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個人授業 2時限目

ファ、ファンタジーだから……(保険)

「まず1つ目ね。レン君でもできるって言った方だけど」


「はい」


「教会……セーブ地点をぶっ壊すことよ」


「……」



あ、なんかわかった。


サタン様がフフン、といった自慢げな顔をして解説をはじめる。



「勇者が最後にセーブした教会を破壊するの。そして破壊した後、殺す」


「……勇者が死亡すると、転送されますね」


「そう、転送されるんだけど、転送先が、無い」


「無いとどうなりますか?」



大体予想はついたが、一応尋ねてみる。



「転送される勇者たちの身体、これは光の粒子になってるんだけど」


「はい」



見た覚えがある。勇者達が光の粒子になるところを。



「転送先が無い、行き場を失った粒子は、そのまま霧散するわ」



サタン様が手をパッと開いて、粒子が霧散する状況を表現する。



「それ以前のセーブ地点には行かないんですか?」


「セーブは上書きされるの。別のところへ転送されることはないわ」


「へぇ……」



死亡。転送。復活の3つの工程のうち、転送と復活の間を阻害するわけか。



「それでおしまいよ。勇者が復活することは無い。勝ち」



サタン様が人差し指と中指をピンと立て、ブイ、と勝利を表現する。



「わかりました。それで……もう1つは?」



1つ目の方法、セーブ地点の教会破壊が俺にできる方だから、

もう片方、俺にはできないっぽいやつは?


サタン様がテクテクと俺の前を横切っていく。

やわらかい、良い匂いが鼻をかすめる。



「もう1つは、魔法を使うわ」


「魔法ですか」



魔法なら俺には無理だな。使えない。


サタン様はサッとこちらへ向き直る。

緑色のサラサラとした髪が横に揺れる。



「以前私が、魔法の障壁で記憶を保っていると言ったはずだけど」


「はい。普通なら神の加護で記憶を失うけど、ってやつですね」


「それ。私は応用で記憶だけ保ってるんだけど、強力な魔法障壁なら、神の加護を妨害できるの」


「……」



まさか……



「転送を、妨害するわ」


「……」



な、なんだってー!



「勇者達を殺してすぐ、もしくは意識を失わせるくらい弱らせて」


「はい」


「魔法に対する抵抗力を無くしてから、勇者達に、うんと強力な魔法障壁をかける」


「ご自分にかけているような?」


「もっと強いやつをね。……そして殺す。殺した後にかけるならそれだけでおしまい。光の粒子にすらならないわ」


「魔法障壁が解けた後には転送されないんですか?」



ちょっと気になった。

時間が経って転送されたら時間稼ぎになるくらいのもんであって、結局は復活される。



「転送は何度も起こらないはずよ。実際に、何代前か知らないけど、いつだかの勇者はこれが原因で死んでる」


「誰に聞いたんですか?」


「本に書いてあったわ。レン君本が好きみたいだから知ってるかと思ったんだけど」



そんな本があったのか……読んでみたい。



「死体はそのまま残るから、後はそれを焼くか埋めるかして、ジ・エンド。勝ち」



ブイ。俺の目の前に指が出された。



「……わかりました。それが勇者を殺して勝つ、って意味なんですね」


「そういうことよ。そんなに難しくなかったでしょ?」


「はぁ……」



魔法はともかくとして、教会を破壊することについては

言われてみれば確かに、俺でもわかったかもしれない。

でもね? そんな強引に、物理的な手段でどうこうするなんて……

もっとこう、知的な方法を使って……

って俺もひたすら殺す、とか答えたから何も言えないか。



「さ~てレン君?」



サタン様がニヤリと笑って俺を呼ぶ。



「はい……でもなんすかそのレン君っての」


「あ…………」



サタン様の顔が急激に赤みを帯びる。

先程までのしたり顔はどこへいったのか、

あわわと慌てふためいている。



「レ、レンジャー! 罰ゲームの時間よ!」


「はい……さっそくですね」



まぁレンジャーだろうがレンジャー君だろうがレン君だろうが

どれでもいいけど。

そんなことより何されるの? 俺。



「レンジャー、外へ行くわよ。準備しなさい」


「え?」



外で何されるの俺!? 

……ぬ、沼!? あの沼に落とされるの!?



「……」



サタン様が俺の目前まで来て、俺の頭からとんがり帽子を取ろうとする。


近い。


目の前にサタン様の胸の辺りがきて、視界が黒く覆われた。

やわらかい匂いがふわりとクローズドヘルムの中に漂ってくる。


目の前の黒色のローブが離れる。戻った視界にはサタン様が後ずさりする姿。

赤い顔でニヤニヤしながら、両手で持ったとんがり帽子をスッポリとかぶった。



「はいはい、立って立って」


「あ、はい」



立ち上がる。別に準備するものは何もない。

剣ぐらいだろうか。


剣を腰にさす。



「どうせ暇なんでしょ? 今日は勇者達も来ないし」


「まぁ……はい」


「大丈夫よ、散歩するだけだから」


「散歩? 罰ゲームが散歩ですか?」


「そうよ? ちょっと歩きたいから付き合って」



散歩かよ。ビビッて損したわ。

それにしても散歩て。罰ゲームでもなんでもないな。



「承知しました。サタン様のためならたとえ火の中水の中……」


「フフ……別にそんなとこ行かないわよ。あ、でも底なし沼とやらには行ってみたいわ」


「え!?」



え……、ちょ、……水の中……沼の中!?



「だーいじょぶだいじょぶ。見るだけだから。たぶん」


「はい……」



大きな不安を抱えながら、サタン様と共に部屋を後にした。

ファ、ファンタジーだから……(震え声)


てめーこのやろーってモヤモヤした気持ちをお持ちでしたら、

パンチングマシーンか何かへぶつけていただければ……。

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