異世魔酒房 その2
ノクターンノベルズで書いている「異世界転移したら、魔女狩りされたのですが?」のスピンオフになります。第2弾。
賑やかな酒場だ。
ガヤガヤと活気付き、仕事終わりの者や友人との気のおけない時間を過ごしに来た者。はたまた一人で晩酌がてらやって来た壮年の紳士やら、様々な人種、種族で溢れかえっている。
カウンターに座り、ミシュレとカヌは議論が過熱していた。飲み始めて二時間弱。お互いに出来上がるにはいい頃合いだ。
「ねぇ、カヌちゃん」
「ん、なーに?」
「ボインとボボインってどっちが大きそうかなぁ?」
「ごめん、頭が悪くなりそうだからその質問答えなくていい?」
「なんで!?なんでそんな事言うの!?」
「めんどくさっ!じ、じぁあボボインの方で…」
「ざーんねん。正解はボインの方でしたー」
「しらねーよ!」
ちょうどやってきたメザシを頭から丸かじりする。隣ではちびちびとブロッコリーの房を取り分けている女がいる。
「ね、楽しい?それ」
「楽しいとか楽しくないとかじゃないの。はい、これカヌちゃんの分」
「あ、ありがとっ。これ食べなきゃダメ?」
「作ってくれた人が悲しむよ?はい、あーん」
「あ、あーん。は?自分で食べるのかーい!私の分は?!」
「え?甘えないで」
なんてこった。酒グセの悪さはあの人とタメを張る。もう二度と仲間内の酒の誘いには乗らないと誓った。
「ね、セレナ姉様ってどんな人が好きなのかな…」
「えっ!?急にどうしたの!」
「ううん、なんでもない。ちょっと不安になっちゃって…。私ってあの人にとってなんなのかなって…」
「自分で聞けよっ!!ちゃんとセレナさんはミシュレの事、好きだって」
「ほんと?信じていい?」
「うんうん、ホントホント」
「そっかー。なら、よかった。うん、元気でた!いっぱい飲むぞー。お兄さん、
麦酒追加でー」
「ほどほどにね!もう随分と飲んでるのだから」
「カヌはミシュレの事、心配?」
「そりゃあ、心配だよ」
「ふふっ、優しい。カヌちゃん大好き!押し倒していい?」
「ここでっ!?ほら!隣のおっさんがすごい顔してこっち見てるって!ちょちょちょ!」
口からダバダバと飲み物をこぼすおっさんを横目にすごい力で押し倒されそうになる。
「ミ、ミシュレ!もう…もう帰ろ?続きは家でしよ?ね?ね?」
「うーん、しょうがないなぁ。じゃあちょっとトイレ行ってくる」
「う、うん。じゃあ戻ったら帰ろっか」
「うん」
千鳥足でトイレの方向に席を立つミシュレ。
私は服装を正し、残った飲み物を飲み干す。
あの子、今年20だっけ?私が一個上でセレナさんがその一個上で…。飲み始めたばかりだから無茶な飲み方ばかりして…、もう。
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さて、一時間経過したが戻ってこない。
あの野郎、帰りやがった!
こっちはずっと針を刺すような視線に晒されてたんだぞ!?
そそくさとお会計を済ませて店を出る。
無性に走りたい気分だったので、駅まで全速力で走って帰った。
もう二度とお酒なんて飲まない!!そう思いながら…。