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第350話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(番外編その4)

「──な、何ですの、その、婚約破棄の宣告というのは⁉」




「まあこれについては、『なろう系』における単なる『様式美』なので、大したことはないのですがね。あなたが私に対して行っていた様々な理不尽極まる嫌がらせが白日のものとなって、おう様から『将来の皇妃にふさわしくない』という判断を下されて、皇帝陛下のご承認のもとに、あなた御自身への婚約破棄はもちろん、御実家の筆頭公爵家のお取り潰しに、一族郎党すべての斬首を行われるという、ちょっとした『イベント』のことなんですよ」




「──一族郎党斬首刑の、どこが『ちょっとしたイベント』ですの⁉ そもそもわたくしがあなたに嫌がらせをしていたと言うのも、むしろあなたがわたくしを陥れようとしての、『自作自演』ではありませんか⁉」




「……そんなこと、今更、どうでもいいのですよ」


「なっ⁉」




「問題は、あなたが『現代日本人』として目覚めを迎える瞬間なのです。現在配置されている軍隊や魔導士やモンスターはすべて、それに対処するためなのです」




「はあ? あの我が帝国きっての精鋭部隊の皆様が、わたくし一人のために、配置されているですって?」


「ただでさえ、帝国有数の攻撃魔法の使い手であられるあなたが、『現代日本人』として目覚められたら、どうなるかわかったものじゃありませんからね」


「……いや、『ゲンダイニホンジン』であるのは、あなたも同じなのでしょう?」


「『悪役令嬢』とそれ以外では、全然格が違うのですよ!」


「は?」




「すべては『なろう系』Web作家たちの、『悪ノリ』が原因なのですけどね。今や『悪役令嬢』と言うだけで、現代日本の最先端の科学技術や政治政策や経済戦略等を駆使しての、地方華族領を始め国家そのものの内政改革(NAISEI)はもとより、自分自身も海兵隊仕込みの戦闘能力を誇るのはもちろん、やはり現代日本レベルの先鋭的な軍事戦略や、下手すれば現代兵器の量産によって、やろうと思えば一国を丸々滅ぼしてしまえるといった、無茶苦茶ぶり。今この場に近衛騎士団だけでは無く、我が帝国指折りの主力部隊がほとんどすべて集結しているのも、当然でございましょう」




「一つの国家を易々と滅ぼしてしまえるって、ゲンダイニホンジンて、一体何なの⁉」




「まあ、大体のパターンとしては、ブラック企業でこき使われている、うだつの上がらない乙女ゲームマニアの、アラサー女性というのが、相場となっておりますが?」


「何その、完全な『人生の負け犬』は⁉ 何でそんなのがゲームの世界に転生しただけで、いきなり大ハッスルして無双し始めるの⁉」


「それこそが、『なろう系』作品の、『様式美』というものなのです」


「碌でもないな、『なろう系』って⁉」


「だまらっしゃい! これ以上余計なことを言い出す前に、『儀式』を敢行することにいたしましょう。──ヒドーイおう様、どうぞよろしくお願いいたします!」


「うむ」


 ちょっ、『儀式』って、まさか⁉




「オウカ=チェリースキー公爵令嬢よ、畏くも皇帝陛下のご承認のもとに、ここに申し渡す。貴殿は私ことタイショー帝国第一(おう)ヒドーイの婚約者の身分を剥奪するとともに、一族郎党共々、斬首の刑に処す!」




 ──ッ。




 その瞬間、わたくしの全身に、雷撃の直撃を食らったかのような、衝撃が駆け巡った。




 ──思い出した、


 ──わたくしは、わたくしは、


 ──かつて日本国に、存在した、




「いかん、悪役令嬢が、目覚めるぞ⁉」


「近衛騎士団全部隊、攻撃用意!」


「非戦闘員の方々は、直ちにご避難を!」


「皇帝陛下、第一(おう)殿下、こちらに!」




 ……何だ、


 この原始的な軍隊は?


 まさか、このわたくしに盾突こうというのか?


 面白い。




 ──一撃で、蹴散らしてくれようぞ。




「……集合的無意識とアクセス、大日本帝国一等駆逐艦『ゆうぐも』の、兵装データをダウンロード!」




 その途端、


 わたくしの周囲に、海の鬼火である『不知火』が灯るとともに、


 瞬く間に、軍艦の大砲や機銃へと、変化メタモルフォーゼしたのであった。




「な、何だ、あの見たことも無い、武装は⁉」


「戦術魔導部隊、遠距離魔法攻撃を、緊急発動!」




 はあ? 魔法? なに頭がイカれたことを、言っているの?




「──主砲、50口径127ミリ連装砲3基6門、斉射!」




「「「うぎゃあああああああああああああああっ⁉」」」




 なんか知らないけど、のんきに呪文を詠唱中だった黒ずくめの集団を、一気に跡形も無く、消し飛ばしてしまう。




「こ、近衛騎士団、突撃!」


 おお、さすがはわたくしの、『元』婚約者。


 本来の指揮者であった自称『現代日本人』のメイ嬢が、完全に茫然自失の体になっているの対して、この状況においてもいまだ正気を保って、次期国王として威風堂々と命令を下せるとは、見上げたものですわ。


 ──ただし、




「「「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいっ⁉」」」




 すかさずわたくしが、25ミリ機銃をお見舞いすることによって、帝都きってのエリート部隊が、ただの肉片と化して四散してしまう。




騎竜ドラゴン特戦隊! 飛竜ワイバーン遊撃隊! 丘陵地帯からの遠距離火炎放射と、上空からの精密ピンポイント爆撃とを、同時に開始!」


「「「──って、的があまりにも小さいので、狙いが定まりません!」」」


「だったら、『面攻撃』をすれば──」


「「「そうなると、建物等に被害甚大となるばかりか、王侯華族の方々に犠牲が生じてしまいま───ぐごごごごごごごごっ⁉」」」


 もはや状況判断もできなくなったおう様とモンスター部隊が、あれこれ押し問答していたなかに、いい加減面倒になってきたので、情け容赦なく主砲をぶち込んで、全滅させてしまう。




「──そ、そんな⁉ どうして、どうしてよ? どうして『艦む○』のパクリのような存在がたった一人で、異世界の主力騎士団や、魔法兵団や、モンスター部隊を相手に、好き放題無双できるの⁉」




 先程までの余裕の表情はどこへやら、今やあらぬことを口走るばかりのメイ嬢に対して、すでに完全に軍艦擬人化少女としての記憶を取り戻したわたくしは、懇切丁寧に解説をしてあげる。


「……まずさあ、いくら近衛騎士団とか戦術魔導部隊とか言ったところで、せいぜい『人間同士の集団戦』を想定しているわけでしょう? 残念ながらわたくしたち軍艦は、それこそ『軍艦同士の集団戦』を前提に造られているのだから、そもそも物理的な『パワー』が桁違いなので、端から相手になるわけが無いのよ」


「いや、魔法に物理は関係無いでしょうが?」


「有るわよ、例えば現代日本のアニメ作品の『ま○マギ』とかに出てくる魔法少女が、戦艦大和に魔法攻撃をしている姿を思い浮かべてごらんなさい。少しでもダメージを与えることができそうかしら?」


「うおっ、確かに御指摘の通り想像してみたら、小賢しい雀あたりが巨象にちょっかいを出して、何の痛痒も与えることができず、無慈悲に踏む潰される絵面しか思い浮かばねえ⁉ ──だ、だったら、モンスターはどうなのよ? 特に空を飛べるワイバーンなんて、軍艦であるあなたの天敵でしょうが⁉」


わたくしは軍艦であるだけでは無く、見ての通り『少女』でもありますので、このような人口密集地においては、適当に身を隠すと、遠距離や上空から効果的に攻撃を加えようと思うのなら、それこそ辺り一面を焦土に変えることすら厭わずに、己の国土や王侯華族に対して『自滅行為オウンゴール』をする以外は、攻撃手段なんて皆無ではありませんの? ──しかもこちらからは、ドラゴンだろうがワイバーンだろうが、一発で仕留めることのできる軍艦パワーを使い放題だという、『ワンサイドゲーム』だったりして♫」




「言われてみれば、その通りじゃん⁉ すげえ、軍艦擬人化少女、すげえ。ただ単に『軍艦』と『少女』をミックスしただけで、剣と魔法のファンタジーワールドにおいてさえも、どんな『チート転生主人公』よりも、無双することができるってわけか⁉」




「──と言うわけで、今やここにおられるあなた方は全員、わたくしの単なる砲撃の的以外の何者でも無く、これから一匹一匹念入りに潰して差し上げますから、覚悟なさってくださいな。──ああ、言っておきますけど、そもそもわたくしは見ての通り、虚空から大砲や機関銃を現出させることができるのですから、弾薬も無限に供給可能ですので、悪しからず♡」

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