表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
14/20

新しい魔法

視界が白から黒へと変わると、俺は目を開ける。すると目の前にショーンがこちらを見て立っていた。部屋を見渡すと、地下1階のようだった。

「まさか、ロバートも乗ってくるとは思いませんでした」

ショーンがこちらを見ていると、少し離れた場所が突然光りだす。光りが消えると中から横になったポールが現れ、むくりと起き上がる。


「なんだ寝ていたんだ」

俺はショーンにそう聞くと、答えてくれる。

「このダンジョンは一定時間が経過すると眠くなります。そして、目を覚ますとここに来るようになっています」

眠るだけなら横になる必要はないのではないだろうか。

「とりあえず、今日は帰りましょう。やることが増えましたので、暫くは武具の開発になるでしょう」

そういいながらショーンはいそいそと上り階段へと向かっていく。俺は魔方陣が気になり、振り返ると看板が付いていた。


”次回はこちらから行くことができます。またのお越しをお待ちしております”


見なかったことにして、ショーンの後に続く。外に出ると既に夕暮れになっていた。工房に着くと、ショーンが勢いよく扉を開ける。1階にはヒュームの姿は見当たらず、3人揃って上の階に上がる。階段を上がっている最中に、いびきが聞こえたので、恐らく寝ているのだろう。

「起こしてきますので、お二人は水でも飲んでいてください。ヒューム様の分もお願いします」

そういうと、ショーンは急ぎ足で階段を上がっていく。ポールと二人で水を飲んで寛いでいると、上からドタバタと音がした。そうして現れたヒュームの髪の毛はボサボサだった。が、目がいつになくギラギラしていた。


「ご苦労だった。怪我もなく帰って来たのは喜ばしいことだ。特に土産を持って帰って来たのは良い事だ」

そういって、指輪をかざしたり嵌めたり外したりしながらいう。そうして、一通り確認したのちにヒュームはこぶし大の魔石を取り出す。それに指輪の黒い石を当てると、魔石の色がみるみる黒くなって行く。その逆に、指輪の石はその内に徐々に光りを灯し始める。魔石が真っ黒になると、指輪の石は淡い黄色に光っていた。


ヒュームは手の平を上に腕を出すと、その手に炎を出す。

「実に便利だ」

そういった後、炎を消すと指輪を外してショーンに返す。

「以前、魔石に限界以上の魔力を籠められるという話をしていたのは覚えているか」

そういえば、鉄の溶かし方の時に聞いた覚えがある。

「実は、その魔力を籠められる石にも色々と制限があった。しかし、これはそれを覆す。実に興味深い。とりあえず、指輪に魔力を移しながら話を聞いてくれ」

そういわれたので、ベルトの魔石を取り外すと指輪の石を当てる。それだけで魔石の色がどんどん黒くなっていくから不思議なものだ。


「まず、これまで魔石が大きければ魔力をそれだけ溜めることができた。現時点で最大限溜めたのがさっきの石だ。それさえもまだまだと言わんばかりの許容量に昂ぶりを抑えられない」

ヒュームは先ほどから解説を続けながら俺たちの周りをぐるぐると周っている。

「しかも、この金具!伸び縮みするではないか!なんと素晴らしい!そして!」

そういうと、ヒュームはクロムのナイフを取り出す。恐らく、魔石が混ざっていると思われ、淡い黄色に光っている。すると、ショーンがずっと見ていた魔方陣の紙を取り出して。剣身に張り付けると腕を突き出す。


「この魔方陣!素晴らしい!」

ヒュームがそう叫んだ瞬間、魔方陣の先の剣身が広がり片手用の盾の形を象る。それは実際の物よりはるかに薄かったが確かにその剣身は広がった。そして、ヒュームがもう一度叫ぶと元のナイフの形に戻る。

「こんな魔法!常識はずれにもほどがある!」


そういって高々と笑いながら、その顔は期待に満ちていた。俺は驚きながらも、これで盾も槍も使えるようになると考えると便利だと思っていた。そして、ほぼ無尽蔵に魔力が使えるとしたら先ほどのゴブリンの様に鎧に魔法を使うのもいいかもしれない。そう考えているとヒュームがナイフを長くて薄っぺらい剣にした。ペラペラさせて剣を振って遊んでいると、パキッと途中で剣が折れてコロンと床に落ちる。


ヒュームが慌てて元のナイフの形に戻す。しかし、それの中腹から先は無くなっていた。そして床に落ちたペラペラの剣はそのままだった。ヒュームは少し落ち込んだ様子だった。俺はそれを見て折れない大きさに留めておくのが大事だと学んだ。そうなると、もともと大きなものを作ってそれを小さくするのが無難だろうか。しかし、重すぎると振るのが難しくなってくる。ポールも同じように考え込んでいる様子だった。二人して悶々としていると、ヒュームがパンと手を叩く。


「腹が減ったろ、飯にしよう。魔王への道の第一歩だ。盛大に祝ってもらおうじゃないか」

そういわれると、腹が空いていることを自覚する。ダンジョンでは空腹なんて一度も感じなかったが、緊張がそうさせていたのだろうか。ヒュームのその言葉に釣られて皆で工房を後にする。


そうして、ヒュームに連れられて来たお店はカリンの親が切り盛りしている食事処だった。

ポキッ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ