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ケンケンパ

三人の少年少女が放課後に集まり、怪談や都市伝説などについて語り合うお話です。

僕の名前は高橋裕太。どこにでもいるような名前で、どこにでもいるようなメガネをかけた小学生四年生。普通に学校に通って、家に帰って、宿題をして、ご飯を食べて、ゲームをして、寝ている。そんな平凡な生活を送る僕だけど、ひとつだけ特別なことがある。それは、毎週水曜日の放課後に、友達と集まってホラーやミステリーの話を発表し合うことだ。

 

 「今日の当番はユウくんだったかしら?」

 机を三角形にくっつけた右隣の、ツインテールの朱野雛子が、僕に話しかけてきた。ユウくんというのは僕のあだ名だ。

 「うん、そうだよ」

 「今日はどんな話なんだ、ユウ?」

 僕の左隣の、ガキ大将みたいな風貌の坂巻渚が、今日の話題について触れてきた。

 「今日はケンケンパだよ」

 「ケンケンパって、あのケンケンパよね?」

 「地面に丸をかいて、石を投げるやつだろ?」

 ヒナちゃんもナギくんもケンケンパを知っているらしく、説明はいらないようだった。

 「そう、あのケンケンパ。ちなみに、ふたりはやったことある?」

 「ええ、あるわよ」

 「いや、ないな」

 ヒナちゃんだけが首を縦に振った。

 「じゃあ、ヒナちゃん。ケンケンパは何時くらいにやった?」

 「ええーと・・・昼休みだから、12時すぎくらいだったわ」

 「そのときはなにを使った?」

 「小石がひとつだけよ。それがどうしたの?」

 「実は、ある時刻とある物を使えば、ケンケンパであの世に行けるだ」

 「へぇー、時刻って何時くらいだ?」

 「丑三つ時、午前2時だよ」

 「ある物っていうのは?」

 「なんでもいいんだけど、赤い花びらだよ」

 「それで、どうやってあの世に行くの?」

 「そうだね。まず、ケンケンパをする人数なんだけど、これは絶対ひとりじゃないとダメなんだ。そして、地面に丸を描くんだけど、パのところは奇数にしないといけない」

 「結構細かいのね・・・」

 「それで赤い花びらだけど、これを利き足じゃないほうの靴の中に入れるんだ。これで準備は完了」

 「なんで赤い花びらなんだ?」

 「さあ、よく分からないけど、赤は生命力とかを表すらしいよ」

 「なるほど・・・」

 「で、2時になったと同時にケンケンパを始めるんだけど、一回でも失敗したらあの世には行けないんだ」

 「やってみたけど、案外難しいわよ」

 「まあ、簡単に行けたら面白くないしね。一回もミスせずに最後までこれたら、石を拾っちゃダメなんだ」

 「は? 石を拾わないと終わらないぞ?」

 「終わらしちゃダメなんだよ。石を拾わず、『鬼さんこちら、あの世はどちら』って唱えながら石を蹴るんだ。そして最初の円に戻ると、そこはあの世なんだって」

 「ふーん。でも、なんで石を蹴るんだ?」

 「賽の河原ってあるでしょ。多分、そこから来てるんじゃないかな」

 「どうしてケンケンパなのかしら? もっと他の遊びもあるのに」

 「僕も調べてみたんだけどよく分からなかったんだ。ここからはネットの憶測になっちゃうけど、ヒナちゃんはケンケンパをしてなにか疑問を感じなかった?」

 「え、特に感じなかったわよ」

 「ケンケンパって、足を広げることをパって表現するのは分かるけど、片足立ちをケンケンって表現するのは変じゃない?」

 「確かに、トントンとかピョンピョンのほうが分かりやすいよな」

 「そうなんだ。それでネットの記事によると、ケンケンパのケンケンは喧しいの喧喧じゃないかって書かれていたんだ」

 「喧しい?」

 「うん。それでケンケンパのパはイナイイナイバァのバで、元々は喧しくして幽霊をおびき寄せるための儀式だったんじゃないかって」

 「それが長い歴史の中で歪曲して、遊びのケンケンパとして現代に広がったわけね」

 「うん。まあ、十中八九こじつけだけどね」

 「わたし、今日やってみようかしら・・・」

 「絶対ダメだよ!」

 「冗談よ」

 ヒナちゃんは僕の焦った顔を見て、くつくつと笑った。

 「来週はヒナの番だっけか?」

 ナギくんが笑うヒナちゃんに声をかけた。

 「そうよ。とびっきりの話を持ってくるから楽しみにしてよね」

 そのとき、放課後を終了を報せるチャイムが鳴り響いた。僕たちは校門まで走っていく。

 「じゃあ、また来週」

 「ええ、また来週」

 「ああ、また来週」

 僕は平凡な日常に戻った。

 

 

 

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