表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
13/20

炎の魔物

その後、ゴブリンたちの装備は徐々にしっかりしたものになっていった。しかしショーンの矢や、クロムの炎の剣を防ぐことはできず、胸を一突きすると一撃で葬ることが出来た。途中、弓を持つゴブリンも出てきたが、出てきた端からショーンが倒していくので、矢がまともにこちらに来ることはなかった。


そうして、俺たちは問題になっていたと思われる地下10階に到着した。というのもドアに注意書きがしてあったからだ。


”高熱注意!”


意を決して俺たちは部屋の中に入って行く。すると、今回は部屋が真っ暗だった。


「魔王様に剣を向ける愚か者よ」


頭の中に直接声が響いてくる。


「その罪、死をもって償うがいい」


すると床に赤い炎が円状に立ち上り、部屋中を照らす。すると部屋そのものが徐々に明るくなり、向こう側が見えるようになると炎が消えた。中に一体のゴブリンが居た。しかし、その体はポールより大きく俺の背丈と同じくらいの大きさの剣を持っている。その剣は煌々と燃えており、俺たちが持つそれらによく似ていた。


防具を見てみると、俺より少なめであり肘と膝、胸にプレートがあるだけだった。しかし、それらはいずれも炎を纏っていた。


ショーンの方を見ると、ちょうどこちらを見ていたようで首を振ってくる。矢で一突きというわけには行かなそうだ。ポールは槍を仕舞い、盾を両手で持っていた。


そう話していると、ゴブリンは一足飛びにこちらに迫りポールを間合いに捉える。そして、剣を振り下ろすとガキィンという激しい金属音がする。そして直ぐに今度は横なぎに剣を振る。ポールがそれを地面に向けてやり過ごすと、ゴブリンは左手でポールを掴もうとする。


「今だ!」

ポールがそう言うと、俺はゴブリンの懐に向かって走り出す。以前とは違い足を乗っけても首には届かない。だからこそ狙うは一つ。俺は剣を凍らせながら、ゴブリンの懐に飛び込む。俺を掴もうと左腕を内側に動かそうとするが、その腕は動かなかった。


ショーンが左の前腕をつららで貫き、その穴から氷が広がり肘当ての近くまで侵食していた。肘当ての近くの氷は解け始めていて、長くは持ちそうにない。俺はありったけの力を籠めると、ゴブリンの腹の下から心臓めがけて剣を突き上げる。


「グギャァ!」


ゴブリンが痛みから叫びをあげると右手の剣を手放し、俺を捕まえようとする。一撃で倒せると思った俺は慌てて剣を抜こうとするが、思いっきり引っ張っても抜けなかった。俺は抜くのをあきらめて、炎を上げるように剣に魔力を籠めると剣と体の間から炎が溢れ出てきた。すると、ゴブリンは霧散した。


「冷や冷やしましたね」

ショーンがそういいながらこちらにやってきた。俺は死ななかった安心感から少しぼーっとしていた。

「行くぞ。先はまだ長い」

ポールがそう言うと、俺たちは続いて階段の方へ向かっていく。次の階に到着すると、いつもの木箱の左側、ドアの反対側に人一人分のスペースがあり魔方陣のような物が光っていた。その横に看板が付いていた。


”お疲れさまでした。お帰りはこちらになります”


「なんだこれは?」

俺とショーンが看板を読んでいるとポールが木箱を開けていた。木箱を覗くと少し輪が大きめの黒い石が嵌められた指輪が入っていた。俺は一つ取り、指に嵌めてみる。すると指輪が変形して俺の指にピッタリくっつく。外そうとすれば輪が緩み外すことができた。

「これ・・・は・・・・」

ショーンを見ると口をパクパクさせながら指輪を観察していた。


「こんなものもあったぞ」

ポールが木箱を物色していると、紙に書かれた魔方陣が出てくる。ショーンがすかさず取り上げる。

「我が見つけたのだぞ・・・・」

その言葉が聞こえないかのように、ショーンは目を輝かせながら紙に穴が開きそうなほど魔方陣を見る。俺とポールはとりあえず、ショーンがこっちの世界に帰ってくるまで雑談をすることにした。


「俺は指輪を買ったことが無いんだが、魔石ギルドにはこんな指輪も売っているのか?」

「我も見たことが無い。恐らく我らが初めてであろう。そうでなければ彼がこうなることもなかろう」

ショーンを指さしながらポールは言う。すると、彼は鎧を脱ぎ始めた。

「今日はここまでか」

ポールにそういうと肩を竦めながら答えてくれる。

「彼がいつ帰ってくるかもわからんし、そろそろ時間だからな」

ポールがそう言うと、ショーンはハッとしたように地面の魔方陣を見る。そしてメモを取り始めた。恐らく魔方陣を書いているのだろう。目が痛くならないのだろうか。そう思っていると、ショーンは一度頷き魔方陣に入る。すると魔方陣が光りだし、ショーンが見えなくなる。そして、光りが消えると彼はいなくなっていた。


「んなっ!?」

開いた口が塞がらないというのはこのことを言うのだろう。俺が声を掛けるまでポールはずっと口を開けたまま魔方陣の方を見ていた。それにしても不思議な魔方陣だ。ショーンが乗ったということは似たものを見たことがあったのだろうか。俺がおもむろに魔方陣に近づくとポールが声を上げる。

「そなたも行くのか!?」

乗るつもりはなかったが、そう言われると乗ってみたくなると思うのだから不思議だ。


「では、行ってくる」

俺は魔方陣の中に入る。先ほどと同じように光に包まれ、目を瞑っていても光りを感じ視界が赤色から真っ白に染まった。

ゴブリンだって武装したい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ