第6話 『冒険者ギルド』
一日2話投稿したり、1話も投稿しなかったりとバラバラですね。何時に投稿するのが一番いいのかも悩み中です。
この町の中央をまっすぐ走る大通りの店の中でも、ひときわ目立つ大きな建物。
その中にはエルフ、獣人、ドワーフから人間まで様々な種族でごった返していた。
ここは、冒険者ギルド。自らの腕っぷしを、お金に換える場所である。
「すみません。新しく登録したいんですけど…。」
そんな中、まるで強そうには見えない青少年が、がやがやとした人ごみの中で押しつぶされそうになりながら、新規登録のカウンターでぐったりとしていた。
(なんで、僕は一人でこんなことになっているんだ…。)
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さかのぼること、数十分前。
「じゃあ、メア君。1人で登録してきなさい。」
冒険者ギルドを目の前にして、満面の笑みのケイトさんがとんでもないことを言い放つ。
「え、今、ひ、1人って言いましたか?」
「あぁ、そう言ったよ。」
「何でですか?ケイトさんは?」
「ちょっと調べ物があってね。まぁ、これも社会勉強だと思って。」
「いやいや、僕一人じゃ無理ですよ!こんな弱いやつ、門前払いですって!」
「はいはい、卑下しない卑下しない。」
そう言って彼女は「無理無理」と首を横に振る僕の首根っこを易々とつかみ上げ、ギルドの中へ放り込む。
ガランガランと大きな音を立てて、ギルドの中に転がり込む。
幸いにもギルドはそれ以上に騒がしく、思ったよりは目立ってなさそうだ。
だが、入口周辺にいた人たちは、突然転がり込んできた僕に気付かないわけがなく、なんだなんだと注目の眼を向ける。
「あ、ごめんなさい…。なんでもないです…。」
急に注目された気恥ずかしさから、僕はすぐに立ち上がって、人ごみの中へと身を隠す。
目的地を探そうと、すみません。通してください。と言いながら人ごみをかき分けようとするも、どうやらギルドの盛況にかき消され、周りには聞こえていないようだった。
(やっぱり一人で来るべきじゃなかった…)
途方に暮れて、ふと上を見上げると、向こうにある天井からぶら下がっている看板に「新規登録」と書かれているのが目に入った。しかし、そこを目指そうと歩き出すも、この人ごみの中でたどり着くまでに時間がかかってしまう。何とか頑張って進んでいると、ポンッと急に人ごみから抜ける。
どうやら「新規登録」のカウンターに来る人が少ないようだ。いや、少ないというか、全く人がいないのだ。僕の後ろを境にして、人ごみとがらんどうな空間がきっぱりと別れている。
では、さっきまでの人ごみは何だったのかと振り返ると向こうの天井からは「依頼受付」という看板がぶら下がっていた。
なるほど。きっと、みんな朝一で依頼を受けに来たのだろう。こんなに混んでいるのにも納得する。
しかし、一方で朝一に新規登録する人は少ないのだろうか。カウンターは複数個所あるものの、受付嬢らしき人がいる場所は一つしかなく、ほかの場所はやっていないようだった。
そのたった一人の受付嬢さんも、何やら暇そうな様子で雑用らしき仕事をしていた。
「すみません。新しく登録したいんですけど…。」
仕事の邪魔になりそうで申し訳なさを感じつつも、僕はおずおずとカウンターに申し出た。
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受付嬢さんは声をかけられて、ようやく僕に気が付いたようだ。
「あ!ごめんなさい!ようこそ、冒険者ギルドへ…。」
慌ててこちらに対応する受付嬢さんは、こちらを見た瞬間、ヒュッと息をのんで固まってしまった。
「あ、あの?」
「い、いや。なんでもないです!ぼ、冒険者の新規登録ですか?」
「はい。そうです。」
「わかりました。で、ではお名前を教えて下さい。」
「メアです。ただのメア。」
「メアさんですね。メアさん…メアさん…。」
名前を伝えると、彼女は刻み込むように何回も何回も僕の名前を繰り返す。
「メアさんは得意な魔法などはありますか?」
「い、いえ…特には…。魔力が生まれつき少なくて…」
「そうですか、わかりました。で、では、パーティを組む予定はございますか?」
「あ、はい!」
「なるほど。では大丈夫そうですね。メアさんは、新規登録ですので、Dランク冒険者からとなります。」
彼女はギルドカードを僕に手渡す。
「では、これから冒険者ギルドの内容について説明します。」
ケイトさんから聞いていた通り、ギルドにはDからSまでの五段階の階級があり、自分のランクにあった依頼しか受けれないのだそうだ。ランクを上げるには、依頼をこなしていくしか道はないが、そのランクの中でも難しいものを成功させれば上がりやすくなるようだ。しかし、依頼に失敗すると、その分ランクが上がりにくくなるうえに、違約金も払わなくてはいけないため、自分の実力にあった依頼を受けるほうが安全である。
また、パーティを組む場合、パーティの中で一番ランクが高い人のランクが採用されるらしく、僕がケイトさんと組んだ場合、Aランクの依頼を受けることができるのだ。
その他、ギルド内の設備の紹介や、魔力が少ないということでおすすめの武器屋など冒険に役立つ様々なことを丁寧に教えてくれた。
説明の間に、顔を赤らめて、チラチラとこちらを伺ってきたのは気になったが、とても丁寧な対応で安心した。
「お前なんか、冒険者にはさせん!」なんて怒られたらどうしようかと思っていた
(はぁ、丁寧な人で良かった。)
「いろいろと教えてくださり、ありがとうございました。」
ギルドカードを作れたため、受付嬢さんにお礼を言い、ケイトさんと合流しようと席を立とうとしたその時、彼女は僕の服の袖を引っ張って、僕を引き留めた。
彼女のほうを見ると、顔を赤くさせ、口をもごもごさせていて、何か言いたげな様子だった。
ようやく声を発した彼女は、僕に向かってこう言った。
「私、リースって言います!覚えて帰ってください!」
何か重大なことかと思ったが、ただの自己紹介で安心した。
何をそんなにためらっていたのだろうか。
「え、あ、はい。ご丁寧にありがとうございます。」
再び、リースさんにお礼を言って、僕は冒険者ギルドを後にした。
(わざわざ名前を言ってくれるなんて、最後まで丁寧な人だなぁ)
僕が彼女の真意に気付くことは、ついぞなかった。
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