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第一話 ポーレルとの出会い


「お前が俺のポーレルか?」


きゅ~


嬉しそうに頷いた。

身体の見た目は蛇そのものなのだ。

手も足もなく胴長な身体だ。

なのにどこか野暮ったいフォルムだ。

顔も目がパッチリとして、小さな口、もし訳程度の小さな角、それに可愛らしい声。

どう見ても蛇じゃないな。


「では、次の子供を」


「あ、あの」


「ん、なんだい?」


ここはちゃんと聞いておかないとな。


「これって、なんのポーレルでしょうか?」


「あ、えっと。さあ?」


「え?」


「蛇か何かじゃないか? もしくは小竜種とか? すまないがまだ沢山の出会いを導かなくてはいけないのだが」


それもそうだな。

後で調べるとするか。


「よろしくな」


きゅ~


俺はこいつと一緒に教会を出るのだった。

そう言えば、こいつの名前どうするかな。


「兄さま!」


「おう。待たせたなリベルト」


駆け寄ってきたリベルトは抱き着いてくる。

そして、満面の笑みを俺に見せてくれた。

その口元には白い汚れが付いていた。


「アイスクリームでも食べたのか?」


「うん。あ、でも兄さまに秘密って母様が」


「分かった。今のは聞かなかったことにしておこう。それよりも、ほら」


俺はハンカチを取り出すとリベルトの口元を拭いてやる。

それを何の抵抗もなく俺のかわいい弟は受け入れた。

綺麗になるとまた笑顔を俺に向けてくる。


「そう言えば兄さまのポーレルは?」


その言葉に振り返る。

あいつは教会を出てすぐの所をイモムシのように移動していた。

しかもすごくゆっくりに。

でも、その顔は真剣で一生懸命俺に付いて来ようとしているのが見て取れる。

蛇っぽいんだからそこは地を這うようにくればもっと早いのではないだろうか?

まあ、でも。


「かわいいな」


「どうしたの?」


つい、リベルトを見てしまう。

いつも一生懸命で俺に付いて来ようとする姿が似ていて、うん、嫌いじゃない。


「ごめんな。ほら、乗れ」


俺はそれを肩に乗せる。

すると俺の顔に頬ずりしながら体を首に巻き付ける。

ただ、長さが足らなくてギリギリ一周できる程度だった。


「それが兄さまのポーレルなんだね! なんて名前なの?」


「こいつは」


そう言えば名前がまだだったな。

何も考えていなかったが、そうだな。

前世ではこうなって欲しいものの名前を与えていたな。

そう言えば、神父様が小竜かもとか言っていたか。


「ないな」


とてもドラゴンとかの親戚には見えないな。

でも、目標は大きく持った方がいいだろう。

胴が長いし竜ではなく龍か。


「青龍、うーん。でも、龍じゃないから、セイなんてどうだ?」



きゅー!


うん、喜んでくれているみたいだ。

じゃあ、改めて。


「セイ、よろしくな」


「セイ、兄さまをよろしくね」


きゅー (^^ゞ


「その子がディックのポーレルなのね」


母様はセイの頭をやさしく撫でる。

そう言えば母のポーレルって見たことないな。


「大事にしなさい」


そう言えば母は前に騎士団所属していたとか。

もしかしたら、その時に。


「はい」


母の言葉に俺は頷いた。


俺は母とリベルトと別れて家に帰ってきていた。

リベルトたちはこの後買い物に行くとか言っていた。

母の買い物は長い為、俺達兄弟は一緒に町に行きたがらない。

リベルトを除いてはだが。

リベルト曰く自分の服も買ってくれるのに何で一緒に行かないの? だそうだ。

残念だが、俺は服に興味がない。

最低限身嗜みが整っていればそれでいいのだ。

よって、苦痛でしかないのだが、今回の祝福の儀は親の同伴が必要だった。

もしかしたら、苦行が待っているのではないかと思っていたが、家を出る前に父に俺だけは早く戻ってくるように言われたのだった。


父の書斎の前についてふと気づいた。

前世では親父とは仲が良く子供の頃はキャッチボールとかで遊んだし、大人になるとお互い好きな酒を交わしたりしていた。

だが、今の父は忙しいのもあるが子供とあまりコミュニケーションをとるような人ではなかった。

そんな人から呼び出されるなんて。

しかも、祝福の儀が終わってすぐだ。

何かあるかもと嫌な想像をしてしまう。


「母についていった方が、良かったか?」


でも、死ぬようなことは無いだろう。


俺は父の書斎の扉をノックする。

しばらくすると、「入れ」と一言返ってきたのだった。


「失礼します」


中に入ると父が忙しそうに書類整理していた。

その横の木の置物の上に父のポーレルである火の鳥がとまっていた。

鷲のような見た目で、とてもかっこいい。

見たことは無いが全身に炎を纏い相手に攻撃するんだとか。


「待たせたな」


書類仕事がひと段落付いたのか、持っていたペンを置いて顔を机から俺に向ける。

向けられる父の顔は険しいままだった。

母曰く笑顔が下手な人らしいのだが、この人の子供を十年やっているがいまだになれない。

恐怖の方が勝ってしまう。

それに、父には小言は言われても、褒められたことなど一度もなかった。


さて、今回は鬼が出るか蛇が出るか。


「単刀直入に言う。お前にはある物を届けてほしい」


「かしこまりました」


「内容は聞かないのか?」


正直に言えば気になるが、聞かない方が身のためだ。

この世界でも郵便や配達は業者に頼めばやってくれる。

もし、大事なものを運ぶとしてもお抱えの騎士に頼むだろう。

アルファサーフ家は落ちぶれても伯爵家だ。

金は無くても少なくない騎士を雇っている。

そいつらに頼めばいいのだ。

それをしないという事は、俺が配達しに行くことに意味がある場合が大きい。

そうなると貴族の面倒な面子の話だ。

つまりは、アルファサーフ家の者がそれをもって行くことに意味がある。

そう言った内容なのだろう。


「なんとなくは察しましたので」


兄たちも今は王都の学校に通っている。

実家に戻ってきて、配達して、王都に戻ってとしていたらせっかくの長期休暇も全く休まらないだろう。

因みにアルファサーフ領から王都まで帰って来ようとすると、馬車を使っても一月はかかる。

行って帰ってで二月掛かるから兄たちは長期休暇でも実家には戻ってこない。

そして、実家にいるのが俺とリベルトだがリベルトは祝福の儀の前だ。

身体も他の同世代と比べると小さい。


「俺が一番適任なのでしょう」


「私が行ってもいいのだが」


「ご冗談を。北部で魔物の被害が多発していると聞いています。騎士を派遣してもあまりいい知らせがないところを見ると、父が現場に行かないといけないのでは?」


「そこまで分かっているならよい」


父は机の中から小包を取り出す。

外からは何が入っているのか分からないな。

手渡されるが、この小さな体では両手で持たないと持てないほどの大きいが、大きさの割に軽い。

でも、中の物が動く様子はない。

そう言えば。


「どこに運べばよろしいですか?」


「オメルガービ公爵家だ」


たしか四公爵家の一つでこの王国の西側に大きな領地を持つ大貴族だったか。

それに、アルファサーフ家の寄親でもある。

万が一にも俺が粗相してしまったら。

そう思うと急に悪寒が。

今からでも父に行ってもらうか?

いや、先ほども言った通り領地の問題もある。


「謹んでお受けいたします」


「頼んだぞ」


オメルガービ公爵領は王都よりの土地だ。

往復で一月以上かかるだろう。

俺の入学がもう一月ない。


「これが終わり次第王都に向かえばいいでしょうか?」


「そう、だな。そうなる」


俺も入学すれば用事もなしに長期休暇ですらここに戻ってこなくなる。

少し寂しくなるな。


「それでは準備もありますので」


「ちょっと待て」


扉を開けようとした時だった。

父に呼び止められる。

父は俺の近くにまで来ると俺の首に巻き着いていたセイに手を伸ばす。

そして、母のようにやさしく頭をなでるのだった。

静かにしていると思ったらいつのまにか寝ていたようだ。

撫でられている間も小さな寝息を立てている。


「このポーレルはお前の望みにかなったものだったか?」


「俺としてはもっとかっこいいのがよかったです」


本当は父のポーレルみたいななのがよかった。

昔を知る母も父は幼小学校の頃から女の子たちから一目置かれていたと言っていた。

俺もそうなればと思っていたのだが。


「そうか」


「でも」


そうだな。


「こいつでよかったと思います」


「昔ポーレルを研究していたものが言っていた。ポーレルは契約者が望んだものよりも契約者に適合率が高い物が選ばれるらしい。だから、自分の望んだポーレルでなくても契約者は一定以上の愛情を持ってしまうのだと」


父は手を放すと同時にセイが目を覚ます。


「随分珍しいポーレルだな。そのタイプのポーレルは見たことが無い。ただ、上昇志向の強いお前のポーレルだ。存在進化の可能性もある」


「ソンザイシンカですか?」


初めて聞く言葉だ。


「ポーレルと自信を高めれば可能性はあるだろう。まずはこの子と貰ったスキルがあるはずだ。それを知りなさい」


「分かりました」







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