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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
出会いそして覚悟
6/20

鎧の青年

崩れ行く世界に秩序の線を引く・・・・。(物語には一切関係ありません)

魔石ギルドを目指し、街を出ると遠くに魔王のダンジョンが見える。遠くから見るのはこれが初めてで、あまり高い建物ではないことを改めて実感する。そして、魔王に負けたあの瞬間を思い出す。今もカリンは無事なのだろうか。目的地に近づくと鎧を着た青年の怒鳴り声が聞こえてくる。


「娘を救わんが為の討伐隊ではないのか!何故先に進まぬ!」

「だから何度も言っただろう。剣が溶けるんだよ。進めっこないんだよ」

青年より背が低い男が宥める様に言う。それを聞くと青年は少し落ち着きを取り戻した。そのように見えたのは数秒だけで、青年は唐突に岩を殴りつける。こればっかりは初めてだったのか、目の前の男が膝を笑わせている。


「私は抜けさせてもらう」

そう青年は男を睨みつけながら言い、魔石ギルドの中へと入っていく。男は青年が中に入ると膝をつき大きなため息を付いていた。俺たちも続いて中に入る。以前来たときは物販とギルドの窓口だけだったが、隣に大きな掲示板を挟んで魔王討伐隊の窓口ができている。物販に目をやると、魔石の粉が売っているようだった。


「魔石の粉を買ってくる。そこの掲示板でも見て待っててくれ」

ショーンにそういうと、俺は物販の列に並ぶ。列の隙間から商品を覗いていると、魔石の値段がやけに安かった。今までの半分程度の値段だ。それでも高いに違いないが、ヒュームにあれだけ持って行かれたのだ。安いに越したことはない。それに加えて、やけに高いものもいくつか追加されている。”誰でも簡単魔物退治”という謳い文句が目に留まった。なんと、投げつけると燃えるらしい。後で、ショーンにでも聞いてみよう。


「魔石の粉をくれ」

そういうと、店員が小さな紙を渡してくる。

「お名前を頂戴しております」

俺が名前を書いて渡すと、店員は名前を確かめ金額を確認してくる。ヒュームから貰った袋のサイズで2万円だった。ヒュームに作らせた方が安上がりだが、売り物にするには原価をしっかりさせておかないといけない。貰いものだけでは商売は成り立たないのだ。

「ありがとう」

俺はお金を払い、物販を後にすると掲示板の周りがざわついている。掲示板の前のショーンを数歩下がって先ほどの青年がずっとショーンのことを見ている。


「良さそうな人はいたか」

そうショーンに声を掛けると少し考えてから言う

「えぇ、板金ギルドに所属している方で、魔王討伐を目的にしているようです。拾得物に所有権を主張しない代わりに、工房と衣食住が契約の条件だそうです」

板金ギルドなら盾や鎧を作っているので、戦力としては十分だが条件がやや厳しいな。

「工房なんて用意する金はさすがに今は持ち合わせてない」

そうショーンに伝えると、笑顔で答えてくれる。

「この件に関しては幾らでも使って構わないとヒューム様から承っております。工房ぐらいなら何とかなるでしょう。工房に住んでいただくとして、生活費はご自身で稼いでいただければ十分かと」

工房が大丈夫なら、是非もない。

「なら、そいつに頼むとしよう。どの張り紙だ?」

そういい、張り紙を探しているとショーンが肩を叩く。すでに剥がしてあるのかと思い、そちらを振り向くとショーンの真後ろに先ほどの青年が立っていた。ショーンより頭2つは大きく体の幅も一回りは違う。


「ポールだ。歳は25。正義の為にこの盾でそなたらを守ろう」

そういうと手をかざし、盾を取り出す。その盾はショーンを軽く覆い隠せる程の大きさで、床につけるとポールの肩が少しだけ見える位だった。

「それは鉄製か」

「もちろんだ」

俺が聞くと自慢げにポールが答えてくれる。

「使い物になりませんね」

ショーンが全くオブラートに包まずに伝える。

「なんだと!?」

「事実です」

すかさずショーンが追い打ちを掛ける。

「貴様、我の最高作品であるこの盾を愚弄するか!」

「まぁ、落ち着け。その盾はお前が作ったのか?」

ポールが殴りかかりそうだったのですかさず質問する。

「もちろんだ。持ってみるか?」

「いや、それはいい。盾が作れるなら作ってほしい物がある。この後は暇か?」

そうポールに聞くと、何やら不安な顔をしてしばらく固まったのちに口を開く。


「家を出てきたので何か作ってほしいのなら工房が先に必要だ」

工房が先か。とすると、今日中に作るのは難しいだろうか。そう考えているとショーンが鞄から申請書を取り出す。

「工房については先ほどヒューム様に連絡したため、夕方には手配できるでしょう。とりあえずサインをお願い致します」

ポールの顔が輝きいそいそと名前を書いていく。

「では申請はショーンに任せて、俺たちは買い物に行くとしよう。そういえばショーンは武器や鎧は使わないのか?」

ポールが名前を書き終わったのを確認して、申請書を丸めながら答えてくれる。

「ロバート。私は魔法師です。ちょうどポールさんがいるので守ってもらいながら魔法を使えます」

魔法で思い出したのでついでに聞いておく。

「高価だったが、投げつけると敵が燃えると謳っていた商品があった。あれか?」

「程度は違いますが、同じようなものです」

ポールを俺の家に連れていくので、俺の家の場所をショーンに伝える。そこで気が付く。

「ヒュームにどうやって連絡を取ったんだ?」

「国家機密です」

魔法師ギルドは国家機密の塊なようだ。

俺とポールは買い物をしてから家に帰った。

買い物の内容も国家機密です。

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