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魔王のダンジョンと勇者の物語  作者: ありした
魔王のダンジョン
10/20

冒険の始まり

家を出ると俺は工房へと向かう。扉を開けると三人が出迎えてくれる。

「何をそう深刻そうな顔をしている。ダンジョンは自ら死んでも死なんらしいぞ」

開口一番にヒュームが言う。それなら安心だ、とはとても思えない。

「どうした少年、今更怖気づいたか」

全身に鎧を纏ったポールはそういうとクロムの盾を取り出しズドンと床を突く。

「では参りましょう」

ショーンがそう言うと、俺を押しながら外に出る。ポールが慌てて盾を仕舞って後をついてくる。

「今日は小手調べだ、最近やりたいことが飽和して碌に寝てない。くれぐれも新しい素材など見つけてこない様に」

ヒュームはそういうと、扉を閉めた。


あれからもう5日も経ってしまった。カリンはどれだけ寂しい思いをして過ごしているのだろうか。それとも・・・。


そんな思いを巡らせていると俺たちはダンジョンの前に到着する。

「受け付けは中でされるようですよ」

ショーンの後をついていき、受付に向かう。

「入館証をお預かりします」

受付がそう言うと、ショーンが白い板を渡す。受付の人はそれを確認すると鍵付きの箱に入れる。

「いってらっしゃいませ」


ショーンは受付を後にすると奥に進んでいく。ちょうど受付の裏側に下へ向かう階段があった。

「ここから先がダンジョンです。なんでも、最初の階には何もないそうなので準備はそこでしましょう」

ショーンがそう言うと階段を降りていく。俺たちも続いて、そう長くない時間階段を降りると平らな地面が見えてくる。しばらく降りると右側にドアが確認できた。


”ご自由にお使いください”


扉にそう文字が書いてあった。ショーンが眉間に皺を寄せながら扉を開ける。その部屋には何もなくただ、点々と照明が置かれているだけだった。ショーンが一つの照明に近づくと何かを確認しているようだった。俺は肘や膝につけるプロテクターを取り出しつけていく。脛あてや小手などをつけていき、最後に胸部を守る装備を付ける。ポールと違いそんなに筋肉を持ち合わせていないため、これだけでも体が重く感じる。


「そんな装備で大丈夫か?」

ポールの声が少し籠っていると思い、振り返ってみてみるとまるでバケツを被ったかのような兜を身に着けていた。目と鼻の上の部分だけ四角く切り抜いてあった。

「それは転んだら立てるのか?」

以前に鎧を見た時から、疑問に思っていた。そういうと、ポールが実演をしてくれる。始まりは仰向けからのようだ。すると俯せになり腕で体を持ち上げ腰を上げる。片方の足を半歩前に出すと体を起こし、立っていた。


「どうだ!」

自慢げに胸を張り、肩で息をしながら言ってくる。俺ではまず腕で体を起こすことも叶わないだろう。筋肉は裏切らないな。そう思いながら頷くと、ポールは床に座る。その姿勢から立てるのなら先ほどのは何だったんだろう。


そうして、二人で座って準備をしているとショーンがこちらに来て魔石を手渡してくる。

「限界以上に魔力を込めた魔石です。今回は急でしたので、あの状態を維持できるのは一つで10秒程度かと思われます」

俺は魔石を受け取るとベルトに取り付ける。10秒と言われるととても短そうだが5個貰ったのでよほどのことが無ければ時間切れもなさそうだ。

「わかった」

そういって立ち上がると、ポールも立ち上がる。


そうして、奥にある階段へ向かっていく。カリンを救う為のこの攻略に、昂ぶりを覚えてしまうのは罪なのだろうか。逸る気持ちに体を動かす速さがつられていく。いっそ駆け下りようとしたその時、平らな床が見えてくる。右には先ほどと同じようにドアがあった。


”お気をつけて”


ドアにそう書いてあった。俺はドアに聞き耳を立ててみるがよくわからなかった。ポールが階段を降りるたびに鳴るカチャカチャといった金属音のせいに違いない。ポールが息を切らしながらこちらの方に来てようやくその音は止む。もう一度聞き耳を立てるが、今度は衣擦れの音一つも聞こえなかった。


「何も聞こえない」

俺がそういうとショーンが答えてくれる。

「相手は死んだことを無かった事に出来るほどの力を持つお方。何か特別なことがされてるのでしょう」

そういわれ、自分の末路を想像する。ドアノブを握る手に力を入れると静かに扉を開けた。


生き物の呼吸音が聞こえる。部屋は先ほどよりずっと薄暗く、ところどころ見えないところができている。その中で影が揺らめいている。三人とも中に入り、ショーンが扉を閉めると扉が消える。


すると突然、炎が立ち上り辺りの影を明るく照らしていく。


それは俺の胸程の大きさのだいたい1m程度の大きさの生き物だった。

「ゴブリンだ」

ポールがそう言うと鉄の剣を取り出す。

「こいつは弱い。だが侮るな。数が多い、壁を背にして戦え」

部屋を見渡すと大体のゴブリンが緑色だが、紫色をしたものもいた。手にはそれぞれ武器を持っているが、こん棒がほとんどであり石が先についている槍を持っている者もいた。階段を探したが、部屋の壁にはそれらしきものが見当たらない。俺がクロムの剣を握りなおすと、ポールがつぶやく。

「弱いと言ってるだろうに」

「重さに慣れておきたいのだ」


「ヒューム様から聞いた話ですと、魔物を幾らか倒すと階段が出現するらしいです」

ショーンがそういうと、ポールが腰を低くして剣を構える。するとずっと動かない俺たちに痺れを切らしたのか、一匹のゴブリンがポールに襲い掛かる。


そのゴブリンはこん棒を持って走っていた。今その射程にポールが入り、こん棒を振り上げようとしたその時。ポールが右手に持っていた剣で一突きにする。

「グギャッ」

ゴブリンはそう声を出し、事切れると霧散する。それは紫色の粒と黄色の粒が混じりあい3秒も経たぬうちに消えていく。

「こ奴らは小さくて倒しずらい」


その言葉を聞いて怒ったのか、それとも仲間を殺され激昂したのか、ただ叫びたかっただけなのか。一斉に雄たけびを上げ、こちらに向かってくる。それを聞くとポールは片手用の小さな盾を出して攻撃に備える。俺も目の前に迫るゴブリンに突きを出す構えをする。すると、突然後ろから頭の上を通って石礫が飛んでくる。それは魔王のそれを思い出させ、とっさに身を引きショーンの隣に立つ。


「そこまで避けなくても大丈夫ですよ」

そうショーンが言った次の瞬間。床からつららの様に氷が勢いよく生え、ゴブリンたちを突き刺していく。その中の一本がポールの鎧を突いて少し凹ませていた。

「後ろかっ!?」

ポールが剣を横なぎにしながら振り返ると、不思議そうな顔をして前に向き直す。

「この威力で絶命させられるなら、私もお役に立てそうですね」

そういうとショーンは遠くの敵に向かって石を投げる。今度は炎が上がり紫色にその周りが変わっていく。

ゴブリンのこん棒は射程が足らないようです。

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