正夢
夢を見た。起きて夢だと分かった瞬間、安堵の息を吐くほどの恐ろしい夢。悪夢。
駅から出た彼女が夜道を歩く。暗く、人気のない通り。
突然、車の陰から男が飛び出し彼女の前に。彼女は悲鳴を上げ……。
……ただの夢だ。でもすごくリアルだった。
その夢が何日も続けば無視するわけにもいかない。
だから俺はボディーガード役を買って出ることにした。
彼女に直接注意を促せばいい話だが
根拠が夢では取り合ってくれない、すぐに話を打ち切られるだろう。
だからこうして陰から見守る。
何回目かでふと俺自身でさえ、たかが夢で……なんて思ったりもしたが
俺の判断は間違っていなかった。
今夜、彼女の服装はあの夢と同じ。そう、あれは正夢だったのだ。
俺は先回りし、ストーカー野郎がいつ出てきても飛び出せる位置で待機した。
彼女は必ず俺が……。
……なんだ? そろそろなのに誰も来ない?
そんなはずは、確かこの通りのはず……いた。
ゆっくり車の陰から出て、彼女の背中を見つめる男。
ストーカー野郎! このままじゃ彼女が危ない! やってやる!
俺は物陰から飛び出し、ストーカー野郎に掴みかかった。
驚いた奴の体が強張るのが手から伝わったが
奴も覚悟を決めたようで応戦してくる。う……うおおおお!
俺は奴を引き倒し、馬乗りになって殴りつけた。
彼女の悲鳴が聞こえる。
大丈夫だ、俺がいる。君の事は必ず俺が……・。
「この野郎!」
「な、ぐぅ!?」
俺はガッと腕を引っ張られ、そして殴られた。
新手。二人組だったのか。クソッ……いや三人? いや、え、もっといる。
「「「「「このストーカー野郎が!」」」」」
男たちは罵り合い、不格好な殴り合いを始めた。
「ゆ、夢とちがひゅ」
そんな中、俺が殴りつけた男がそう呟いた。
いつの間にか彼女は去り、男共がひしめくカオスな空間の中
俺は彼女が一流のアイドルになったことを悟り、嬉しい気持ちになった。
ははははっ。だってアイドルはファンに夢を見せるって言うだろ?




