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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
18/20

甘いプロテイン

デートですよデート!

ポールと工房を後にして身体が慣れるまでのしばらくの間、俺たちは何も話さずにただ黙々と歩いていた。ポールの顔は何故か自信に満ち満ちていて、どこからそんなものがやってくるのか不思議でならなかった。

「ポールはいつから鍛錬を続けているんだ?」

「家が鎧を作っているのでな、子供用の鎧を売るために物心ついた時には鎧を着させられていた」

幼いころから鍛えると身長が伸びないと噂で聞いたことがあるが、そんなことはないようだ。気にせずに鍛錬するとしよう。そう思い、少しだけペースを上げる。


「そう、焦ることもないだろう。我が主と同じころではそんなもの着ることも出来なかっただろう。主は歳の割には努力をしている。誇りたまえ」

歳の割にはと言われると、あまり嬉しくないのはどうしてだろう。目の前に規格外が存在するとどうしても手放しに喜ぶことができない。俺は息を荒げながら、そのペースを維持して歩き続ける。ポールは少しだけ困ったような顔をしてついてくる。無心で歩いていると、ポールが肩を叩く。振り向くとアイスクリームを二つ持っていた。その一つを突き出してくるので、ありがたくいただく。


「少し休憩にしよう」

そういうと、ポールは鎧を収納しながら広場の方へ歩いていく。ちょうどベンチがあったので二人で座ると、少しミキッという音がした。ポールもいるので一度収納することにして、鎧を脱ぐと何故かポールが嬉しそうにする。

「喉も乾いたろう。暫く待っておれ」

そういうと、ポールは飲み物を買いに行く。そういえば、ポールとはちゃんと話したことはないかもしれない。何故かショーンとは仲が悪いようだが、まぁ酒癖でも悪いのだろう。知らないような仲ではなさそうだったからな。少し気になりはするが、敢えて突っ込むこともないだろう。それよりも、今は武器の形について考えるとしよう。後で図書館に行くのもいいかもしれない。


「待たせたな」

そういいながら、渡してきたのは何やら大きいカップにミルクティーが入っていた。スプーンが容器に取り付けられていて、かき混ぜると底に溜まっていた白い大きな粒々が水中を漂う。

「これはなんだ・・・」

つい口からこぼれてしまった言葉を、ポールは待っていたかのようにニヤニヤしながら答える。

「タピオカミルクティーだっ」

俺はスプーンで粒々を掬い、もちゃもちゃと食べる。単体でも食べられるように味付けがしてあるが、ミルクティーと一緒に食べるととてもおいしい。

「実はこの粒々はたんぱく質でできていて、筋肉にもいいのだ。我はほぼ毎日これを食べている」

辺りを見渡してこのタピオカミルクティーを買ったと思われる所を探す。すると、女性たちが列を作って待っていた。男性もちらほら見えるが圧倒的に女性が多い。


「あの列に並んだのか・・・」

「慣れると大したことない」

一応、慣れるまでの間があったことに安心した。それにしてもおいしい。しかも筋肉にもいいと言われたら食べないわけにはいかない。しかし、さすがにあれに並ぶのはつらい。女性がたくさんいる所でフードを被るわけにもいくまい。となれば答えは一つ。


「明日からもよろしく頼む」

「任せておけ」

ポールはそれは潔いほどの笑顔で言葉を返してくる。そうか、もうその境地にまで達しているのだな。俺はこの男に果たして追いつくことができるのだろうか。不安で仕方がないが、今できることはしていたい。俺はタピオカミルクティーを飲み切ると、ポールにお願いをする。


「槍を見せてくれないか」

「む?いいぞ」

そういうと、槍を床に出してくれる。俺はそれを持ち上げると腕がプルプルした。自分の力のなさに涙が出そうになるが、ぐっとこらえて形をよく見る。ポールサイズのゴブリンを一撃で倒せるそれの穂先は、俺の拳ほどの大きさがあった。


「少し突きをしてみてくれないか」

そうお願いをするとポールは快く引き受けてくれて、俺から槍を受け取りシュッと一突きする。それは思っていたよりもずっと早く、風で土埃が舞うほどであった。自分の体でこれを再現するのは当分の間無理だろう。自分の力ではなくて弓のようなものが必要かもしれない。そうして考えに耽っていると、ポールが槍を渡そうとしてくるので手を振り、仕舞うようにお願いする。


「着せてくれ」

俺は鎧を取り出すとポールに着せてくれるようにお願いする。相変わらずとても重たいが、これにも少しづつだけ慣れてきた。

「もう行くのか?」

「図書館に寄ろうと思っていてな。新しい武器の開発の手掛かりが欲しいのだ。今のところ最有力候補は篭手型の盾や剣に変形できる武器だな」

ポールは新しい鎧を作っていたが、まだしばらく時間はあるだろうからゆっくり試作を重ねたいところだ。ただ金属を溶かして棒を作るだけでいい。必要なのは材料とイメージ力のみだ。あまり読まないが物語を読むのもいいかもしれない。ポールが器を返してこっちに戻ってくると、俺たちは図書館に向かった。

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