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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
11/20

ふしぎなからだ

叩かれれば痛いのです。

紫の霧が無くなると、後ろから風が抜けてくる。振り向くと来た時の上り階段が現れていた。反対側にも同じようにドアと同じ大きさの四角い空洞ができていた。壁の照明が下に向かっていることから下り階段だと思われる。


ポールがそれを確認すると、壁を背にしながら先ほどまで俺がいた場所に向かって歩き出す。先ほどのショーンの攻撃でゴブリンの動きが止まり膠着状態になっていた。


「このまま壁に沿って階段を降りる。魔石は下の階だ」

ポールと壁の間を保ちながら、ゴブリンを牽制しつつ階段へと向かっていく。ショーンと俺が階段を降り始め、部屋の中にポールだけになるとゴブリンたちが突然こちらに向かって走り出す。ポールが走って部屋の中から脱すると、それを追ってきたゴブリンが見えない壁に突き当たる。数秒の後その壁が白く色づいていき、やがて壁と同じ色に染まって音すら通さなくなった。


「まぁ、こんなものだろう」

ポールがそう言うと装備を仕舞いながら階段を降りていく。俺も剣を仕舞い後を続いて降りていく。しばらく歩いていると、床が見えてきた。奥の壁がちょうど腰の上の高さくらいから窪みができていて、そこに鍵のない四角い箱が置かれていた。

「ここに魔石が入っている」

そういいながらポールが箱を開ける。するとちょうど手で包み込める大きさの魔石が3つ入っていた。


「でかいな。しかし数が少ない」

「ちょうど3つということは人数に合わせてくれているのでしょうか」

ポールとショーンがそれぞれ一つづつ取っていく。

「俺は今回は何もしていないから、ヒュームへの土産として持って行ってくれ」

そういい俺はショーンに渡そうとすると、ショーンはそれを受け取らなかった。

「これからも、戦いは続きますから持って行ってください」

俺は仕方なく手を下ろし、ベルトに着けている魔石入れにそれを入れる。


ドアに目を向けると今度は何も書いてなかった。二人に目配せをすると、剣を握りドアを開ける。先ほどと同じように部屋がとても暗かったが、今度は小さな火も目の前にしかなくさらに暗かった。ショーンが入り三人とも部屋に入ると開いたままのドアごと、壁の穴が埋まっていき帰り道が無くなる。


するとボッという音がして辺りが明るくなる。前を向くと左右に白い壁にがあり、先ほどの照明が壁掛けになっておりT字路になっている。横幅は少し広く両手を広げて二人が立てるほどだった。


「右を頼む」

ポールがそう言いショーンを後ろに三角形になりながらT字路の分岐点の手前まで進む。俺たちは目を合わせ頷きあうと、それぞれを背にして左右を確認する。


「ギョッ」

俺が確認したほうは左に曲がり角がある道だった。ちょうど道の中腹を一匹のナイフを持ったゴブリンが歩いており、こちらを確認すると声を出す。


次の瞬間、踵を返して一目散に走りだす。俺はすかさず追いかけその勢いで後ろから一突きにする。気づくと曲がり角のすぐ近くにまで来ていて、紫の霧が少しだけ角の方に溢れて消える。


俺は角の壁に張り付き、顔を少しだけ出して先を確認する。突き当りが左に曲がるようになっていて、その間が十字路になっていた。ちょうどその十字路の分岐点に先ほどのゴブリンよりも大きい、俺の肩まではありそうな魔物が居た。見た目はゴブリンだが、腰には剣を携えており十字路の左の方を向いている。


こちらには気づいていないようで、あくびをしている。ポールの方へ戻ろうとした時、突然腰を低くして剣を抜く。ポールの方を向くとポールもちょうど曲がり角で俺と同じ方向を向いていた。剣を構えており、明らかに何かがいることを感じさせた。


「こっちだ!」

俺が大きめのゴブリンに対して叫びながら姿を見せると、ゴブリンがこちらを見て驚いた顔をする。そして、その顔がどんどんにやけていき元の顔に戻るとこちらに向かって走ってくる。俺は角から道の中腹にまで戻って行く。


ゴブリンが走る音が近づき、姿を現すと俺を見つけ一目散に走ってくる。ゴブリンはその勢いのまま剣を上から叩きつけるように振り下ろす。それを俺は剣で受け流すとゴブリンの剣は床にあたり派手な音を立ててゴブリンの手を振動させる。俺はすれ違いざまにゴブリンの胸を切ると距離を取る。


剣を構えなおしゴブリンを見ると、その胸からは一滴の血も出ておらず、代わりに黒い線が切られた痕になっていた。尚も振動を続ける剣をゴブリンは手放し、代わりに先ほどのゴブリンと同じナイフと取り出す。まっすぐ俺の方に走ってきて、今度は手前で止まり腕だけを伸ばして剣で突いてくる。


それを後ろに身を引きながら躱すと突き出された腕を切り落とす。すると、切り落としたはずの腕が付いていて、代わりに切られた部分に黒い痕ができていた。驚いて身を引くと、ゴブリンが大股で踏み込んで突きを出してくる。躱すのが難しいと感じ慌てて剣を盾にするとコツンという音がして、目の前のゴブリンが霧散する。俺がホッと一息を付いていると、ポールたちもこちらに来た。


「随分と苦戦していたな」

ポールが槍を手にしながら言うと角に向かって歩いていく。その槍は一般的な槍よりも大きく、長さはポールと同じほどあり太さは俺の手が回るか怪しいほどの太さだった。

「腕が切り落とせなかった。いや、切り落としたはずなのに腕がついていた」

そうポールに状況を説明する。するとショーンが説明をしてくれる。

「魔物のからだの構造は私たちの知る動物には当てはまらないのでしょう。一撃で仕留められないと、武器を持っている相手は厄介ですね」

そういいながらショーンはメモを取っていく。

「何を書いてるんだ?」

「これですか?ヒューム様に報告することと、今後考えることなどを書き留めています」

そう話しながらすらすらと書いていく。ポールが手招きをするので、ショーンが書くのを止め魔石の袋に手を被せる。俺も剣を握り直しポールの後に続いていく。


先ほどの十字路に来ると、ポールが目配せして左を、俺が右を確認する。俺が見た方には下りの階段があった。ポールの方を向くとちょうどこちらに来ていた。俺たちはこの階を後にして階段を降りて行った。


剣を仕舞って階段を降りながら、金属製の槍もいいかもしれないと次の武器の案を考えていく。心臓を一突きにした後も動くような相手にはどうしたらいいのかと考えながら俺は階段を降りて行った。

ゴブリンだってヤるときはヤるのです!

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