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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
17/20

重たい金属

俺は重い足を動かして、街を歩いていく。それにしてもこの鎧は見た目は軽そうなのに、重すぎる。それでも、この先武器を持った相手とまともに戦うなら最低でもこれくらいは着ないと、怖くて敵わない。革の鎧が鉄並の硬度になってくれれば良いのにと想いながら歩を進めていく。


重さにも慣れてきて、意識せずに歩けるようになってきた。剣が伸び縮みできるなら、普段は短くしていれば腕の負担は減らせるだろうか。いっその事篭手を二重にするように、剣を変形させておくのはどうだろう。


そんな事を考えていると、ふと思いつく。変形させたあとに手を離すとどうなるのだろう。折れた剣先はナイフに戻らず、ペラペラのままだった。なら、手頃な形に成形して研がなくても剣として使えるのではないか。しばらくは変形のイメージの練習が主になりそうだ。


そうして、疲れてきたので工房に帰ってくるとショーンがお水をくれる。

「あともう少し、動かないでいる時の鍛錬をしましょう」

工房を見るとヒュームが窯の前で考え事をしていた。それはそうと、ショーンにお願いして変形の魔法陣を貰った。


早速、手頃なナイフの柄に貼り付け盾の形にする。そして、手を離すとそれはナイフには戻らなかった。今度は、鋸をイメージする。ギザギザの刃をしっかりと研がれたイメージ通りの物が出来上がる。よし、これからは棒を量産する事にしよう。自分の存在価値を否定された気がしなくもないが、元より俺よりできる鍛冶師など幾らでもいる。考えないことにしよう。


そうしていると、ポールが帰ってくる。それを見るとヒュームが窯に手招きする。筒を指差しながら一言告げると、ポールが持ち上げようとする。しかし、それは持ち上がらなかった。


「何だこれは。持ち上げられぬ」

何度も試していたが、持ち上げられないようだ。ヒュームはそれを見ると諦めたように、砂時計に蓋をして加熱を止める。そして、蓋を取り出すと冷やして固め始めた。


まさか。誰もがそう思った。しかし、ヒュームは躊躇わなかった。金槌を取り出すと、筒を思い切り叩き割る。ゴロゴロと筒だったものが剥がれ落ちていくと、中からは白く光る金属の塊が出てきた。ヒュームはグローブでそれを触ると何度か変形させて綺麗な円柱にする。そうすると、収納して何事もなかったように設計図のような物を眺める。


その光景に、俺達は暫らく無言で立ち尽くすしか無かった。


気づくと、日が暮れていてショーンが階段を降りてきて夕食時と告げる。衝撃過ぎて小一時間は過ぎたらしい。俺達が席に着くと、遅れてポールが階段を昇ってくる。一際頑丈そうな椅子を取り出すと、席に着く。


「何を作ってたんだ?」

気になって仕方が無いので食べながら聞く事にした。

「プラチナの塊だ。重過ぎて武器には出来ないが動かせないなら、変形させて動かす」

なるほど、プラチナの剣は重いのか。

「そんなに重いならなんでわざわざ塊を作ったんだ?」

そのデメリットを越す何かがあるのだろう。

「魔力の伝播の速度が5倍は早い。つまり、変形が早い」

今までの速度でも十分な気がするのだが、いい事を聞いた。プラチナを入れる分軽い金属を使うことにしよう。軽い金属というと"アルミ"が出てくるが、武器として使うなら"チタン"だろうか。


クロムと同じで溶かせないため、そのまま剣にして使われることが多い。魔剣としては使えないらしく、獣狩りによく使われている。殆ど錆びないのも人気に一役買っている。値段が高いので贈り物としての使い道が主流だ。


クロムをベースにして、プラチナで重くなる分をチタンで相殺すると言う所か。溶かせるというのは中々どうして、便利だな。


「魔法の威力が上がる鉱石は無いのか?」

混ぜる材料を増やそうとして聞いてみた。

「今の所魔法の威力については魔石が断トツだ。丁度、今日蓋が来たから明日にでも試せ」

そう言いながら、ヒュームは俺の皿の肉を突いて食べる。情報に感謝するとしよう。そう思いながら、温かいスープを飲んで心を落ち着かせる。


「例えばだ、革の防具を堅くすることは出来ないのか」

肩と腰が痛くなってきていたので、楽な道がないものかと聞いてみる。

「面白い案だが、現状難しい。考えてみるが、鍛錬は続けておけ」

希望の道は僅かに残されるだけとなった。俺は入念にストレッチをして筋肉をほぐすと早めに就寝する。


目を覚ますと誰も寝ていなかった。あいつらは実は寝てないんじゃないだろうか。そんなことを考えながら下に降りるとショーンが声を掛ける。

「おはようございます。もう、お昼になりますが身体の調子はどうですか?」

俺が寝すぎているだけだった。

「たくさん寝たおかげで、痛みも殆どない。今日は何か買うものはあるか?」

これから街に出るのだから、ついでにお使いにでも行こうと思っていた。

「いえ、今日は特にありません。ありがとうございます」

何もないなら仕方がない。俺は食事を取ると1階に降りて、ポールを探す。身体で持つことはできるが、腕だけで持つことが出来ないため着ることが出来ない。


ポールにお願いすると、ひょいっと金網の鎧を着せてくれる。

「鍛錬に付き合おう」

そういうと、ポールも昨日椅子を壊した鎧を着て、一緒に外に出る。


新しい技術は常識を覆して

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