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第344話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(最終話)

「──キヨ、来るぞ!」




「了解、提督アドミラル! ──対空機銃、斉射!」




『『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』』』




 僕の命令一下、キヨがすぐさま自分の周囲に現出させた25ミリ機銃によって、たちまち蜂の巣になっていく、オスの黒ゴブリン──『ナイ』たち。


『『『ギザマアアア! ヨクモ、オスゴブリンタチヲオオオオオオオオオ!!!』』』


 それを見て、テニスラケットのような武器を振り回して、怒り狂ったゴリラであるかのように突進してくる、メスの内鬼ゴブリンの大集団。


「……キヨ、発狂メスゴリラどもを、殲滅しろ」


「ゴリラじゃありません、一応テニスプレイヤーのつもりでいる、黒ゴブリンです」


 そのようにあるじである僕の言葉を訂正しつつも、今度は主砲である50口径127ミリ連装砲を展開して、しっかりとメス黒ゴブリンどもを爆殺していく、我が忠実なるしもべ殿。


『『『──グアアアアアアアアアアア、ハイル、中ツ国! ハイル、北ノ王国!』』』


 あらぬことを口走りながら、粉々に爆散してしまう、テニス雌ゴリラ型(ナイ)ども。




 ……しかし、今度はよりによって、『宇宙からの侵略』とはな。


 確かに、別の世界から召喚した軍艦擬人化少女であるキヨの活躍で、この世界における脅威はすべて取り除いたとはいえ、一応『異世界転生』をテーマとしているのに、もはや『何でもアリ』だな、この作品。




 ──しかも、今回が、『最終回』だと言うのに。




 ……そうなのである、この世界においてすべての決着がついて、ようやく最終回を迎えたかと思ったら、新たなる敵──それも、宇宙人が攻めてくるなんて。


 しかも、『ウイルス型寄生体宇宙人』て、一体どこの『雛○沢症候群(はにゅ〜ん)』だよ?




 内なる鬼、『ナイ』。




 ──『それ』は、この世界の人々から、そのように呼ばれていた。




 いったんこのウイルス型寄生宇宙人に取り憑かれてしまうと、もはや逃れることができず、まず足元が腫れあがりピンク色をした厚底の運動靴を履いているようになり、男性はラッパーのようないかにもアウトローな黒いゴブリンと化し、女性は常にテニスラケットのような凶器を手にしたゴリラそのものの筋肉質の黒ゴブリンと化して、もはや完全に理性を無くし、人間族だろうが亜人族だろうが獣人族だろうが種族を問わず、他の種族に襲いかかってくるので、もはや問答無用に『殺処分』する以外は無くなるのであった。




 まさに『内なる鬼』、この世界を内側から侵略し、我が物にしようとしている、ゲスの極み、『ナイ』であった。




「──ほらほら、早く殲滅しないと、この場からの逃走を許して、手の施しようが無くなってしまいますよ?」


「……相変わらずあの子って、砲撃の精度が甘いわね。よろしければわたくしが直々に、指導して差し上げましょうか?」




 その時唐突に、少し離れた場所から声をかけてくる、文字通り『外野』のお二人。


「……あんたら、ぼさっと見ている暇があるのなら、少しは協力してくれてもいいんじゃないのか?」


「いえいえ、残念ながら、私はあくまでも異端審問部の特務司教として、あなた方二人の『監視』を任務としておるのですから、下手に出しゃばるわけにはいかないのですよ」


 ──などと、ぬけぬけと言って寄越すのは、全異世界的宗教組織『聖レーン教団』の異端審問第二部所属の、ルイス=ラトウィッジ卿。


わたくしのほうは別に構いませんけど、その場合は正式に『契約ケッコン』していただくことになりますが、果たしてキヨさんのほうは、納得してくださるのですかねえ?」


 ──などと、いかにもわざとらしく妖艶な笑みを浮かべながら言ってのけるのは、キヨと同じく現代日本からこの世界に転生してきた、大日本帝国海軍の軍艦擬人化少女、『こんごう』嬢。


「くっ、だったら、いつまでも僕たちにくっついてくるなよ⁉ そもそも『敵』なんだろうが、おまえらって!」




「……おやおや、まだそんなこと言っているのですか? この世に敵も味方もありませんよ。何せすべては、『神様による実験動物』に過ぎないのですからね」




 ──ッ。




「……それはもちろん、おまえら教団関係者や軍艦擬人化少女も、含まれるんだよな?」


「ええ、もちろん。──むしろ我々聖レーン転生教団の信徒は、『永遠に不死であること』と引き換えに、御本尊であられる『海底の魔女(セイレーン)』様の、『原初オリジナルの人魚姫』復活のための実験材料となることを、承知したのですからね」




「それにわたくしたち軍艦擬人化少女こそが、『人魚姫の新たなるカタチ』を模索するための、『最重要実験体』なのであり、特にこの世界においては、あなたのしもべであられるキヨさんこそが、『すべての実験の主目的テーマ』と申しても、過言では無いのですからね」




「──くっ」


 金剛嬢の、おっしゃる通りであった。


 初めに聞いた時には、大いに驚いたものだが、聖レーン転生教団の信徒は、『永遠の不死』を約束されているのだ。


 仕組みは、至極簡単。僕自身も『錬金術師』として、普通に行っていることでしか無かった。


 正式に教団に入信した者は、たとえ死亡しようとも、不定形暗黒生物『ショゴス』によって肉体を再生するとともに、集合的無意識から生前の当人の『記憶と知識』をインストールすることで、その時点から更に人生を続行させることが可能となるのだ。


 しかも、ショゴスによって形成された肉体は、年齢設定をいくらでも変更できるので、『若返り』はおろか、全人類の悲願である『不老不死』や、『理想の相手たにんに生まれ変わる』ことすらも、余裕で実現できるのである。


 ……そりゃあ、誰だって進んで、信徒になろうってもんだ。


 聖レーン転生教団が、一つの世界どころか、全次元規模の覇権宗教団体に成り上がったのも、当然だよな。


 ──さて、ここまで述べれば、気づかれた方もおられるであろう。




『ショゴスによる不老不死の存在』、まさにそれこそは、軍艦擬人化少女そのものであることを。




 それも、そのはずであった。


 そもそも教団の信徒の不老不死化は、教団の御本尊であり『創始者』ご本人でもある、『海底の魔女(セイレーン)』によって与えられたものであるが、


 実はそれこそは、『原初オリジナルの人魚姫』の、『制作方法つくりかた』であったのだ。


 ──よって、


 何とこの世界は、


 最初から、




 人魚姫の『発展型』の一つである、軍艦擬人化少女のキヨを『主人公』にした、巨大なる『実験場』でしかなったのだ。




 そうすべては、『原初オリジナルの人魚姫』──すなわち海底の魔女(セイレーン)にとっての、『真に理想的な人魚姫』を生み出すための、無限の『実験のための実験』。


 これが全次元的宗教組織である聖レーン転生教団が、それぞれの次元で支配している世界そのものを実験場にして行っている、様々な『謀略』の最大の目標なのであり、すべての教団信徒の『不老不死化』なぞ、単なるおまけでしか無かったのだ。


 ……道理でこれまで、キヨや僕が、好き放題できたわけだ。


 何せ教団としては、『人魚姫の一つの可能性』であるキヨが、予想外の行動をすればするほど、有益なデータが取得できるんだからな。


 あえて『教団の敵』に指定して、教団の刺客を差し向けていたのも、直接戦闘データを採取するためだったのだろう。


 しかも仮にその際に、教団関係者が死傷した場合でも、完全に『修復』可能なんだしな。


 ……それどころか、僕たちのような違法召喚術士や錬金術師を野放しにしていたのも、教団の手の内以外においても、『理想的な人魚姫』を生み出す可能性チャンスを増やすためだったりしてな。




 うん? 『教団の手の内以外』って………………。




 ──ッ。まさか⁉




 も、もしかして、


 そもそも『あちらの世界』で、


 キヨたち、軍艦擬人化少女が生み出されたのも、


 その原因となった、『大陸風タイリク・フーウイルス』が、何の前兆も無く突然現れたのも、


『あちらの世界』の聖レーン教団の、実験だったりするんじゃないだろうな。




 ──そう、すべては、『真に理想的な人魚姫』を、生み出すために。




 たとえ、それによって、


 無数の人々を、殺すことになろうとも。




 世界そのものを、滅ぼすことになろうとも。




「──提督アドミラル、敵『ナイ』の掃討、完了いたしました」




 ………へ?


 あれこれと思索にどっぷりと浸り込んでいた、まさにその時、


 唐突に響き渡る、もはや耳馴染みになってしまった、涼やかなる声音。


 振り向けば、全身血肉だらけとなった己のしもべが、無数の死体の上にたたずんでいた。




 ──あたかも忌まわしき、地獄の悪鬼のごとく。


 ──それでいて同時に、純真無垢なる、天使や妖精そのままに。




「……あ、ああ、ご苦労さん、相変わらずの手際の良さだな」


「ふっ、当然のことです」


 僕の賞賛の言葉に、鼻息荒く胸を張るや、彼女の身体を海の鬼火である『不知火』が取り巻いて、瞬く間に血肉をすっかりと消し去ってしまった。


「さあ、提督アドミラル内鬼ゴミどもの掃除も終わったことだし、そろそろ旅立ちましょう」


 そう言って僕のほうへと、小さな手を差し伸べる、幼き少女。




 ……そうだ、そうだよな。




 世界や魔女の意思なぞ、知ったこっちゃ無い。


 僕たちはただ、僕たちの人生を、生きていくだけだ。




「うん、行こう、──これからも、二人一緒に」


「──ッ。な、何を当たり前のことを、おっしゃっているのです! 私は提督アドミラルしもべなのですから、お側に侍るのは当然のことでしょうが⁉」




 そのように、顔中を真っ赤に染め上げながらも、差し出された僕の手を力強く握り返す、駆逐艦デストロイヤー・ガール


 ……いてててて、少しは手加減してくれよ。こっちは生身ただの人間なんだから。




 ──そして僕たちは、二人っきりの旅路を、再び歩き始めたのであった。














「「──って、我々のことも、忘れないでくださいね?」」




「……おまえら少しは、空気を読めよ⁉」

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