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第348話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(番外編その2)

 ──ここは異世界『NK(内鬼)(ライブ)(マター)ワールド』、極東弓状列島『旭光ヒノモト』、『有明の女王(カシマ)の森』テニス競技場。




 今まさに、明日のプロテニスプレイヤーを夢見る少女たちが、ジュニア世界大会への切符を巡って、熾烈な争いを繰り広げいた。




 その中でも注目の選手である、シマナデシ選手は、幼い頃より血のにじむ努力を重ねてきて、本大会の決勝戦までたどり着き、たった一人の『旭光ヒノモト代表選手』の権利に、あと一歩のところまで近づいていた。


 ──しかし、




『ウギャアオオオオオオオオオオオオオオオオオオーンンンン!!!』




「──くっ⁉」




 敵陣からの雷撃のごときスマッシュが決まり、まったく手も足も出ないままで、アッと言う間に王手をかけられてしまったのである。


『うほうほうほうほうほうほうほうほうほっほっほっ♡♡♡』


 すでに勝負は決まったとばかりに、踊り狂う対戦相手の少女(?)、ドウスジ選手。


 もはやこれまでなのか、八洲撫子選手⁉




「──いやいやいや、ちょっと待ってちょうだい!」




 その時、超満員の『有明の女王(カシマ)の森』テニスコート中に響き渡る、少女の悲鳴のような叫び声。


 そして、対戦相手のほうを指さして、ついに堪りかねて言い放つ。


「──何で、その『化物』が、決勝の対戦相手なのよ⁉ これは『少女テニスプレイヤー』限定の、国際大会の代表選手の選考試合なんでしょうが⁉」




 そうなのである。


 少女かどうかとか言う以前に、御堂筋()選手ときたら、3メートル以上もある全身剛毛に覆われた筋骨隆々とした浅黒い肉体に、額から伸びる二本の禍々しいつのに、耳まで裂けた大きな口から覗く幾本もの鋭い牙といった、『異形』そのものの風体であったのだ。


「これって、反則でしょう⁉ 大会規約によれば、この選考試合の参加資格は、15歳以下の女の子に限られていたはず。その子は、年齢とか性別とか純粋なる旭光ヒノモト人であるとかなんて、すべてぶっちぎって、もはや人間じゃ無いでしょうが⁉」




「……化物とは、失礼な。は──我が妹は、この国の内側に巣くう誇り高き鬼、『ナイ』の一族のサラブレットなのですよ?」




 何と、予想外なことも、激昂に駆られて吐き出した怒号に対して、打てば響くように返ってくる、涼やかなる声音。


 そこには額の二本のつのと浅黒い肌以外は、旭光ヒノモト人そのものの、清楚な美女がたたずんでいた。


「あ、あなたは?」


「そこなの姉の、と申します」


 ……おい、作者。ネーミングを、手抜きするんじゃねえよ?


「姉って、本当かよ⁉ 全然似てねえ姉妹だな?」


「私たち姉妹は、ナイ族と旭光ヒノモト人とのハーフであり、私のほうは旭光ヒノモトの血がより色濃く出たのですが、妹のほうはご覧の通り、完全にいにしえの『鬼』に先祖返りしてしまっているのです」


「──こいつ今、『鬼』って、はっきり言った! 『いにしえの鬼』とか、言いやがった!」


「おほほほほ、『鬼』と言うのはあくまでも、『比喩』みたいなものですよ。我が御堂筋家の始祖が、ナイの神様と交わったのも、今では『昔話』のようなものですし」


「何が『昔話』だよ⁉ だったら、今目の前にいる『アレ』は、一体何なんだ⁉」


『ウホッ?』


「アレとは失礼ですね、我が妹にして我が家の誇り、『オナイキさま』の生まれ変わりであられる、御堂筋家の当代の巫女たる『ナオコちゃま』に向かって!」




「『ひぐ○しのなく頃に』みたいに言うんじゃねえ! ──もうっ、我慢の限界よ! 私が一体、何をしたと言うのよ⁉ 私はただこれまで、必死に努力を重ねてきて、世界大会進出という夢の実現に、あと一歩まで迫って来れたんじゃないの! それなのに、どうして決勝戦の相手が、『アレ』なのよ⁉ あんなの大会規約違反でしょうが⁉ 『女の子』とか『15歳以下』とか『旭光ヒノモト人』とか言う以前に、『バケモノ』でしょ? だったら、人間ですら無いじゃない! 何でそんなのが、この大会に出られるのよ⁉ あんなのを相手にして、ただの人間の女の子である私が、敵いっこないじゃない! こんなの、インチキよ! ズルよ! 大会規約違反よおおおおお!!!」







「──はい、『差別』」







「え?」




 撫子選手の魂からの熱弁に冷や水を浴びせかけるように突きつけられる、何の感情もこもっていない、あまりにも無機質な台詞。


「……差別って、何よ、私はあくまでも、これまでの自分の努力を理不尽に否定されたから、事実をありのまま指摘しただけじゃないの?」


「それが『差別』だと、言っているんですよw」


「はあ?」




「たとえそれがれっきとした事実でろうとも、特定の相手に対して、『鬼』であること、『国を内側から蝕む不法滞在者』であること、『国籍ロンダリング実行犯』であること、とても幼い女子とは思えない『浅黒い筋骨隆々とした人間離れした肉体』をしていること等々を、指摘すること自体が、差別やヘイト発言に当たり、社会的に非難の的となり、下手すると法的に処罰されることにもなりかねないのです!」




「そ、そんな! 何で、正しいことを言って、非難されたり、罰せられたりするんですか⁉ ──ああっ! もしかしなくてもそれって、『言論弾圧』なんじゃないのか⁉」


「さあて、何のことやら?」




「やっぱり、そうなのね! あなたたちナイのやつらって、エセ人道主義ムーブを隠れ蓑にすることで、むしろ自分たちの横暴なやり口をごまかしつつ、少数派マイノリティならではの『特権』をごり押しして、常識的な人々がそのインチキ行為を糾弾しようものなら、それを『差別』などとレッテル貼りすることで、全世界的な『言論弾圧』をしているんでしょうが⁉」




「あは、あはははははは! どうやら気づいたようね? でも、それがどうしたの? あなたが『真実』を知って、何ができるとでも言うの?」


「なっ⁉ ………………………………そ、そりゃあ、この大会の運営本部に報告したり、マスコミを通して世論に訴えたりと、いろいろできるじゃないの⁉」




「くふふっ、馬鹿なことを! もはやこの国のテニス界を始めとするスポーツ界も、マスコミも、経済界も、政界も、すでに我々(ナイ)の後ろ盾である、大国『中つ国』によって支配されているのよ! 何せこれはすべて中つ国による、『全世界民族分断計画』の一環なのですからね! 中つ国に敵対するあらゆる国家の内側に、ナイを送り込み、『人種差別撤廃運動』に名を借りた『差別主義者のレッテル貼り』を初めとして、『LGBT』に『同性婚』に『夫婦別姓』等々の、強引なる法制化により、標的ターゲット国内の男女間や年代間の分断を図り、真に努力している人々の夢や願望を踏みにじり前途を完全に閉ざして、まさしく『共産主義』そのままの『歪んだ平等主義』に則って、中つ国の息のかかった『エセ少数派マイノリティ』や『外国人勢力』によって、国家そのものを乗っ取ってしまうという寸法ですわ! ──そして、その筆頭こそがスポーツ界なのであって、今や女子スポーツはすべてのジャンルおいて、『あたくし、心は乙女なの♡』などと言ったふざけきったカミングアウトをした、筋骨隆々とした大男たちによって、上位ランキングを独占させることによって、機能不全に陥れて、中つ国の女子スポーツ界に太刀打ちできなくなっているといった体たらくですわ。ギャハハハハハハハ! どうだ、文句がある者がいるのなら、いくらでも言ってみろよ! まあ、中つ国様にたてつけるような『命知らず』なんて、この弱小国家にはいやしないだろうがなw」




「──ッ」




 もはや本性をむき出しにして、すべてをあからさまに暴露する、自分自身もナイのハーフの女性。


 それも、当然であろう。


 何せこの大会の運営本部を始めとするスポーツ界そのものも、マスコミ界さえも、ナイやその後ろ盾である中つ国に完全に支配されているのである。彼女がいかに中つ国の悪行を告発しようが、それを認める者なぞいない()()であった。


 ………………………そのはずで、あったのだが、




「──ここに、いるぞ!」




 その刹那、唐突に響き渡る、幼くも凜とした声音。




 数千人もの大観衆が、一斉に振り向くと、いつしかコートのすぐ側には、一人の少女がたたずんでいた。


 旭光ヒノモトならではの水兵セーラー型の女学生服に包み込まれた、およそ十歳ほどの抜けるような白い肌の小柄な肢体に、烏の濡れ羽色の長い髪に縁取られた、端整なる小顔の中で煌めいている黒曜石の瞳。


 それはまさに、天使か妖精あたりを彷彿とさせる、絶世の美しさであった。


「な、何よ、あなた、どうして素人が、決勝戦が行われている神聖なるテニスコートに、紛れ込んできているのよ⁉」


「あら、私はれっきとした『少女』なのだから、あなたの理論では、この大会に参加する資格はあると思いますけど? ──そちらの薄汚い、ナイ風情なんかよりね」


「何ですってえ! ナイ族のサラブレットである、我が妹を愚弄するなんて、この痴れ者が! ──いいでしょう、勝負してやろうじゃないの! それで、あなたラケットは、一体どこにあるのよ⁉」


「ふん、そんな類猿人モドキ、素手で十分よwww」


「言ったわねえ⁉ ──内鬼子ナオコ! 構わないから、あなたの全力のサービスで、叩き潰してやりなさい!」


『──ウオオオオオオオオオオオオオオーン!!!』


 姉の怒号に応じるようにして、三メートルの巨体の遙か上から振りかぶったテニスラケットから放たれる、空気摩擦で炎すら帯びている矢のようなサービス弾。


「あ、危ないっ!」


 撫子選手の悲鳴も虚しく、謎の幼女の華奢な身体に直撃するものの。


「あ、あれ?」


『うが?』


「そ、そんな⁉」


 撫子、と、三人三様の、驚きの声が上がる。


 無理も無かろう。


 確かにものすっごい勢いで衝突したテニスボール自体は、あたかもレーザー光線のごとく弾き返されて、コートの場外の遙か彼方へと飛び去ったものの、




 当の少女のほうは、文字通りびくともせずに、まったく同じ無表情のまま、その場に立ち続けていたのだから。




「あ、あなたは、一体──」


「……まったく、駆逐艦の装甲に、類人猿の全力のサービスごときが、通用するとでも思っているのですかねえ? ──では今度は、こちらから行きますよ」


「「『え? く、駆逐艦、って……』」」


 制服一式以外は、寸鉄もおびていない少女の、意味不明の言葉に、怪訝な表情となるお三方(&観客一同)。


 そんな面々を尻目に、突然何だか呪文じみた言葉を唱え始める。




「──集合的無意識へとアクセス、大日本帝国海軍一等駆逐艦『きよしも』の、兵装データをダウンロード!」




「「『なっ⁉』」」




 その瞬間、


 少女の周囲に、海の鬼火である『不知火』が灯ったかと思ったら、


 瞬く間に、大口径の砲門や機銃へと、変化メタモルフォーゼしたのであった。




「主砲、50口径127ミリ連装砲3基6門、斉射!」


『──ウギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』




 艦砲射撃の直撃を受けて、まさしく先ほどのテニスボールそのままに、競技場の場外へと吹っ飛ばされてしまう、ナイのサラブレットの巨体。




「──あんた、何やってるんだああああああああああああッ⁉」




 堪らずわめき立てながら、少女へと食ってかかっていく、嬢。


「何って、妹さんと試合──もとい、『死合い』をしただけですけど? 何せ私のような『軍艦擬人化少女』も、『少女』に違いはありませんので、あの類人猿モドキと戦う資格は、ちゃんとあるでしょう?」


「いやもう、どこからツッコんでいいかわからないけど、何よりもこれは、テニスの試合なんだろうが⁉ 何でいきなり大砲をぶっ放しているんだよ⁉ 超頑丈な鬼のサラブレッドだから死にはしないけど、普通に重症モノだぞ!」


「え? 私がいつ、テニスをするなんて、言いました?」


「へ?………………………いやいや、テニスじゃ無かったら、一体あんたは、何しに来たんだよ⁉」




「それは当然、()()神聖皇国『旭光ヒノモト』海軍所属の、軍艦擬人化少女としての、『任務』のためです」




「……新生、神聖皇国、って──まさか、旭光ヒノモトが、80年前の大戦で失った『国家主権』を、完全に取り戻したの⁉」




「その通り。よってこれよりは、中つ国の工作員による、『南のウチナー諸島や北のエゾランドの独立』工作や、政界や財界やマスコミや学界等々の乗っ取りや、様々な画策による、世代間及び男女間分離工作を阻止するために、その担い手である我が国内に巣くう忌まわしき鬼ども、『ナイ』の殲滅命令が下され、我々軍艦擬人化少女艦隊に、白羽の矢が立ったというわけですよ」

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