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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
出会いそして覚悟
3/20

秘密の実験

世界が崩れる予感がします。

魔法師ギルドの二人に別れを告げ俺は家に向かっていく。歩きながら、二人との会話を思い返していた。ヒュームから貰った粉の使いみちを考えていると、ちょうど日が傾き始め、家についた。


「ただいま」

そう声を掛ても返事は帰ってこず、金槌で鉄を叩く音が帰ってくる。父さんは結局休まない事にしたらしい。様子を見ているとちょうど熔かしている最中の鉄があった。


「帰ってきてたのか」

じっと熔けていく鉄を眺めてたら、父さんが剣を作り終えて声を掛けてきた。

「魔石の粉を貰ったんだ。溶けるかな?」父さんは怪しい物を見る目で俺を見たが、魔石の粉を見ると納得した様に頷いた。


「口止め料か」

「貰っただけだ」

そうかと言いながら袋に手をツッコミ魔石の粉を摘みだすと、溶けている鉄に振りかける。粉が落ちた場所からボッと小さく火が上がるが、魔石の粉は見る影もない。


「今日はこの材料を使ったら最後にしようと思ってたんだ。明日試すより今日の方が良いだろう」

そう言って父さんはもう一摘み溶かしていく。すると、先程より大きく火が上がった。どうやら火傷はしていないようだが、熱かったらしい。水に手を突っ込んでいる。


「掃除が面倒だから大量に入れるのはまた今度だな」

そう言いながら剣の型に流し込んでいく。いつもと比べて剣が冷めるのが遅い気がするが、固まってきたので水に入れ完全に冷やす。手に取って振ってみても、鳴らしてみてもいつもの鉄と変わらなかった。だが、溶けたらやってみたい事があった。


ヒュームから貰った魔法陣の紙を柄になる場所に巻き、火傷をしないように鍛冶用のグローブを手にはめ、剣を持つ。そして、剣が燃えるイメージをする。


ゴウッという音を立て剣が燃え盛る。炎が消えるイメージをすれば直ぐに消えた。衛兵の公開入試で見たことのある、どの剣よりも燃えていた。手を開き、魔法陣の紙を見ると燃えずに元のままである。鞄の魔石を確認すると風前の灯火だった。慌てて予備の魔石と交換する。2,3日は使えそうにない。


「ロバートは一日で魔法師になったのか?」

「いや、この魔法陣という円形の絵を教えてもらっただけだ。授業料は一万円だ」

「一万円か・・・お父さんの小遣い3ヶ月分か・・・」

父はそう嘆くと悶々としていた。

「で、そいつはどうする。納品するのか?」

「いや、どうも魔法師ギルドの魔石は曰く付きらしい。売るならちゃんとした所から買う必要がある」

そう答えると父が不思議な顔をして聞いてくる。


「魔石の粉なんて売ってたか?」

「爆破して粉々にするらしい」

「爆破!?」

流石に父さんも驚いたらしい。魔石は拳大の大きさだと5万円はする。少なくとも一年分の小遣いが爆破されるのだ。正気の沙汰ではない。そもそも、魔石は収納すれば使い回せるからそんなに量は必要ないのだ。


「そう言えば、爆破の仕方を聞き忘れたな。今度行くときに、お披露目がてら聴きに行くとしよう」

そう独り言を言っていると、立ち直った父さんが聞いてくる。

「明日は行かないのか?」

「明日からはギルドの製作があるんだろ?」

そう答えると、父は満面の笑顔で説明してくれる。


「ご飯食べたあとに今日までの分を納めに、ギルドに行ったんだ。そうしたら、剣の在庫が揃ったとかで今日の分で終わりだったんだ。しかも、お金は予定の分全部貰えたんだ」

「それなら、どうしてさっきまで剣を作ってたんだ?」

俺が剣を研ぎ、柄や鍔を嵌めながら聞くと真面目な顔で父さんは答える。


「いや、こんだけ急に剣を沢山作らされたからな。作れる分だけ作っておこうと思ってな。もう、徹夜は御免だからな。明日は鉱石を取りに行く予定だ」

「そうか、それならついでにあの溶けない銀色の鉱石も取ってきて」

クロム程度ではまだ、足りない気がするがそれ以上の物は今は溶かせる気がしない。


「それは良いが伸びてるのがあるかは分からないぞ」

「小さいので大丈夫。溶かそうと思ってるから。二本分位お願い」

父は一度不思議そうな顔をしたが、納得したようで手を叩いて了承した。


「爆破するんだな」

流石に無理だと思うが、聞くだけ聞いてみよう。俺は剣を収納すると、ついでに魔法の粉も仕舞っておく。


窓を見ると辺りはすっかり暗くなっており、母さんが2階から声を掛けてくる。

「ご飯出来たわよー」

そして、3人でテーブルを囲むと母さんが話を始める。

「そう言えば、ギルド長のお弟子さんの家が火事になったらしいわよ」

「鍛冶屋で火事なんて珍しくは無いがどうした」

父さんがそう聞くと、わざわざ声を潜めて母さんが言う。

「なんでも、溶かした鉄に粉を入れたら爆発したらしいのよ」

お父さんが顎を鳴らして怯えている。見られていたに違いない。分量は間違えると大事に至ると心に置いておこう。


「それにしても、なんで粉なんて入れたんだろうな」

立ち直った父さんが母さんに聞く。

「なんでも、国のお偉いさんに頼まれたらしいわよ」

父さんは遠い目をしながら、ご飯を食べていた。


「それじゃあ、俺は寝るよ。おやすみ」

一足先にご飯を食べ終わったので、寝ることにした。

「明日はどうするの?」

「もう一度魔法師ギルドに行くよ。父さんが大丈夫って言ってたから」

そう言うと母さんが父さんを訝しむ目で見た。これは、まだ仕事が終わった事を伝えていなかったに違いない。すまなかった。


そう思いながら3階へと上がって行き、着替えると床についた。

果たして父さんのお小遣いの額は如何に!?


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