若者言葉、乱れと取るか変化と取るか
あらすじにも書きましたが、作者には特定の誰かや世代を貶める意図はありません。
羽より軽い気持ちでお読み下さい。
若者言葉の流行り廃りとは不思議なもので、すぐに使われなくなるものもあれば広い世代に広まるものもある。
二十年位前だろうか──
私が学生の時に「若者の言葉の乱れ」が問題視された。
いつの世も似たような警鐘を鳴らされる物なのだろうが、とにかく当時は「ゆとり世代」や「ギャル語」への当たりが厳しかったように思う。
「自分達は普通に喋ってるだけなのに」
そんな考えの同年代は多かった筈だ。
だがしかし、当時の私や友人達の会話を思い返してみると、なるほど確かに──
そう言わざるを得ない程酷いものであった。
「(雑誌を広げて)これマジヤバくね!?」
「すご、マジヤバい! ウケるー!」
「これマジ!? ヤベー!」
……こんな具合だ。
ヤバいのはその語彙力である。
そりゃ周りの大人達も疑問符を浮かべては若者の頭の心配をし、未来を不安視するだろう。
だがそんなヤバい奴らでも年を取れば社会人となり、ヤバさは次世代へバトンタッチされるのだ。
◇
体感で一年程前だろうか。
ある日職場の更衣室で、大学生のバイトの女の子達がスマホで○○(男性アイドル)の画像を見て盛り上がっていた。
A「これ見てヤバくない!?」
B「えヤバ! エモい!」
C「エモー! ヤバー!」
A「推せるしょ!? ヤバいよね」
B「推せる推せる。これはエモいわ」
C「マジヤバいねー。エモみがえぐいわ」
話し言葉なので文字にすると違和感があるかもしれないが、そこはリアルな日常として想像して頂きたい。
A「彩葉さんも見て下さいよぉ。うち○○布教中なんで」
私「おう。(画像を見て)おー確かにカッケーね。オーラやべぇわ(適当)」
A「パネぇしょ!? ○○おねしゃす!」
正直好みでは無かったのだが、私は「いーもん見して貰ったわー」と笑顔で返してパートのおばさま二人と更衣室を後にした。
せめて私があと十五年若ければあのハイテンションのノリに付いていけたかもしれないのに……と少し寂しく思っていると、おばさま二人(六十代半ばと五十代後半)が苦笑していた。
「若い子の言ってる事って難しいわねぇ」
「ねぇ。言葉は少ないのに伝わってるのが不思議~」
「ヤバいとエモいしか分からなかったけど、何がどうヤバいのか何一つ分かんなかったわー」
だろうな、というのが率直な感想である。
私も「何が」「どう」ヤバくて、彼女達にとって「どれ程」エモいのか、厳密には理解していないのだ。
それこそ会話の流れやその場の雰囲気、言葉の調子、相手と自分の微妙な感覚の擦り合わせで成立しているようなものである。
きっと彼女達はそんな小難しい事などいちいち考えて喋ってはいないのだろうが──
この些細すぎる日常の出来事は、私の脳内にある「いつか使えるかもしれないネタ引き出し」にソッとしまわれ、そのまま忘れ去られていった。
◇
そしてやはり体感で半年位前の事。
同じく更衣室で、上記とは別の女の子達(十代~二十代前半)がお喋りをしている所に居合わせた。
A「マジあいつピの話しかしねーもん」
B「それな」
C「うざぁ~。△△リアコとか言ってた癖によぉ~」
A&D「「それな」」
キャラキャラと笑う彼女達。
話題は尽きないのか、話はコロコロと変わっていく。
A「そいや□□が飲み行って**(芸能人)似のイケメンと会ったって」
C「いーなー」
D「あ、それEさん(**のファン)には言わない方が良いよー」
B「地雷?」
D「地雷」
着替えが済んだ私はさっさと更衣室を出た。
そのすぐ後にパートのおばさま(六十代後半)も出てきて、やはり困惑したような笑顔で話しかけてきた。
「若い子の話って難しいのねぇ。早くて付いていけないわ~」
前触れなく話題が変わるのは年代問わずだと思うが、確かに耳慣れない単語が飛び交っているとより早く感じるのかもしれない。
更衣室で何度か出てきた言葉が気になったのか、「てぇてぇって何?」と純粋な眼差しで聞いてくるおばさまにひっそりと癒されたのは秘密である。
さて、若者言葉の移り変わりはとにかく早い。
筆を起こすのに時間が掛かってしまった為、この話が投稿される頃には彼女達の言葉はもう古のものとなっている事だろう。
私がいつまでなろうコンテンツに居続けるかは不明だが、五年後、十年後にこの話を読み返した時にどう感じるかが楽しみである。
終始とりとめのない話になってしまって申し訳ない限りだが、これ以上書ける事も無いのでこの辺で締めようと思う。
千"ゃぁま†=ネ☆ ノヾィノヾィ←←←
(※どこかの誰かが「ギャル文字ってもはや忍者文字」と言ってたらしいが、ホント「それな」である)
「マ?」と「り」がもう古いと聞いて少し驚きました。
結構便利そうなのに廃れるんだなぁ……