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新月の二人(後編)

次回は11/19くらいに投稿できればいいなと思っています。

 木製の扉はギィィィと音をたてて開いた。心臓は高鳴った。しかし、開いた先には埃を便座に被った洋式トイレがあるだけであった。それを見て胸を撫で下ろした。しかし、まだまだ個室トイレは続く。すぐに隣に移動して扉を開けてみた。特段先程とは変わらない光景がそこにはあった。その後ももう一つ洋式を挟み一番入り口に近い便器のみ和式であった。最後の和式トイレを確認すると入口に振り向いた。

「ほら、何にもないじゃないか。」

入口の方でも安堵の笑みを浮かべ、「なあんだ」と呟いて見せた。

 こんな不気味なところさっさと出たかったが、とりあえず二人は用を済ませることにした。二人はとりあえずの安心感から少しリラックスしていた。二人とも用を済ませ、水道に向かおうとした、そんなときだった。



      ひた… ひた…





 天井から水が垂れてきた。二人とも気づいて顔をあげると通気口から一筋の水の道ができていた。釈迦が垂らした蜘蛛の糸のように上から舞い降りてきていた。その時、目の前に「掃除用具」と消えかかった文字で書かれている木のプレートを発見した。二人は目を合わせた。一人がゆっくり近づいて、そのドアノブに手をかけようとした。

「おい、そんなところ開ける必要ないだろ。」

「だって、お前は気にならないのか。」

たしかに気にならないと言われれば嘘にはなる。

「大丈夫さ、個室トイレも何もなかったし。」

「それもそうだけど、でも…」

 自分も怖れていたが、それを悟られるのを嫌がり、もう一人の言葉を押し退けるように言った。

「うるさいな、よしあけるぞ。ほら、なにも…」





 そこには、掃除用具はたしかに目に映った。半透明のものを通して。半透明の者の表情は見てとれなかったが、足がないのは確認してしまった。






「ギャアアアァァァァァアアアァァァァァ!!!!」

 ドアを開けた張本人は一度トイレの床に腰を落とすと、叫び声をあげて入口の扉を蹴破るように飛び出していき、更にもう一人は全身を震わせながらもそれに食らいつきそのあとを追った。











 九太郎はその頃頭を抱えていた。

「なんで掃除用具のドアを開けるかな……」

そう独り言を洩らすと、九太郎自身何とかばれないように隠れられる場所を探した末、致し方なくトイレの掃除用具入れに決めていたのだ。

「トイレは怖いから敬遠されがちなのにわざわざ入ってきてしかも、ドアをちゃんとチェックするからなぁ…まったく…

だいたい、寒気がするのは当たり前だろ。風吹いてる方向の窓開いてるのだから…」

誰にも聞こえないように舌打ちをした。もう幽霊なのだが。

「あーあ、これであのトイレは出ると噂になるじゃん。今度はどこに逃げようかな…」



 この物語は、心霊スポットと噂される病院で成仏できない幽霊の苦悩の物語である。



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