妖怪互助会
平成9年12月30日 夜20時頃
横浜市鶴見区仲通近辺・沖縄タウン内
僕は彼らに呼ばれた。
年末の寒い夜だった。
彼らと特別に交流があるわけではない。
彼らは互助会のようなものを作り、人間社会に溶け込んでいる。
社会的地位を得た若しくは得たいもの、食事の確保をリスクなしで得たいもの、人間と番になったものなど、様々な理由で彼らがこの地域に集まった。
シャッターが下ろされている2階立ての建物の前に着いた。
電気工事士の作業着を着た若い男性と中年男性がタバコ吸うていた。
僕を見て、慌てて、タバコを消し、声をかけてきた。
「大西さんですか?」
中年男が声をかけてきた。
「はい、大西です。」
「どうぞ、こちらへ、会長が待っています。」
二人は建物の裏口へと案内してくれた。
建物内は安居酒屋のようにテーブルや椅子が置いてあった。
数人の男女がそこに座って、僕を見つめていた。
「会長、大西さんです。」
一番大きなテーブルの真ん中に座っていた右耳が欠如している中年男が立ち上がった。
「遠いところから来ていただいて、感謝します、大西さん・・・初めまして、私は鶴妖互助会の会長、知念光男と申します、ミチュウと呼んでください・・・ウワーグワーマジムンの妖怪です・・・どうぞ、こちらにお座りくださいませ。」
会長は人間の外見から豚男に似た外見へと代わった。そして大きなテーブルの前の椅子に座るようにジェスチャーされた。
「大西玲紀です・・・早速ですが、呼ばれた理由を教えていただきたい。」
僕は座りながら話した。
「失礼しました、そうですね・・・率直に言います・・・『猿』はここ・・・鶴見区内にいます。」
僕は思い出した。『猿』は僕の姉を犯し、喉を切った男。
僕の表情がこわばった。
「確証はあるのか?」
「はい・・・『猿』とその護衛たちが最近こちらに引っ越してきた。」
「何人だ?」
「親玉を含めて、3人です・・・厄介な連中でね・・・互助会の会員が5人殺されているのです・・・我々の体の一部で延命治療しているようです。」
会長の隣に座っていた男はテーブルに殺された会員の写真と種族情報が入ったファイルを僕に渡した。
「俺、金村利男と言います・・・キムと呼んでください、朝鮮半島から来たドゥオクシニです。」
男は額に生えている白い角と赤い皮膚の鬼の外見に代わった。
僕はファイルを受け取り、内容を確認した。
「『猿』の写真はあるのか?」
「はい、『猿』とその護衛2人の写真が最後にあります。俺の弟が撮った写真だ。」
僕はその写真を見た。確かにあの男だった。少し歳を取ったに見えるものの、姉を殺した男だった。『猿』の両隣に若い男女が立っていた、彼の護衛であり、子孫たちだ。
「間違いない・・・」
僕はつぶやいた。
「そこでね・・・我々は力を貸しますので、『猿』たちを抹殺してほしいのです・・・連中は私の妻、キムの弟、そして会員3名を何の躊躇もなく、殺したのです・・・妻から残った耳、キムの弟の角・・・我々の特徴的な部分を切り取り、自分たちの命を伸ばしている・・・」
「それは違うと思う・・・『猿』のみは自分の命を伸ばしているだけだ・・・護衛は彼の子孫であり、捨て駒だ・・・僕はずっと桃太郎一派を追ってきているので。」
「お願いです・・・大西様・・・あの連中を殺してください!!」
若い女性が僕の前で土下座した。
「彼女は木村美恵子、大陸から虎人で『猿』が彼女の父親を殺した。」
会長が説明した。
「お願いです、大西様!!兄の仇を!!」
若い男性が同じく、土下座し始めた。
「彼の名は比嘉マリオで、南米ペルーの妖怪、アマルの器になっているものです。」
会長はまた紹介した。
「お願いです・・・せがれの仇を・・・」
中年男性が涙流しながら懇願した。
「彼は久手堅ヒサオだ・・・南米ブラジルの妖怪、キブンゴの器です。」
「皆さん、頭を上げてください・・・僕は自分の一族の敵討ちするだけです。」
「大西さん、我々は平和に暮らしているのです・・・あの連中が我々の平和を・・・我々の家族を滅ぼしに来たのです・・どうか、助けてください・・・お金を幾らでも支払います・・・どうか・・・どうか・・・」
会長が頭を下げてきた。
「僕は救世主でも殺し屋でもないです・・僕は自分の一族を殺した『猿』を含む、憎き桃太郎一派を滅ぼしたいだけ・・・あなたたちの援護はいらない、場所だけ教えてくれ・・・それだけでいいです。」
僕の心が大火のごとく、復しゅう心にあふれるのを感じた。
物語は一気に比較的現代へ・・・
ご意見をお聞かせいただけたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。