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第二話 セイの初戦闘

存在進化とはポーレルの成長過程で大きくその容姿を変える事である。

また、それに伴い大きく能力が向上し、使えるスキルが増えることもある。


「簡単にまとめるとこんなところか」


オメルガービ公爵家へ荷物を届ける間に俺はポーレルについて勉強していた。

父の言っていた存在進化を詳しく知りたかったのもあるが、今までポーレルについてあまり勉強してこなかったので、時間がある今ならと家を出立する前に参考書を何冊か持ってきたのだ。

そもそも、勉強を独学でしなくてはいけなかったので、前世で必要性の高かった数学や語学、歴史などの勉強を優先してしまい、最低限の知識しか持っていなかった。

それにこれから通う幼小学校でも一からポーレルについて教えてくれるはずなので、そこで学べばいいと思っていた。

だが、長い時間馬車の中自由な時間があるのならと色々な本を読んでみることにしたのだ。


「ポーレルって成長するんだな」


その種類にもよるが、普通の動物のように成長し大きくなるらしい。

それもただ食べ物や魔力を上げているだけでいいらしい。

しかし、魔物を討伐したり、他のポーレルと戦わせることで一般的な成長と別に能力的成長も見られるそうだ。


「ローデリック様、そろそろ休憩にします」


「分かった」


森に入る手前で馬車を運転してくれている騎士が休憩を申し出たのだった。

この馬車を動かしてくれているのは彼のポーレルで、馬車なのに引いているのは大きなクマだった。

しかも、二足歩行でピンク色のかわいいクマだった。


うん、熊というよりクマ? いや、テディベア寄りだな。


大きさは軽く二メートル以上はありそうなのに、ぬいぐるみのようにかわいいのだ。


「質問いいですか?」


「何でしょう?」


彼がクマのポーレルに木の実を上げていたが、その食べる姿もかわいい。


きゅ~!


「いた、痛いって、セイ」


俺に首に巻き着いていたセイが急に尻尾で俺の頬や肩を叩いてきたのだ。

それを見た騎士が苦笑いをする。


「もしかして、テットをかわいいと思ったんですか?」


「は、はい」


「ポーレルって意外と契約者の気持ちを敏感に感じてしまうものなんすよ。だから、他人のポーレルに目移りしちゃうとやきもちやいちゃうわけで」


だから、セイが急に俺へ攻撃してきたのか。

可愛い奴だな。


「まあ、うちのテットはかわいいって言われますけど、実はかわいいだけじゃないんですよ」


騎士はそう言うと彼のポーレル、テットに目線を向ける。

おもむろに動き始めたテットは近くにあった岩にめがけてチョップを繰り出す。

そして、大きな破砕音と共に岩は粉々になったのだ。


「テットは更に強いんです。魔物が侵入してきた時とかは大きな岩を投げ飛ばして戦ったりするんですよ」


「なるほど、かわいいだけじゃなくて、かっこいいんですね」


「分かってもらえてうれしいっす」


ポーレルが契約者の感情を感じるか。

この騎士とそのポーレルのテットの先ほどの様子を見るに以心伝心レベルだ。

もしかしたら、契約者もポーレルの感情が分かるようになるのでは?

いや、それよりも。


「テットは存在進化したのですか?」


「そうですよ。前はもっと小さくぬいぐるみみたいで、動き方も四足歩行でした」


「なら、存在進化に必要な成長と普通の成長って何が違うのですか?」


俺が聞きたいのはそこだ。

なんとなく技術的な成長と身体的な成長の違いなのかもとおおよその考えはまとまっているが、前世の知識がある人間としては身体的な成長の方が存在進化に必要な気がするのだ。

もしかしたら、俺が知らない要素があるのだろうか?


「すみません、分からないっす」


「そうですか」


専門家でもないと分からないか。

もし、セイが存在進化することでかわいいからかっこいいにシフトチェンジできれば、モテ要素が増えると思ったのだが。

それに、俺は文官を目指しているがその枠は軍人よりも少ない。

そうなると、軍へ士官することも考えなくてはならない。

平民に落ちるのもいいが、平民は親稼業や伝手で仕事を探すのが多いと聞く。

今更平民になったところで仕事はないだろう。

ならば、文官の枠をかと取れなかった場合、危険は伴うが軍に入るのが一番生活が安定するだろう。

そうなると、やはり必要になるのが力だ。

セイも強くなってくれると嬉しいのだ。

その為にも存在進化の謎に迫れればと思ったのだが。


「でも、うちの騎士隊長が『鑑定』のスキルを持ってまして、その人がもう少し魔物を倒したら存在進化するぞって教えてくれたんですよ。なので、その子の存在進化を目指すのであれば魔物を倒すのが一番っす」


「本当ですか!?」


「なんなら少し手伝いましょうか?」


騎士に命令を出せるのはその主人だけだし、主人の子供と言っても三男だ。

父に頼んでも許可は出ないだろう。

そんな現役騎士が手伝ってくれるなんて、こんな機会はめったにないぞ。


「よろしくお願いします!」


「では、さっそく」


「さっそく!? せめて戦い方のレクチャーをしてから」


「そんなの実戦で覚えるしかないっすよ。今からテットに適当な魔物見繕ってきてもらうんで、待っててください」


え? 心の準備ができてないんだけど!

全然分かんないんですけど!!


「あ、戻ってきた」


ぎゃああああ!! あ、あれ?


「スライム?」


「まあ、ザコの定番と言えばこれっすよね」


確かに前世でもRPGのザコ担当と言えばスライムとゴブリンだった。

でも、これはゲームじゃない。

本当にザコなのか?


「安心してください。ピンチの時はテットがワンパンで消してくれるので」


「そうか」


ここまでお膳立てしてくれたのなら、やるしかない!

俺は首元に巻き付いているセイを地面に下ろす。


「頑張れセイ。これが俺たちの初戦闘だ!」


きゅう!


セイも覚悟を決めたのか、気合の入った声と共に頷く。

よし、まずは。


「セイ、スライムに攻撃だ!」


きゅう~う!


ノロノロノロノロ


そう言えばこいつ足が遅いんだった。

スライムに攻撃どころか、近づくのも大変そうに見える。

そのままでは先にスライムが仕掛けてくる!


ノロノロノロノロ


スライムも動きがすっごく遅い。


「あ、まあ。頑張りましょう」


騎士に温かい目で、やさしい言葉をかけられたのだった。

俺が肩を落としてため息をついたころ、やっとセイとスライムが接触する。

やっとバトルが!


きゅ~きゅ~きゅ~


セイはスライムに巻き付く。

スライムにはほとんどダメージがないようだ。

セイは頑張って巻き付く。

スライムにはほとんどダメージがないようだ。

セイは更に頑張って巻き付く!

スライムにはほとんどダメージがないようだ。

…………

セイは諦めた。


「殺しちゃいますね」


セイがスライムから離れたのを見るとテットは拳をスライムめがけて落としたのだった。

俺は思わず泣きそうになるのだった。


「まだまだこれからっすよ。それに、ほら、たまたまさっきのスライムが耐久に優れていただけかもしれないっすし」


「そうかな?」


「そうっすよ、それにほら」


騎士が指さす方を見ると山積みにされたスライムが三つほどあった。

セイとスライムの戦闘中にテットが捕まえて来てくれたようだ。


「大分余裕をもってオメルガービ公爵領に向かってますし、今日はここで野営してポーレルの訓練を行いましょう! 大丈夫っす。まだまだスライムはいっぱいいるっすから」


騎士は励ましてくれるが。

隣で息が上がって倒れているセイを見ると心が折れそうになるのだった。










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