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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
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図書館

7ヶ月の空き・・・だとっ!

この国には図書館がある。歴史書に於いては国の成り立ちからただの一度も欠けることなく受け継がれている。代々の国王は本好きが多く、次の代に意志を託すのに物書きに物語を書かせるくらいには好きらしい。歴史書には戦争の記述はなく、とても平和な国だ。なのに、武器や防具を作っているのは警備の為の装備や狩猟の為だと父は言っていた。その割には魔法の剣を作ったりと何かと強そうなものを作ろうとするのは、漢の性というものらしい。


そんな漢の性の塊である武器の図鑑が今回のお目当てだ。副目標は沢山の武器が出てくる小説だ。とにかく色んなことを学んでおきたい。


図書館は工房の向こう側にあるため、広場からの帰り道で今日は往復をしたことになる。この間を走れるようになるが当面の目標だ。広場にはタピオカミルクティー以外にも食料品から雑貨に家具に至るまで、一通りのものは売っている。決して毎日タピオカミルクティーが食べられるようにこのルートを選んだわけではない。


工房の前に着くと鎧を脱いで、ポールと別れる。鎧がないと体がとても楽で、ついつい図書館まで走ってしまった。扉の前で息を荒げていると怪しい人と思われてしまうので、深呼吸をして呼吸を整える。


「魔石をお預かりします」

受付に言われてから割とまずい状況に気が付いた。今つけている指輪は明らかに魔石の色をしている。しかし、この指輪は現状俺たちしかもっていないし盗まれたら今後の攻略に支障が出る。だが、この時世に魔石を持たずに外を出歩くような原始的な生活をしているのは子供くらいだ。いや、俺もまだ子供だがそういう事ではない。魔石入れのカバンを持っていない。図書館では盗難対策の為に魔石を預け、帰りに返還してもらう仕組みになっている。


「今日は私が彼の分も持っているので、こちらでよろしくお願いします」

受付の前で固まっていると、ショーンが後ろから来て俺の分の魔石も出してくれる。

「かしこまりました。こちらにご記名をよろしくお願いします」

ショーンは俺の分の名前も書くと手を引いて中に入れてくれる。


「噂になる前に止めることができて、一安心です。」

館内地図の前まで来たところでショーンが言う。

「すぐに指輪を外さなかったのは良い判断です。ヒューム様にも見習っていただきたいものです。それでは、私は料理本の辺りにいますので出るときに声を掛けてくださいね」

そういうと、お礼を言う前に歩いて行ってしまった。帰りにお礼を言っておこう。


気を取り直して館内地図に書かれている武器のコーナーを目指す。図鑑を探すが、そこにはなかった。誰かが見ているのだろう。ということで、今日は物語を探していくとしよう。学校に通っていた頃によく読んだ本が並んでいて懐かしく感じる。というのも、この国では本好きの国王のせいで学生は週に1冊本を読むことが義務になっている。しかも、その本に対する理解度のテストも毎回あった。不合格を何回か取ると国に呼び出されて読書の素晴らしさを1日かけて学ぶ研修に参加させられる、厳しい制度だった。そのせいか、この国の図書館利用者は伸び悩んでいるらしい。


そんなことを思い出しながら背表紙を見ていたが、挿し絵だけ探せばでいいのではないかと思った俺は左上から順に本をめくり始める。


十冊ほど見終わったが、これといった武器は見つけられなかった。こういう時は司書さんに頼むのが一番早くすむ。その為にも言い訳が必要だが、この世にないものを作りたいとかいう少し恥ずかしいのはやめておきたいものだ。となると、小説の参考にしたいからというのが妥当だろうか。小説の参考といえば、作家支援コーナーがあるな。


国王は物語が大好きだ。だから作家を国のお金を使って育てている。むしろ、育てるだけではなく養っている。小説家になれば人生安泰といわれるほど優遇されている。が、生活が保障されているだけで自由に使えるお金は殆どないらしい。家の仕事があればそっちを手伝うほうがお金が貰えるというのが今の国の状況だ。


俺は小説家の皆さんに感謝の念を抱きながら作家支援コーナー来ると、『ファンタジー武器大全』なるものを見つけた。ページをめくると武器の挿絵とその説明が書いてあり、これだ!と感じて机に持っていく。


しばらく、ページをめくって見ていたが過度な装飾を施しているため実現不可能だと思われているものだけであまり実用的な物は見当たらなかった。いや、格好がいいので見ているだけでワクワクするのでこれはこれで良い発見かもしれない。棒を作る作業に飽きてきたらこんなのも実際に作ってみるのもいいかもしれない。それと、今まで弓には疎かったため知らなかったが、クロスボウという武器が存在するらしい。引き金ではなく、留め具そのものを無くしてしまえば仕組みもそんなに難しくなさそうなので帰ったら早速作ってみよう。


ショーンを呼びに料理本のコーナーへ行こうとすると、その手前の机でとても分厚い本を読んでいるショーンを見つけた。

「それは料理の本なのか」

そう聞くとショーンは本を閉じながら答えてくれる。

「もちろんそうですよ。色々応用が利くのでこの本は便利に使わせていただいてます」

どうやら、俺が思う料理とは別のものらしい。料理本コーナーに本を戻しに行くショーンを見ながら、今日の晩御飯を楽しみに妄想していた。

料理は色々と応用が利きますよね

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