始まりは朝の、恋
息も白くなるある冬の朝、私はいつも通り出勤のためバス停の列に並んだ。
列の最初には帽子を深く被ったおばあちゃん、二人目は黒のロングコートを着たサラリーマンっぽい男性で私は三番目。今日も空は青く雲一つない。住宅街の隙間から照らす朝日は眩しくて暖かい。
「今日も寒いですね」
朝の忙しい時間だけど、このバス停の待つ間は特に忙しいということもないだろうと思って私は言葉を隣の男性にかけた。
男性は顔を私の方に向けて笑顔で答えてくれる。
「そうですね」
意外とイケメンだわ。
そのしぐさだけで、胸がキュンとなって、顔がちょっと熱くなる。
いまどきのようなほっそりとしたフェイスラインに高身長、今ではあまり見かけない革のカバン。間違いなくいいところの社員さん。
ずいぶんと忘れていたけどこれって、恋の入り口ですよね……。
さわやかな笑顔と朝という間は魔の時間帯でもあったみたい。
私、この男性に、今、恋しちゃいました。