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とある女幹部の憂鬱

 私はこの地球を征服するべく、惑星「アボーン」より大帝「ワルイーゾ様」と共にやってきました。

 ワルイーゾ様は非凡なお方で、かの方が帝位についてから、星の治安が良くなり、民の生活も安定しました。


 例えば、

 どの国民も等しく最低限の生活を送る事ができ、働けば働くほど贅沢な暮らしが出来るようになる。とか

 誰もが病院にかかることが出来るようになる。

 病気の度合いによって国から補助金が下りるなど、保証も手厚い。

 但し初診料は高く、病院が必要では無いのに病院に来る輩には容赦が無い。病院が真価を発揮する為とは言って居ましたが……

 争いごとは無くなりませんが、帝王様の作り出したウォーシミュレーションで実際の死亡者を出さず戦争を行う事ができるようにもなりました。


 そんなすばらしい皇帝様のはずですが……何故この地球へやってきたのでしょう?

 最近、この星から色々なものを取り寄せていたようですが、それが影響したのでしょうか?

 ある日「地球へ行くぞ」と言って、私をはじめ、数名の科学者が帝王様に連れられ、この星へやってきました。


 そして宣言したのです。

「地球を征服するぞ!!」と


 これには驚きました。

 もちろん私以外の研究者もいて、彼等も驚いていました。

 あれほど平和を愛する帝王様に何があったのだと・・・


 その後は何を聞いても、

「我を信じよ、悪いようにはならん」

の一点張りです。


 しかも私には、露出狂としか言いようの無い服を持ってきて。

「お主の服は今日からこれを着るように。

 あと、口調もいつもの情けないものじゃなく、高飛車な口調に直すように。」

と無理やり服を押し付けていかれました。


 初めて帝王様からのプレゼント……ではなくっ!!

 こんな服を着せて帝王様は何を考えていらっしゃるのでしょうか? はっ、まさか私の恥ずかしい姿を見たくて? 帝王様ならばそうおっしゃって頂ければ、私の肌などいつでも見せて差し上げ……はっ、いけません私は何を考えて居たのでしょうか。

ですが、判りません……帝王様が何を考えているのか 全く判りませんわっ!!


――――――――――――――――――――


 地球で地盤固めを行うと言うので、私達は個別の研究室を用意して頂きました。もちろん服装はアレに白衣を着てですが……


 ある日、帝王様は私の勤めている研究室に訪れ「確か君は遺伝子工学の研究者で、さまざまな生物を作り出すのが好きだったよな?」と聞いてきました。


 私はこれでも遺伝子工学でかなりの地位を確立しております。歴史上絶滅した生物の復元や、遺伝子を掛け合わせて未知の生物を作るテーマを専攻しておりました。


「ええ、ただし生き物を粗末に扱うのは嫌いですが。」


 素直に答えるのも大事ですが、ある程度の牽制は必要でしょう。

 すると帝王様は多種多様な野菜を持ってきて「ならこれで人に危害を加えないけど、果てしなく迷惑で、かつ恐ろしい生物を作ってくれ」と言ってきました。


 ……まったく訳が分かりませんでした。

 世界征服するのに、野菜で生物を作り、かつ人に危害を加えるなと?


 無理!! ぜ~ったい無理!! どう考えてもこれで世界制服は無理です。ですが、母星であれだけの事を成し遂げた帝王様の言う事です。何か考えがあるのでしょう。


 とりあえず、従いましょう。


――――――――――――――――――――


 なっ……なんなのですか、あの黒タイツの集団はっ!!


 また別の日に帝王様より部下として紹介されましたが、何を聞いても答えは「イーッ!!」なのです。


 正直怖いです。

 彼らはなんでもそつなくこなしますし、頼んだ事は絶対に断りません。

 ですがっ!! 何故全身タイツなのでしょうか!?


 シルエットから人間とは判りますが……正直怖いです……


 なぜなら、時々「はいッス……あっ、ヤベ……イーッ!!」等と、言葉が通じているはずなのに、いろいろなものが通じないのです!!


 この黒装束集団がコ・ワ・イです!!

 人間誰しも理解不能な物は無理です!! 理解できそうにもありません!! 故に怖いです!!

 ある日帝王様へ泣きつきました。


「大丈夫、そういう者達だ。

 それに気が良いやつらだけを集めておいたし、お前に絶対に忠誠を誓うそうだ。

 安心するが良い。慣れれば華と日本人も言うだろう。そのうち慣れるさ。」


 などと説得されましたが……ムリッ!!、絶対ムリッ!!


 無理なんです~~~~!!!!!



 こうなったら少しでも早く地球を征服して家に帰ってぐっすり眠りたい……



――――――――――――――――――――


 やっと完成しました……帝王様もOKを出してくださいました。

 あの服装と黒タイツ集団にも慣れ、研究を試行錯誤した結果、やっとの思いで完成しました……

 正式名称は『怪人』となるそうです。

 初期戦闘分として100体分のストックを確保してあります。これで母国に帰れます。


 苦労しました……

 帝王様から1種につき1体づつとか言われ、更に能力も被ってはいけないと言われた時は本気で泣きました。

 何故そのような面倒な事を考えるのでしょうか? 原材料となる野菜は、いくらでも手に入れることが出来るのです。

 同様な能力でも、一糸乱れぬ隊列でもって数で押せば征服などたやすいではないでしょうか?


 ですが帝王様は「それでは1体の弱点が知られれば、全ての弱点が露見する」と言って許してくれません。


 私がそんな弱点を持つ怪人を作るはずありませんのに……

 本気で征服するつもりなのでしょうか……判りません……まったく判りませんわっ!!


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も言いましたのに、帝王様はNGを出しましたし人に危害を加える武装もダメ。

 かと言って完璧な怪人を作れば「完璧」では駄目だ。弱点を作れと言う始末。一体帝王様は何をお考えなのでしょうかっ!!

 はぁはぁはぁ……はっ……いけません、取り乱してしまいましたわ……


 きっとっ!! きっと帝王様には何かお考えがあるはずっ!!

 不満も疑問も持ち込んではいけませんわっ、落ち着きなさい私……

 そう、深呼吸をしましょう……


 すって~、はいて~、すって~、はいて~

 ふぅ、すこし気分が落ち着きましたわ……


それでは帝王様の作戦通り、怪人と黒装束をつれてバスジャックへ向かうとしましょう……


―――――――――――――――――――


 何っ!? 何なのですか!? あの変態集団は一体っ!?



 私達は帝王様の作戦通り、幼稚園のバスをジャックしましたわ。何故か怪人は一体しか連れてこれませんでしたが……

 何故幼稚園のバスジャックなどが世界制服の第一歩なの、私にはまったく理解できませんでしたが……怪人の性能検査だったのでしょうか?

 はっ、愚痴ってはいけませんわ私っ!!


 そんな事よりもあの変態集団の方が問題なのです!!

 何か事あるごとに爆発を起こし、あやうく園児が火傷をする所だったではありませんか。帝王様からケガをさせてはならないと厳命されていると言うのにもう……

 黒タイツが子供をさりげに庇っていませんでしたら、正義(笑)のヒーローが園児を怪我させるところでしたわっ!!


 しかし、あの変態が強いの何の。

 あれだけ特訓していた黒タイツがなすすべなくやられてしまいましたわ……

 スーツの性能がいいのか、誰一人怪我していなかったのは幸運でしたが……

 黒タイツは帝王様がこの星で雇った「アルバイト」という人間なので、弱いのは仕方ないですが……それでもあれは納得いきませんですわ。


 そもそも怪人を一発で倒した銃撃は絶対に『粒子砲』のはず!!

 たとえお野菜が原材料だったとしても、私の研究は完璧です!! この惑星の人間がもつ最大兵器『核爆弾』ですら、私の怪物に傷1つつけることは出来ないはずですわ。



 途中まで5対1の劣勢を何とかいなしておりました。

 それどころか、私の作った怪人の方が押していたと思います。


 あのままであれば、私の怪人があの変態共をなぎ倒していたでしょう。それがいきなり5人はお互いの武器を組み合わせ始めたではありませんか。


 イヤな予感がしました。


 あの武器は危ない……と。

 なので私は怪人に「今の内にあの変態をぶち倒すのです。」と命令しました。


 ですが、まったく聞き入れません。


 どう言う事でしょうか? このままでは間違いなくあの兵器が完成してしまいます。

 それが怪人は組みあがるのをじっと待っているだけです。何かがおかしかったのです!!


 まるで怪人がその兵器に撃たれるのを待っているかのように、動かないのです!!

 その結果、怪人は変態の兵器から浴びせられた砲撃を食らい、なすすべなく倒れました……

 それどころか、一度倒れた後に怪人が爆発したのです!!


 驚きました!! 恥ずかしながら少しだけ漏れてしまいました。


 私は誓って怪人に自爆装置とかつけておりません。例え機密保持の為だったとしても、精魂込めて作った子を爆発などさせられません。


 周囲に爆発物反応もありませんでした。

 もし、変態の武器が粒子砲だったとしても撃たれた後に爆発などありえないことなのです。

 それが……怪人が倒れた後、爆発を起こして木っ端微塵になったのです。

 起こったことは仕方がありません……問題は、何故怪人が変態の武器が組み上がるまで動かなかったか? なのです!!


 きっとあの変態の呪いなのでしょうか?

 Gは1匹いたら30匹居るといいます。きっとあの変態も5人いたので150人はいるのです!! 何かをされたのかもしれません。


 警戒しなければ……変態とGだけはこの世から抹殺するべきなのです!!


 ……はぁはぁはぁ……いけません、また取り乱してしまいました……


 最近取り乱すことが増えてきた気がしないでもありません。栄養が足りないのでしょうか?


 とりあえず、帝王様へ報告にいきましょう……正直気が重いですが、言わないといけませ……


――――――――――――――――――――


 何故でしょうか!?


 まっっっったく、訳が判りません!!


 褒められました!!


 報告しに行ったら、いきなり抱きしめられ、すっごい笑顔でめちゃくちゃ褒められました!!

 私は何もしていません。それどころか時間をかけて開発した怪人を一体駄目にされたのです。

 それなのに褒められるとは一体どう言う事だったのでしょうか!?

 もちろん、黒タイツは怖いですが、大事な仲間です。死傷者はおろか、怪我人1人も出さずに帰ってきました。その事を褒められたのでしょうか?

 ですが何か違う気がします……女の感ですが……


 もはや理解できません……まったく訳が判りません……


 ただ1つだけ判った事があります。

 私は帝王様に褒められるとかなり嬉しかったようです。未だに顔が上気しているのを感じます。


 次もよろしく頼むと言われてしまいました。……ちょっと頑張ってみようかと思います。

 ……でも……早く家に帰らせて欲しいです……

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