に戦いたいか……」

私の頭に浮かんだのは、新歓でのスズメさんの戦いの数々。

でも、あんな風になんて――――

「ポップちゃんはどうして装騎バトルをしようと思ったんだ?」

「それは……私、その、サエズリ・スズメさんとヒラサカ・イザナさんの装騎バトルを見て……スズメさんみたいに、真っ直ぐ、真っ直ぐ突き進めるようになりたくて」

「スズメちゃんに憧れてはじめたのか!」

私の言葉に、ワシミヤ先輩は驚いたような声を上げる。

だけど、納得するようにうんうんと頷きながら言った。

「それなら、スズメちゃんの戦い方をちょっと真似してみるか」

「ス、スズメさんの戦い方をですか!?」

「ああ、そこから自分にできること、できないことを見極めていこうか」

「でも人の真似をするって……それで自分らしく戦える、んですか?」

「誰だって最初は何かの真似をするものさ。そこから自分らしい道が見えてくるものなんだよ」


「グラウンドの借用許可取ったぜ!」

「お、あんがとロート! それじゃあポップちゃん、グラウンドで実際に戦ってみようか」

「は……はいっ!」

と、いうことで私とワシミヤ先輩はグラウンドへと出た。

そこに用意されていたのは、昨日のバトルでも使った機甲装騎04。

そして、もう1騎――深い青色で、空でも飛べそうな機翼が特徴的なジェレミエルと呼ばれるタイプの機甲装騎。

「これがアタシの愛騎、スーパーセルだ」

新歓でも見た機甲装騎――スーパーセル!

まさか、実物を間近で見れるなんて。

私は装騎04に、ワシミヤ先輩は装騎スーパーセルに乗り込む。

今回は、スズメさんの戦闘スタイルを意識してみるということから使う武装はナイフのみ。

だけど、スズメさんが持っているのと同じタイプのウェーブナイフは無いらしく、代わりに昨日の戦いでも予備として持っていたウェーブハンティングナイフを使うことになった。

『そのハンティングナイフはナックルガードが付いてるから、スズメちゃんとはまた違った使い方が必要になるだろうけど……まっ、今は気にしないで使いたいように使ってみよう』

「はいっ」

斯くして、私とワシミヤ先輩の戦いが始まる。

『さぁ、ポップちゃん。イメージして』

「イメージ、ですか……」

『ああ、スズメちゃんの動きを、自分がしたい動きを、自分が自由に戦う姿を……!』

「自由に――――戦う」

私は想像する。

スズメさんみたいに――自由に、華麗に戦う自分を。

「行きます!」

私はハンティングナイフを構えると、足を思いっきり踏み出す。

私の動きに応えるように装騎04は一気に駆け出した。

『さぁ来い、ポップちゃん!』

ワシミヤ先輩の装騎スーパーセルは連なった鎖のような刃が刀身を取り巻く剣――チェーンブレードを構えるとそう言った。

ハンティングナイフを振り回す私の攻撃を軽くいなす装騎スーパーセル。

『お、意外といい感じじゃないか』

私のハンティングナイフと、ワシミヤ先輩のチェーンブレードがぶつかり、火花が舞い散る。

「そう、ですかね」

『ああ! 良い動きだ! それに――』

「っ!!」

突然、ワシミヤ先輩がチェーンブレードを突き出してきた。

私はその一撃を咄嗟に避ける。

あ、危なかった……。

『勘も良い』

「た、たまたまですよ!」

そろそろ疲れが溜まってきて、汗が額をなぞった頃、

ビービービー!!

突然、私の機甲装騎が警告音を響かせる。

「な、何ですか!?」

『うおっ、何だ!?』

驚く私と同時に、通信からワシミヤ先輩の声が響いてきた。

気づけば、レーダーに謎の機甲装騎の反応。

私とワシミヤ先輩は同時にその装騎へと目を向ける。

そこには美しい刃の刀――オリエンタルブレードを手にした白いミカエル型装騎が立っていた。

謎の装騎ミカエルは、オリエンタルブレードを構えると――――一瞬で私の元へと近づいてきた!

「きゃっ!?」

『ポップちゃん!!』

そして閃くオリエンタルブレードの一撃。

私は――――その一撃を――

「――!!」

よ、避けられた!!

『やっぱり、反応が良いなこの子は』

突如聞こえてきた声は、私の知らない声。

『だろ? でもまさかソレイユの一撃を避けるなんてね』

ツバサ先輩の言葉から、私は知った。

そうだ、あの白いミカエル型はチーム・バーチャルスターの装騎セイクリッド……つまり、この人は。

「バーチャルスターのディアマン・ソレイユ先輩!?」

『よっ、よろしく頼むぜポップちゃん!』


一先ずバトルは中断。

装騎から降りた私達は、ディアマン先輩と対面する。

「遅れるとは聞いてたけど、まさかバトルに乱入してくるなんて聞いてないよ」

「どうせなら、とっておきのサプライズと行きたくてな!」

2人の話を聞いているとワシミヤ先輩はディアマン先輩が遅れてくることは知っていたけど、乱入してくるとは思っていなかったみたいだ。

「確かに驚いたけど……アタシ以上にポップちゃんが驚いたと思うよ」

「そうだな。ゴメンゴメン、なんかポップちゃんの動きを見てるとちょっかい出したくなっちまって」

そう笑うディアマン先輩の様子を見ていると、なんだか憎めない。

それはワシミヤ先輩も同じのようで、ハァとため息を吐きながらも笑っていた。

「ポップは昨日が初バトルだっけか?」

ふと、ディアマン先輩が私にそう尋ねた。

「は、はい!」

「どうだった?」

私は静かに昨日のことを思いだす。

あの戦いの高揚感――――ブーシュ先輩のお陰とはいえ、勝負に勝てた喜び。

「すごく――――熱かったです!」

「熱かった、ね。最高のバトルだったんだろうな!」

「最高、かどうかは分からないですけど……。でも、体が熱くて、手が震えて、すごく、気持ちよかったです。装騎バトルって、こんなに楽しいものなんだって!」

「ポップ、その気持ちを忘れるんじゃないぜ」

ディアマン先輩の言葉にワシミヤ先輩も頷きながら言った。

「そうだね。その気持ちがあれば、どこまでだって行けるよ」

「ディアマン先輩やワシミヤ先輩もそうなんですか?」

私の言葉に二人は頷く。

「当たりめーだろ! それに、絶対に負けたくないライバルだっているしな」

「そうそう。今度こそ1対1で倒してやるからねソレイユ」

「チーム戦だと負けちゃったが、1対1だと勝たせねーぜツバサ!」

そんな先輩方のやり取りを見ていて、私は羨ましくなってくる。

ライバル――ライバルか……

「私にも、そんな人ができるんでしょうか」

「ポップちゃんはスズメちゃんを倒すんだろ?」

私の呟きに、ワシミヤ先輩が冗談交じりでそう言った。

「へぇ、スズメちゃんを倒すのか! そりゃ楽しみだぜ!」

「ええ!? いやいやいや、無理です! 無理ですって!!」

「確かに今は無理かもしれないけど――これからが楽しみだね」

ワシミヤ先輩の言葉は、どこかで聞いたような響きだ。

これから、これからか――――私はこれから、どんな風に変わっていけるのだろうか。

「良いのか? ポップがお前んとこのエースを倒しちゃっても」

「それはそれでいいんじゃないかな。スズメちゃんのことだから、強くなってまたリベンジすると思うよ」

「違いねえな……あー、オレもサリナと特訓しようかなぁ」

一通り雑談を済ませた後、立ち上がったワシミヤ先輩が言った。

「さてと、それじゃあポップちゃん。特訓の続きと行くか!」

「あ、はい!」

「ポップは反応は良いけど、ちょっと体力が無いのが気になるな」

「じゃあ、基礎トレから行くか!」

「え――ええ!?」

どうやら装騎バトルは、私が思っていた以上にハードなものになりそうだ。


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