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星の剣舞姫  作者: たかいわ勇樹
第5話「グラン・ギニョルは炎のようで」
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 聖書でキリストはこう言っている。

「自分の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい」

 だが、私が知っているある人物は、自分を蔑み、爪弾きにした周囲への憎しみを、いつしか人間全てに対する憎悪へと膨らませていった。

 また、旧約聖書・ダビデの詩にはこうある。

「怒りを解き、憤りを捨てよ。自分も悪事を謀ろうと、いら立ってはならない」

 だが、その人物は憎しみの炎に己を焼き、その炎で自分を蔑み、疎んじた者達を焼き尽くし、更にはその他の者達にまで炎を広げていった。


 新約聖書で使徒ペテロは手紙の中でこう説いている。

「魂に戦いを挑む肉の欲を避けなさい」

 だが、アニェス・紅は自分の欲望のまま剣の材料を集め、そのためにロベールや私を徹底的に扱き使った。

 また、聖書でキリストはこう言っている。

「自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか」

 だが、アニェスは日々の食事や持ち物に徹底的にこだわり、気に入らなければ相手やその場の雰囲気などお構いなしで罵倒し、相手の心を、時には体さえも打ちのめした。

 それでもアニェスは己の欲で身を滅ぼす事がなく、傲岸不遜な言動も相まって、幾多の危機が襲いかかってきても、それらを全て切り抜けて畏怖の対象にまでなったのだった。そのために、私も含めた周囲の者達が何度死にかけた事か、数え切れないのだが。

 そして、アニェスが私とロベールの剣を完成させて確かな手応えを掴み、いよいよ自身の剣の制作に掛かった頃、アニェスや私達に向かって、憎しみの炎が周囲を焼き、勢いを増しながら迫っていたのだった──

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