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結論から言う。

勇者はまた死んだ。

死因:転落死。



今日、朝起きていつも通りに昼まで過ごし、

広間で一昨日とほとんど同じように勇者達と対峙し、

外へ逃げ、底なし沼の方角を避け、勇者から逃げ切った。


逃げ切ったのを確認した後、勇者を逆に発見、追跡した。

バレないようにこっそりと勇者の後をつけ、

無事ダンジョンへ入っていくのを見届けた。



ダンジョンの入り口が見える位置で、どのくらいだろう、

かなりの時間身を隠しながら、勇者パーティーが出てくるのを待った。



しかし、いつまで待っても出てこない。

さすがにおかしいと感じた俺は、思い切ってダンジョンへ入ってみたのだ。



恐る恐るダンジョンの生活範囲内を探し回ったが、

勇者達の姿はどこにもない。

それでは、と思い、意を決して奥の洞窟へ入った。

先日ゴブリン君がどこからか入手してきたランタンを片手に、奥へ奥へと進んだ。



そこで発見した。縦穴。

もうその時点で察してしまった。

勇者、やったわこれ……と。



その後一応洞窟内を捜索したが、予想通りというか、

勇者パーティーは見つからなかった。

死亡、転送済みだったからな!



ダンジョンに戻った俺は、ダンジョン内の照明を

松明からランタンに交換するというゴブリン君を手伝った。

なんかいっぱい手に入れたらしい。


作業の途中で、何故か転送されて間もないはずのサタン様がやってきて、



「勇者、穴に落ちて死んだわ」



と、淡々と俺に告げた。

特に誰が悪いというわけではないので、それだけで終わった。



それからサタン様は俺の部屋でゴロゴロしている。

とんがり帽子は棚の上でひとやすみ。

もう角のことは気にしなくなったみたいだ。


ふと気になって、「ここに居て大丈夫ですか?」と尋ねると

「自由時間だから大丈夫よ」という答えが返ってきた。


もう、何も言うまい……



―――――



「おなかすいたわ」



サタン様が読んでいた本から顔を上げ、俺に食物を要求した。



「あ、はい。ご用意します。ただ……ちょっと時間が要りますので……」


「うん」


「風呂にでも入られますか?」


「へ!? お、おふろ!?」



声が裏返ってる。なんですか急に。



「はい。そちらは常に用意できておりますので」


「ふ、ふーん……は、入ろうかしら……洞窟を歩いたことだし……」



なんかこっちをチラチラ見てくる。

転送されて体が元に戻ったんだから、洞窟を歩いたのは関係ないと思うが。

まぁ入るというなら案内しなければ。



「こちらへどうぞ」


「はいぃ!」



サタン様の声がまた裏返った。何この人。

しかも右手と右足、左手と左足、同じ側の手足を同時に出して歩いてる。

何かの儀式か? 入浴の儀式?



謎の行進をするサタン様を連れ、浴室の前へ。



「すみませんが、ちょっとこちらで靴を脱いでいただけますか?」


「……」



無言でコクコクと頭を縦に振る。

サタン様はブーツをぎこちない動きで脱ぎ、綺麗に揃えて置いた。

俺は革製の浴室内用の靴を甲冑の上から履く。

2人で脱衣所に入り、浴室の扉を開ける。



「どうです? なかなかのもんでしょ」



自慢の風呂だ、ちょっと自慢げな口調になってしまう。



「はいぃ!」


「サタン様……?」


「は、……え? あ、あぁ、そうね……ってすご! なにこれ!?」


「俺が作りました。俺が」



浴室はできるだけ広くスペースをとった。

石を加工し、浴槽、排気口、排水溝、すべて完備した。

浴槽はかなり工夫し、水源から引いてきた水をろ過し、流し込む仕組み。

そしてその浴槽に入った水は、裏の小部屋から燃料によって沸かすことができる。

木製の手桶等、細かい所にもしっかりと手を入れた。


浴室と脱衣所、脱衣所と通路はそれぞれ扉で仕切られており、

他人の目にも配慮した作りになっている。

とは言っても、俺がゴブリン君の目を気にしてもしょうがないので、

今まであまり意味が無かったが、こんなところで役に立つとは。

まぁ大浴場と言っても良い出来だろう。ふふん。


サタン様は興味津々といった様子で、浴室内を見て回っている。


見て! もっと見て! 全てを! 浴室の全てを見て!

口に出しそうだったが、変態っぽいので口元をニヤけさせるだけで我慢した。


サタン様が戻ってくる。



「浴室の外側の、ここが一応脱衣所になってますので」


「わ、わかったわ」


「……」


「……」


「どうしました? 手伝いましょうか?」


「しょ! それは大丈夫! できるから大丈夫だから!」



しょ!ってなんだ?



「ではごゆっくり」


「あ、ありがと! また後でね!」



通路へ出て、パタンと扉を閉じる。


さて、これでしばらくは時間を稼げるな。

その間に食事の支度を済ませてしまおう。

今回ちょっと短いですね。タイトルも短くしときました。

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