名門ステラソフィア女学園
「ここが――――ステラソフィア女学園……」
小刻みなリズムを繰り返しながら、わたしを乗せた機関車はステラソフィア学園都市へと到着した。
そして、そのまま向かう先はわたしの通う事になる高等部進学科の入学式が行われるステラソフィア進学科校舎。
胸の中を打つのは、沢山の期待と、沢山の不安。
わたし、カシーネ・アマレロは国内でも随一の有名校ステラソフィア女学園へと入学するのだ。
ガタンゴトン――――ガタンゴトン――――――繰り返すその響きが、わたしの心を掻きたてる。
「この機関車は高等部行き――――ってことは、一緒に乗ってる人達は同級生、なのかな……」
勿論、この機関車の中。
わたし以外にも沢山のステラソフィア生が乗っている。
その多くから、その表情に緊張や不安が入り混じっているのが伺えた。
わたしと同じ新入生なんだろう。
「でも、制服が違うから同じ学科じゃあないんだ……」
そう、このステラソフィアでは学科ごとに異なる制服の着用が義務付けられているみたいだった。
わたしがパンフレットで確認した所、このステラソフィアには機甲科、技術科、士官科、教職科、進学科の5つの学科が存在し、それぞれがそれぞれ異なる制服を着けている、
わたしが通う事になる進学科は、薄いピンクのシャツに小豆色のブレザー。そして、朱色のスカートだ。
それ以外にも、小豆色の軍の儀礼服を思わせるような服装をしているのが士官科、桃色のジャージを着ているのが技術科、スーツのような制服なのは教職科だろうか?
「技術科前ー、技術科前ー」
ステラソフィア高等部技術科の校舎前に着き、ジャージを着こんだ女子生徒たちがぞろぞろと降りていく。
わたしの記憶通り、彼女たちは技術科の生徒だったようだ。
「はぁはぁ……うぅ、道を間違えてしまいました…………」
そんな事を小声で呟きながら、技術科前で機関車に乗り込んで来たふんわりとしたミルキーブロンドの女子生徒。
その服装は、丈の短い軍服のような上着に、わたしたちと同じような朱色のスカート。
本来、あの丈であれば露出しそうなへそまわりには黒いタイツのようなものが体のラインをなぞっており、それは太腿まで覆っているのが見える。
「あの子は機甲科、か」
機甲科の制服は、上着とスカートの下から全身タイツみたいなスーツを着ると言う話を聞いた事がある。
なんでも、制服のままで機甲装騎に乗れるようにという配慮だそうだ。
まぁ、詳しいことは分からないけど。
「進学科前ー、進学科前ー」
「あ、着いた……」
わたしは鞄を手にしてゆっくりと立ちあがる。
そして、機関車から降りようとした時、一人の女子生徒がわたしの前を通って行った。
ふんわりと香る、ベリー系の香りに、ふわりとたなびく少し青みがかった黒髪。
「同じ進学科の人だ――――」
進学科前で降りているから当たり前かもしれないが、その女子生徒が身に纏っていたのはわたしと同じ進学科の制服だった。
一瞬、彼女と目があった――――ような気がした。
「……綺麗な人だな」
思わずそんなことを呟いた後、ハッと我にかえる。
わたしは何バカなことを考えているのだろう。
でも――――
「でも、ああいう人とお友達になれる――――かもしれないんだよね……」
今日が始まりの日。
わたしの、このステラソフィアで過ごす四年間の高校生活の始まりなのだ。
高まる鼓動は期待か、不安か――――わたしは、聳え立つ豪奢な校舎へと足を踏み入れた。